<リクルートの撤退が示唆するもの>
かつてタイミーに投資を検討していたリクルートがスポットワーク市場から撤退したことも注目すべき点です。その理由として、リクルートがAIを活用した採用プロセス効率化(Indeedなど)により多くのリソースを割きたいという判断があったようです。これは、日本国内のスポットワーク市場よりも、世界規模での採用プラットフォームに投資する方が合理的という判断が働いた結果とも言えます。
しかし、現在のメイン利用サービスに関するアンケートでは、タイミーが他社を圧倒的に抑えて1位となっており、使いやすさから一定の優位性を保っていることも事実です。
タイミーの未来を担う成長戦略:既存と新規の両面から
タイミーは今後、大きく2つの戦略で事業拡大を目指しています。
<既存顧客内のシェア拡大:「受け入れ負担軽減プロジェクト」>
既存のクライアントに対し、タイミーの利用をさらに深めてもらう戦略です。
- 成功事例の共有
- 受け入れ負担軽減プロジェクト
関東地方のセブンイレブンでの成功事例を他店舗に共有し、1事業者あたりの利用を増加させます。
物流業界を中心に導入されている取り組みで、タイミー社員(フィールドマネージャー)が現地に赴き、ワーカーの管理や説明を行うことで、クライアント側の受け入れ負担を軽減します。これにより、大規模な募集や日常的な利用を促進します。
<新規クライアントの獲得:市場と業種の拡大>
既存の都市部・物流・小売・飲食以外の市場や業種にも広げていく戦略です。
- 地域拡大
- 業種拡大
- 地方自治体との連携
都市部に加え、地方中核都市への展開を進めます。
ホテル・旅館、さらに介護業界など、新たな業種への進出を目指しています。介護業界は資格や専門知識が必要な場合も多く、タイミーがどこまで対応できるか注目されます。
自治体と連携し、広報誌への掲載や説明会を通じて、地方の事業者を集める取り組みも行っています。日高市や北海道などで一定の成果が出ているものの、公平性の観点から、その是非については議論の余地があるとの意見も聞かれます。
投資家がタイミーに求める「夢」と今後の見通し
タイミーは売上高が予想を下回ったものの、営業利益は予想を上回っており、利益を出しているという点では優良な企業と評価できます。しかし、投資家からは「若い企業らしさの元気がない」「無鉄砲に拡大する姿勢が見えない」という声も上がっています。
- PERと成長期待
- 成長企業への期待
- 今後の焦点
現在のPERは約30倍と、株価下落後も依然として高い水準にあり、市場はタイミーにかなりの成長性を期待していることが伺えます。
投資家としては、タイミーのような成長フェーズの企業には、コストをかけてでも売上を伸ばし、「バカみたいな夢を打ち上げてほしい」と考える傾向にあります。
競合が想像以上に強く、市場の飽和も指摘される中で、タイミーがどのように成長力を維持し、上述の戦略が効果を出すのかが、今後の投資のポイントとなりそうです。
まとめ:タイミーの今後の動向に注目
タイミーの株価急落は、売上高の予想未達と、成長企業としては異例とも言えるコストコントロールが主な要因でした。飲食業界の苦戦、新規ワーカーの伸び悩み、40代以上の利用者増加、そしてメルカリハロやLINEスキマニなどの強力な競合の台頭といった課題に直面しています。
しかし、タイミーは依然としてスポットワーク市場で圧倒的なシェアを誇り、既存顧客内のシェア拡大や新規市場・業種への展開といった明確な成長戦略を持っています。これらの戦略が、投資家が期待する「成長」を実現できるか、今後のタイミーの動向に注目が集まります。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年9月20日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。