2025年12月4日に発表された、ヒーハイスト株式会社2026年3月期第2四半期(中間期)決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
2026年3月期 第2四半期(中間期)決算説明会
佐々木宏行氏:本日は、ヒーハイスト株式会社の決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。取締役執行役員管理部長の佐々木です。
ここ数年、直動ベアリング市場の回復を待ちながら、当社ではさまざまな計画を進めてきました。しかし、販売先及びその先の市場の回復がもう少し先延びすると判断し、今回の第2四半期決算の発表と同時に、業績の通期下方修正及び配当の修正、株主優待の内容の変更を発表しました。
現在、下期及び来期以降に向けて、生産・販売の構造改革を検討しており、少しでも早く業績が回復するよう努めていきます。引き続き、よろしくお願いします。
今回も一部の資料は投影のみで、配布資料には含まれていないものがあります。ご了承ください。
2026年3月期 第2四半期(中間期)サマリー
第2四半期のサマリーについてご説明します。第2四半期累計の連結売上高は8億4,600万円で、前年同期から2億2,900万円減少し、21.3パーセントの減少となりました。
品目別では、直動機器について、産業用機械の需要回復の遅れや中国市場での受注低迷が影響しています。当社及び販売先において在庫が多く溜まっており、在庫調整が行われています。これにより直動機器の売上高は5億4,600万円、前年同期比21.3パーセント減と、売上は低迷しています。
精密部品加工については、レース用部品のレギュレーション変更による影響がありました。具体的には、ホンダ向けの部品点数の変更やスケジュールの変更などで、第2四半期で大きく落ち込んでいます。売上高は1億7,000万円で、前年同期比40.5パーセントの減少となりました。
ユニット製品については、真空関連で使用される位置決めステージや、第1四半期に続き、中国市場で医療系分析に使用される球面軸受、半導体位置決めで使用される球面軸受が好調でした。その結果、売上高は1億3,000万円となり、前年同期比35.6パーセント増という結果になりました。
利益面では、連結経常損失が1億7,600万円となりました。要因としては、トップラインの減少に加え、購入品や材料、外注費の高止まりが挙げられます。また、販管費では、株主優待に関連する費用が前年より増加しており、これらが赤字の要因となっています。通期予想も赤字となる見込みです。
配当予想は、当初の1株当たり2円配当から無配へと変更しました。株主優待制度については、これまでの100株での優待から1,000株以上での優待に変更しました。
四半期業績の推移 及び 品目別四半期売上高の推移

第2四半期の売上高は第1四半期に比べて減少しており、それに伴い利益もマイナスとなっています。
スライド下段に品目別の推移を記載しています。直動機器の売上高は第1四半期と同水準で推移しており、トップラインが伸び悩んでいる状況が続いています。
精密部品加工については、第2四半期は季節的な要因で伸びにくい時期ではあるものの、さらに売上が少ない結果となりました。ユニット製品については、徐々に売上が伸びてきています。
売上高及び主要売上先の推移

スライド左側に、子会社と親会社についてグラフを示しています。中国子会社において、第1四半期の売上が例年よりやや多めに出ています。これは、球面軸受の販売や、直動のリニアブッシュに関して在庫を市場に流通させたことが要因です。
その結果、例年に比べて親会社の売上が減少した影響で、子会社の割合が10パーセントから3パーセント程度増加しています。
2026年3月期 第2四半期 営業利益増減要因

利益の減少要因としてもっとも大きいのは、この1年間でトップラインが伸びず、販売個数を増やせなかった点です。4月以降に生産調整や購入品などのコスト削減策を進めており、材料費や外注費を適正に生産に寄与するよう調整して、労務費の削減にも取り組んでいますが、赤字で着地しました。
貸借対照表

期末時点の貸借対照表です。流動資産については、棚卸資産が3月末に比べて1億円弱増加しています。
売れるユニット系の在庫も溜まっていますが、主に直動機器のリニアベアリングの在庫を戦略的に増やしてきました。ただし、これについては現在、生産調整を行っており、今後は減少傾向となる見通しです。
固定資産については、繰延税金資産が3,800万円減少しています。上期に積んでいた繰延税金資産を赤字決算のため一時的に下方修正し、1回落とす処理を行っています。ただし、期末時点での計画次第では、繰延税金資産を再び積む可能性もあるため、下期及び今後の展開により検討を進めていきます。
キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローについてご説明します。営業活動によるキャッシュ・フローについては、営業利益が稼げていないためマイナスとなっています。
ただし、今後の展開として、来年1月より下請代金支払遅延等防止法が中小受託取引適正化法に変更されることにより、当社の回収条件が改善されます。これにより、多少はプラスに転じると考えています。
財務活動によるキャッシュ・フローについては、9月末時点では4,200万円のプラスとなっています。10月に入ってから長期資金を2億円ほど調達していますので、下期にはそれがプラスとして反映される予定です。
2026年3月期業績予想 及び 品目別売上高予想

今後の業績予想です。下方修正した数字として、今期の売上高は16億円を予想しています。今から約10年前のトップラインまで下がる状況ですが、これから盛り上げていく方針です。利益ベースでは赤字となる見込みです。
品目別では、直動機器は9億8,300万円で前期比28パーセント減、精密部品加工は3億7,800万円で前期比44.3パーセント減、ユニット製品は2億4,100万円で前期比21.3パーセントの増加を見込んでいます。全体としては、前期比28.6パーセント減を予想しています。
設備投資推移

設備投資についてです。今期は1億円強の設備投資を行い、その累計で償却費が積み上がっている状況です。来期以降については新たな設備投資の計画はまだ立てておらず、メンテナンスや今後の事業展開に応じて検討していく予定です。
株主還元

株主還元についてご説明します。スライド左側には、配当予想の修正に関して記載しています。今回、1株当たり2円から無配に変更します。
スライド右側には、株主優待の内容変更について記載しています。当初の計画では、利益を確保して株主優待から配当へ厚くすることを目指していました。しかし、この業績の状況では配当を実施するのが難しいため、株主優待もやむを得ず変更するという苦渋の決断をしました。
今後の業績を見据え、資金をしっかりと成長投資に回していきたいと考えています。
中期経営計画

中期経営計画を開示しており、今回2026年3月期の数字についても下方修正しています。現在、見直しを検討しているところです。
中期経営計画

今後については、これまでの事業領域である直動機器や精密部品に加えて、特に力を入れていきたいのは、自社ブランドの位置決めステージ、球面軸受です。用途をさらに深掘りしながら販売先を模索していきます。
チタンやその他の難しい材質の加工のニーズも高まる中、当社はホンダからさまざまなことを学ばせていただき、さまざまな材質や難しい加工にも対応できる技術を持っています。今後は、このような強みを活かしながら、ホンダ以外の取引先にも事業を広げていけるよう取り組んでいきたいと考えています。
直近のTOPICS①

ここ半年間における重要なトピックスについて、簡単にご紹介します。まず、2025年10月2日に、日本のヒューマノイドロボット産業の再興を目指す新団体として、一般社団法人「KyoHA(京都ヒューマノイドアソシエーション)」が設立されました。当社もこの団体に参画しています。
この団体の中心は、早稲田大学の高西淳夫教授やテムザック社が担っています。高西教授とは、約20年前に二足歩行ロボットを研究開発していた頃から、球面軸受をはじめとした多くの研究で協力してきました。これらの実績を評価され、当社も参画することができました。
現在、ヒューマノイドロボットは注目されている市場です。昨日から東京ビッグサイトで「国際ロボット展」が開催されており、ニュースでも取り上げられています。
直近のTOPICS②

中国で開催された、半導体の展示会における当社の様子です。
直近のTOPICS③

人材にも力を入れています。この後に掲載している参考資料については、会社概要や当社の取り組みの説明になりますので割愛します。財務に関する説明は以上です。ありがとうございました。
経営ビジョンと戦略

尾崎浩太氏(以下、尾崎):代表取締役社長の尾崎です。よろしくお願いします。今後の展開についてお話しします。
今期はここまで業績が悪化するとは想定しておらず、予想以上の悪化となっています。経営ビジョンとしては、世の中では人手不足により自動化・省力化が求められているため、その機械要素部品であるリニアブッシュでアジアNo.1を目指しています。このビジョンは今後も変わることはありません。
一方で、このビジョンのために準備や努力をしてきましたが、需要の回復を待っている現在、新たなビジョンを加える必要性も認識しています。具体的なビジョンについては現時点で明言できませんが、社内で議論を重ねているところです。ボトムアップ方式で、私たちが目指すべきビジョンをもう一度考えていきたいと思っています。
戦略については、数年前からフランジタイプの増産を進めてきました。ストレートタイプではシェアを確保している一方で、フランジタイプのシェアは5パーセント程度と低迷しており、これは当社の生産能力が不足していることが要因です。そのため、増産体制を整えるべく準備を進めてきました。
需要の流れについては、2017年がピークであり、2018年を経て、2019年に調整局面を迎えました。2020年から回復するかと期待していたものの、新型コロナウイルスの影響を受けました。しかし、需要は必ず回復すると見込み、2020年に数年をかけて減価償却費を上回る設備投資を行う計画を立てました。
これは、2017年の反省を踏まえています。2017年に急激に需要が回復した際、生産が追いつかず、時間外労働や休日出勤に頼る状況となり、フル稼働・フル生産でも需要に応えられないという頭打ち状態に陥りました。
この経験から、減価償却費の範囲内での設備投資を見直し、あえて減価償却費を超える設備投資を決断したのが2020年です。3年から4年、4年から5年と、ピークアウトするまでの期間は負担が重いですが、将来を見据え、思い切った対応を行うということで計画しました。
2020年は前年同期比で2割から3割減の受注でしたが、2021年には増産要請があり、需要が急に回復しました。しかし、2020年から計画していたものの、機械の導入は2021年からでしたので、2021年の需要ピークにも対応しきれず、再び力ずくの生産体制となってしまいました。
「今度こそは」ということで、次の需要のピークは2024年後半から2025年ではないかと言われており、特に2025年は需要が拡大する見込みであるとして、取引先からもかつてない需要の山に備えるよう要請がありました。
2022年に取引先の中期経営計画と方針が打ち出され、当社もこの計画に基づき準備を進めてきました。また、この時点ですでに設備投資を進めていたため、さらなる後押しを受けるかたちとなりました。
そして、いよいよ2025年となりましたが、少々雲行きが怪しくなってきました。2022年に取引先より打ち出された5,000億円の中期経営計画をピークに、2022年2月にはウクライナ紛争が始まりました。
当時、これほど長期化するとは想定していませんでした。その影響に加え、材料費や電力費の高騰など、原価を押し上げる要因が相次ぎました。しかし、フランジタイプのシェアを取るための投資は無駄にならないと考えていました。
一方で、2022年4月には東京証券取引所の改革が始まり、流通時価総額の基準を満たない可能性が浮上しました。後ほど詳しくお話ししますが、これにより、かつてない需要増加を前提に進めてきた計画を見直す必要に迫られました。
2025年にはスクラップ・アンド・ビルドを通じて利益改善を進める予定でした。利益率の低い商品を廃止するなどの方針を掲げていましたが、一方でトップラインの伸びが見られず、想定外の状況も重なったことで利益改善は実現できずに、着地計画の再調整が必要となっています。2026年については、事業領域の整理に関するページでご説明します。
事業環境

事業環境についてです。直動機器は調整局面にありますが、想定以上に長期化しています。かつてない需要の山が来ることを想定して進めてきましたが、かつてない在庫の山になっているのが現状です。
精密部品加工については、2025年後半から繁忙を予想していましたが、レギュレーション変更に伴うスケジュールの遅れにより、計画どおりに進まず遅れが生じています。
ユニット製品については、業界唯一の球面軸受の需要が中国市場で増加し、計画どおりに推移しています。ただし、最近の対中関係の変化により、今後についてはやや不透明です。ステージの需要回復については、微増傾向にあります。
設備投資・減価償却費・研究開発費の推移

設備投資・減価償却費・研究開発費の推移です。先ほどお伝えしたとおり、減価償却費を超える設備投資を3年から4年続けてきましたが、現在はその方針を少し変更しています。
PMマトリックス

PMマトリックスです。縦軸が既存技術を応用した製品で新市場を開拓する、横軸が既存顧客へ新しい提案を行っていくことを示しています。緑枠で示した、今年の取り組みについてご説明します。
先ほどお話ししたスクラップ・アンド・ビルドの方針に基づき、「ストレート大型形番の撤退」を進めました。なお、一部処理が残っており、来期に持ち越す部分もありますが、このタイプの撤退を進め、別分野に注力していく予定です。
「フランジに表面処理を施し付加価値を上げた提案」についても、フランジに表面処理を施した製品を納品しましたが、直動需要が停滞しているため、現在リピートを待っているところです。
また、一番力を入れていた「26モデルの部品点数増狙い」については、先ほどお話ししたように苦戦しています。良い点としては、ユニット製品が順調であり、球面軸受の引き合いが増えていることです。
事業領域の整理

事業領域について整理しています。横軸が実行のしやすさ、縦軸が効果を示しています。直動機器需要の変動は、我々でコントロールできるものではありません。そのため、現在集中すべき領域としては、精密部品加工、球面軸受、Zチルトステージの3点になると考えています。
また、並行して今後取り組むべき領域としては、新事業の模索、具体的には「KyoHA」などの関節設計量産があります。さらに、レース部品以外の精密加工、ユニット製品の先端パッケージ狙いも挙げられます。
今、直動軸受については想定以上に調整局面が長引いていますが、必ず「A」の領域に戻ってくるはずだと考えています。ただし、戻る時期がまだ読めていない状況です。
球面軸受における取り組み

球面軸受における取り組みについてです。短期的に注力している領域としては、半導体のZチルトステージや、ゼンカイレーシング社に納めているシミュレーターがあります。このシミュレーターはレーサーの育成を目的に使用されています。また、チップ/チルトミラーマウントや油圧シリンダーも短期的な注力領域に含まれます。
中長期的には、ヒューマノイドロボット「KyoHA」や医療向けを考えています。
KyoHA(京都ヒューマノイドアソシエーション)

先ほど佐々木からも、「KyoHA」に参画したという話がありました。これについては10月初旬に発表し、その影響で株価が上昇しましたが、その後、優待内容の変更を発表したことにより株価が下落しました。
最近では、昨日の日本経済新聞に13社の1つとして掲載されたため、株価はストップ高になったと考えられます。
昨日、ロボット展を訪問しましたが、ヒューマノイド分野では数年前はアメリカ勢が主導していましたが、現在では中国勢が強い状況です。日本勢も出展しているものの、ファナックや安川電機は、二足歩行のヒューマノイドではなく、もの作りの現場や工場で使用するロボットに注力している印象です。
日本のもの作りをなんとかしなければいけないということで、「KyoHA」が立ち上がりました。災害時など、力が求められる場面でヒューマノイドロボットが活躍するだろうという背景があります。
ただし、現在はAIが注目を集めており、ヒューマノイドロボットも結局はAI競争となり、中国やアメリカが最先端を走っていると思います。我々はAI部分を担うわけではありませんが、肘や膝などの関節部分に使用される球面軸受を駆使することで貢献できるということで、過去の実績を評価いただき、参加することになりました。
ヒーハイストとしては、これは「やりたいこと」「やれること」「やるべきこと」であると判断し、参画しています。
ただし、まだ具体的な成果がかたちになったわけではありません。これからの取り組みとなるため、長期的なプロジェクトとなります。
球面軸受を駆使して協力を進めていく予定ですが、来期の業績に直ちに反映されるようなものではない点をご理解いただければと思います。現時点では具体的にどの程度の成果が出るかは未知数です。
注力製品Zチルトステージとは

注力製品についてです。現在、注力しているアイテムの1つにZチルトステージがあります。Zチルトステージとは、上下面の角度を合わせて、平行出しを行うステージです。
用途としては、半導体や液晶の露光、導通検査(ダイアタッチ)、実装(ダイボンダー)、平坦度計測などがあります。求められる機能としては、サブミクロン精度に加え、特に追従性が高く、装置の高さが可能な限り低いことが挙げられます。
Zチルトステージ動画

Zチルトステージの動画を掲載しています。これは当社のホームページでも公開していますが、XYθZといった軸があり、煽る・傾くように動く仕組みになっています。Zチルトステージでは、球面軸受が活用されています。
これはパッケージの断面と下部のパッケージの立体イメージを示しています。CoWoSとは、複数の異なるチップをシリコン製の土台上に高密度に配置し、あたかも1つの巨大なチップのように接続する、TSMC社が開発した最先端のパッケージング技術です。
微細チップバンプで、わずかな傾きでも接続不良が発生します。一部のバンプだけが先に接触したり、他のバンプが届かず未接合となったり、バンプがクラックやショートを引き起こしたり、パッケージの大型化により誤差幅が拡大することがあります。
これらの問題に対応するため、Z方向の高さ調整だけでなく、チルトのミスアライメント補正が必要です。そのため、球面軸受を使用したチルトステージの需要が伸びています。また、一部の半導体メーカーでは、自社でこれらの対応を進めているケースもあります。その場合、当社の球面軸受が必要となります。
また、全体をパッケージとしてユニット化してほしいというお客さまもいらっしゃいます。このような状況の中で、現在はZチルトステージに注力しています。
先端パッケージでは、アライメントが求められる工程が存在します。具体的にどのような工程で使われるのかというと、ダイアタッチ工程があります。専門用語で少し難しいかもしれませんが、ウエハの平坦度確保などの工程で求められます。
先端パッケージとは、複数の異なる半導体チップを1つのパッケージに統合し、性能向上、小型化、低消費電力化を実現する最先端の製造技術のことです。従来の微細化だけでは性能向上が困難であるため、チップを重ね合わせたり、複数のチップを1つの基板上に集積したりする技術が注目されています。
その中で、チルトといった傾きや煽りが必要とされる場面があり、当社はこのZチルトステージに注力していく方針です。
超精密XYθステージ

超精密XYθステージについてご説明します。こちらはチルト機能は入っていませんが、東京エレクトロンデバイスさまと共同で開発を進めています。
開発の背景として、半導体製造装置や液晶パネルの貼り合わせ工程、光学系の光軸合わせといったアライメント分野で、近年サブミクロンレベルの精度要求が増えています。
その中で、通常使用しているZ軸くさびアクチュエータ機構を水平軸に転用することで、軸の送り精度に大きく影響を与えるボールねじのよろめきを軽減し、従来の構造では達成が難しかったサブミクロンレベルの精度向上を実現できると考え、開発に至りました。
当社は特許を出願していますが、横向きに配置することで精度の向上が可能となるということです。高追従性、高精度、高剛性が得られたことが証明され、バックデータとして、ボールねじのよろめきの軽減や微小送り時の追従性の結果が示されています。
なお、先ほどのZチルトステージについては、現在1台受注を受けていますが、今後は高精度であることを証明し、拡販につなげていきたいと考えています。
いずれ直動軸受の調整局面も終わり、必ず集中すべき領域に戻ると信じています。それがいつになるのかは不透明ですが、半導体の前工程であるWFE市場については、2024年と2025年にわずかに成長し、2026年後半から2027年にかけて本格的に回復すると予想されています。
現在、AI関連の先端市場が半導体分野の中心となっており、他の成熟市場はまだら模様です。パソコンやスマートフォン、車載用半導体の市場が復活すれば、これまで行ってきた減価償却費を上回る設備投資が、良い結果をもたらすと考えています。
現時点では苦しい状況ですが、我慢の時期であり、2030年に向けて徐々に回復していくと期待しています。今取り組んでいることを、確実に良い結果へとつなげられるよう努めていきたいと考えています。
以上で説明を終わります。ありがとうございました。
質疑応答:過去の振り返りと今後の事業展開について

質問者:いつも丁寧なご説明をありがとうございます。業績の下方修正や優待の見直しが行われている中で、佐々木取締役の髪が白くなっているように感じました。
今後の展開としてがんばってくださるというお話がありましたが、これまでの展開を振り返りながら尾崎社長におうかがいしたいと思います。私は2016年の決算説明会から御社の話をうかがっていますので、足かけ10年となりますが、尾崎社長が社長となって約20年となります。
毎回同じような話を聞いている気がするのですが、富士フィルムはまったく違う会社に生まれ変わるのに17年を要したと聞いています。それを考えると、20年あればまったく別の会社になれていた可能性もあるのではと思うところがあります。
尾崎社長にたらればのお話をうかがうのも少し変かもしれませんが、振り返った時に、新しい展開をどこかで進めていれば、今とはまったく違う展開になっていたのではないかと感じる部分があれば、お聞きしたいです。
また、部品メーカーである以上、ユーザーの動向に左右される部分が大きいのは仕方ないと思いますが、御社として独自にハンドリングできるような事業領域を切り開くことも可能ではないかと思います。御社内で完結するようなビジネスを創出する余地について、尾崎社長の構想があればお聞きしたいです。
尾崎:ご質問の後半の部分で、「今後新しい展開を図っていくべきではないか」というお話がありました。まさに現在がその時期に当たります。
私がまず取り組むべきと考えたのは、既存事業のブラッシュアップでした。取引先の計画に基づいて事業を進めてきましたが、確かにおっしゃるとおり、それだけではおもしろみに欠けると感じています。
「おもしろいからやる」では食べていけるかはわかりません。しかし、ホンダのスピリットでいえば、なぜF1を始めたのかというと、1964年にまだ二輪メーカーであり四輪も作っていない段階でF1に参戦しました。その理由が「おもしろいからやる」でした。
「KyoHA」も同じく、「おもしろいからやる」です。既存事業をブラッシュアップしながら足元を固め、やりたいことも進めていきます。「やりたいこと」は「やるべきこと」をやらなければ実現できないと考えています。
質問者:20年の経験を活かして、今までとは違う取り組みを行うことに注目していますが、やはりやめようということになるのでしょうか?
尾崎:お伝えしたとおり、既存事業のブラッシュアップが先決だと思っています。新しい製品を新しい市場に持っていくことは冒険になってしまいます。挑戦はしますが、冒険はしないという姿勢です。
手堅いと思われるかもしれませんが、これまでそのような考え方で進めてきました。しかし、少し変えなければならないとも思っています。
