第2の波:国策銘柄としての本格的な評価
株価上昇の第2の波は、鹿島建設を含むスーパーゼネコンが、「国策銘柄の代表格」として本格的に投資家に見られ始めた側面に起因します。
日本は災害大国であり、災害対応や減災・防災の施策を一括して統括する行政機関として、2026年度中にも防災庁が設置される機運が高まっています。これは地震や豪雨への備え、全国の防災施策の一元管理の必要性から来ています。
さらに、高度経済成長期に作られた高速道路やダムといったインフラの老朽化が進んでいるため、災害に備えるための「国土強靭化」の取り組みが重要視されています。
この国土強靭化は、防災庁が取りまとめて指揮する政策の1つと見られており、次期5年間(2026年度から2030年度の5年間)でおよそ20兆円の予算がつく見通しとなっています。
これは、直近5年間(2021年から2025年)の実績値約15兆円と比較して、30%強の予算の積み増しを意味し、この点が市場から高く評価されています。
ただし、この30%増は「防災・減災・国土強靭化」のための予算部分であり、公共事業関係費全体が同じように大きく伸びるわけではない点については、誤解しないよう認識しておくべきです。
土木事業の優位性:利益を担保する「品確法」の存在
公共工事、特に土木関係の案件増加は、スーパーゼネコンにとって非常に有利に働きます。なぜなら、土木事業は建築事業と比べて利益が出やすい構造になっているからです。
建築事業は、顧客が民間のケースがほとんどであり、顧客側はコストにシビアなため、契約後に資材価格や建材価格が高騰すると、ゼネコン側の収益に打撃を受けるという特徴があります。
一方、土木事業は、「品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)」という法律によって、発注者側がゼネコンの利益を確保できる体制が担保されています。この品確法(令和6年度にも改正が行われている)のおかげで、ゼネコンは無理な短納期に追われずに工事ができ、途中で材料費が高くなっても値段に転嫁できるため、安定して儲かりやすい事業が担保されているのです。
これは、建設・土木業界が、高齢化の進行や人手不足の慢性化といった問題に直面する中で、国がインフラを守るために、施工業者が適切な利益を確保できるよう体制作りを進めているためであり、ゼネコン側から見れば「売手市場」になりつつあると言えます。
実際にセグメント利益率を見ると、直近の2025年3月期の実績では、建築事業が4.9%であるのに対し、土木事業は8.8%と、高い利益率を確保していることが確認できます。
<大手寡占化の恩恵>
建設業界では、受注額ベースで大手寡占化(大手化)が進んでいます。建設工事全体の受注高において、上位40社の受注総額の約5割を、大手5社のゼネコンが占めている状況です。
国土強靭化計画の予算が上昇すると、主に土木事業が恩恵を受けますが、災害対応や耐震改修といった形で建築事業も恩恵を受けます。その中で、受注高の約5割を占める大手スーパーゼネコンが、この国策の恩恵を最も受けるという見通しが立てやすくなっているのです。長期安定的に業績が伸びていくイメージがしやすくなった側面が、投資家から評価されていると言えます。
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