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減税も給付金も“財源不明”で進んだ議論…国民を愚弄するバラマキ政治のツケは誰が払うのか?=斎藤満

夏の参議院選挙を意識してか、与野党問わず、減税・給付金の話が広がっています。そして共通しているのが、いずれも財源手当てについて全く議論していないことです。財政は「金の生る木」でも「打ち出の小づち」でもありません。国民も過半の人が給付金に反対しています。政治家のレベルが低いのか、国民を愚弄しているとしか思えません。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2025年4月18日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

突如、減税・給付金ムードに

野党から消費税について廃止案のほかに、食品分はゼロにする案から税率を5%に引き下げる案など、国民受けする対策が目白押しとなっています。

政府与党からも同様の動きが見られ、自民党内にはマイナンバーカードの普及策もかねて、マイナポイントの給付案も出ました。ガソリン補助金を5月に再開するほか、電気ガスの補助金もまた夏場の需要期に復活する模様です。

物価高で国民の不満が高まり、これからの選挙に少しでもプラスになればとの発想で、多くの国民が「選挙対策」と見切っています。

このため、毎日新聞の世論調査でも給付金支給に「反対」が57%と、過半となりました。自民党支持層でも賛成を反対が上回っています。国民民主の「手取り増」を支持する多くの国民も、この給付金提案に対しては「筋の悪い策」と評価しました。

この国民の反応を見て、政府は給付金支給策を取り下げました。

物価高放置の付け

政府は支持率の低下、参議院選挙での議席減の見込みなど、国民の厳しい姿勢の裏に、物価高への批判、不満が大きいと分析、選挙前にこれに何らかの答えを出す必要があると考え、対策を検討しています。

その中に、前年比2倍となったコメ価格の高騰に対して、政府備蓄米の放出がなされましたが、いまだに効果を発揮していない「焦り」もあります。

スーパーでのコメ価格は備蓄米放出後も上昇を続け、足元では5キロ4,200円を超えてきました。備蓄米の入札は多くが農協によってなされ、地方にはこれが回っていないといいます。また備蓄米の応札価格が安く、スーパーへの卸価格も安くなったために、この備蓄米販売はほぼ瞬間蒸発してしまい、他のコメ価格の引き下げにはつながりませんでした。

国民の物価への不満の象徴であったコメやエネルギーへの対応がここまで成果を上げていません。そこで急遽、夏場の電力需要増に備え、電気ガスの価格引き下げを狙って補助金の復活を検討していますが、食品高への対応が進まず、これの補填策として、給付金や消費税のうち食品部分の税率ゼロ案を含めた引き下げ案が出てきました。

財務省の算段

以前も紹介しましたが、この消費税引き下げについて、財務省の姿勢が柔軟になっています。

これまでは「聞く耳持たず」でしたが、米国トランプ大統領の「非関税障壁」の中に日本の消費税が取り上げられています。米国の自動車などは日本に輸出すると10%の消費税が課せられる反面、日本の輸出業者は、輸出品に対して消費税分の還付を得られるので不公平だと、消費税の廃止を求めています。

政府はせっかく獲得した消費税の制度をいまさら手放すことはできないとしても、トランプ氏の不満を軽減するために、税率を引き下げることは検討の余地がありそうです。

Next: 消費税減税はありえる?放漫財政に歯止めはかかるのか…

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