【メンタルヘルスへの貢献】
イライラや情緒不安定といったメンタル不調に対して効能が認められている漢方薬も存在します。精神系の薬に抵抗がある人にとって、依存性のない漢方は新たな選択肢となっています。
【妊婦・授乳婦にも安心】
妊婦や授乳中の女性は西洋薬の服用が難しい場合が多いですが、漢方薬であれば服用できるケースもあり、特に体が小さい女性からの需要が高いです。
また、国は増大する医療費を抑制したいと考えており、初期症状の段階で患者自身が対応する「セルフメディケーション」を推進しています。漢方薬がこの選択肢の一つとして認識されており、ツムラの薬価が大幅に改定されたことも、国が漢方薬を推進している証拠と見ることができます。漢方薬が国民の健康維持に貢献し、結果的に医療費の抑制につながるという期待があるのです。
パテントクリフとは無縁?ツムラの安定性
一般的に、製薬会社は新薬を開発し特許期間中は高い利益を得ますが、特許が切れるとジェネリック医薬品が登場し、売上が急減する「パテントクリフ」という問題に直面します。
しかし、ツムラの漢方薬は、一度効能が認められれば、安定的な業績を積み上げていけるという特徴があります。研究開発費は必要ですが、西洋薬のような大規模な開発パイプラインは不要であり、どちらかというと原材料の栽培に費用がかかります。これにより、ツムラはパテントクリフの問題とはほとんど無縁と言えるでしょう。
他の企業がツムラと同じような漢方薬を製造しようとしても、数百種類に及ぶ生薬の確保と品質の安定化、そしてエビデンス構築という地道な活動は、非常に高いハードルとなります。さらに、市場規模自体がそこまで巨大ではないため、85%のシェアを既に持つツムラの牙城を崩すのは極めて困難です。

次なる成長の目:漢方の本場「中国」への挑戦
ツムラの今後の大きな成長ドライバーとして注目されているのが、中国市場への展開です。中国は漢方の本場ですが、これまでは患者の症状を聞いてその場で生薬を調合する「個別対応型」の流通形態が主流でした。
しかし、人口増加と多様な患者ニーズに対応するため、中国政府も日本のように「この漢方薬はこういう効能がある」と明示された標準化された漢方薬の流通体制を求めています。さらに、日本と同様に成分のばらつきをなくし、厳格な規制(薬典改定)を定めていこうとしています。
この中国の動きに対し、ツムラは中国の大手保険会社である平安保険と提携し、合弁会社を設立しています。平安保険の資金力と政府とのパイプを活用し、ツムラの漢方薬を中国市場に広げるとともに、ツムラが生薬の調合・加工で培った技術を他社にも提供していくことを目指しています。
中国の漢方薬市場は巨大であり、ツムラは中国事業で年間30%以上の成長を目指していることから、大きなポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。

中国も高齢化が進み、医療費抑制の局面を迎える中で、漢方薬の役割がさらに重要になると考えられます。
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