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富士製薬 Research Memo(1):女性医療への特化により、独自の競争優位性を構築するスペシャリティファーマ

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■要約

1. 会社概要
富士製薬工業<4554>は、医療用医薬品の開発・製造・販売を主事業とする日本の医薬品メーカーである。1965年4月に設立され、本社を東京都千代田区三番町に置き、海外拠点を含めたグループ体制で運営されている。2025年9月末時点で、連結従業員数1,760名に上る。1995年6月に株式を店頭登録し、現在は東京証券取引所プライム市場に上場している。

同社は設立以来、女性医療に特化してきた歴史を有する。当初は後発医薬品(ジェネリック)の提供により業容を拡大してきたが、近年は月経困難症治療剤、不妊治療剤、更年期障害治療薬など「女性医療」向け医薬品の圧倒的な品揃えと永年の知見により、新薬の開発・製造・販売を行うスペシャリティファーマとしての地位を確立している。また2013年から国内でいち早くバイオシミラー(バイオ医薬品の後続品)に取り組み、現在では国内トップクラスの製造販売承認数を保有している。販売・流通拠点は日本国内における複数の事業所(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)を核とし、富山県には製造工場及び研究所(富山研究開発センター)を有する。また、グローバル展開の一環として、タイの子会社OLIC (Thailand) Limitedを通じた海外取引及び製造販売も実施しており、国内外での事業基盤を持つ。

2. 2025年9月期業績概要
2025年9月期は、売上高・営業利益ともに2ケタ増収増益となり、好調な決算となった。売上高は前期比12.0%増の51,677百万円、営業利益は同28.6%増の4,990百万円を計上。経常利益は4,459百万円とほぼ横ばいで推移したが、親会社株主に帰属する当期純利益は3,000百万円(同51.2%減)と一時的な減益となった。女性医療領域では、新薬『アリッサ(R)配合錠』や『エフメノ(R)カプセル、経口避妊薬『ファボワール』などが堅調に推移し、業績をけん引した。加えて、乾癬治療薬『ウステキヌマブBS皮下注45mg「F」』の寄与により、バイオシミラー事業の成長が加速した。さらに、富山工場及びOLIC (Thailand)によるグローバルCMO(contract Manufacturing Organization:医薬品製造受託)事業も計画通り進捗し、全体の増収に寄与した。一方、営業利益は売上増に加え、前期に発生した契約一時金の反動減が研究開発費を抑制したことも寄与したが、最終利益は投資有価証券売却益の剥落により減益となった。

3. 2026年9月期業績見通し
2026年9月期業績は、前期に続き売上高・営業利益ともに2ケタ成長を見込んでいる。売上高は57,490百万円(前期比11.2%増)、営業利益は5,520百万円(同10.6%増)を予想し、2期連続で過去最高を更新する見通しである。売上総利益率は41.2%(前期は40.2%)へ上昇する見込みで、製品ミックスの改善と高付加価値品の構成比拡大が寄与する。経常利益は5,240百万円(同17.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,810百万円(同27.0%増)を予想している。

4. 中長期成長戦略
同社は10年後のありたい姿を定めた長期的な目標として「長期ビジョン2035ー“女性医療で新たな価値を創出し続け、誰もがwell-beingを実感できる社会へ貢献する”ー」を策定し、中期経営計画(2025年9月期〜2029年9月期)はこの「長期ビジョン2035」を達成するための前半5年間と位置づけ、、持続的な成長と企業価値の向上を目指している。同中計の枠組みは、中期の成長ドライバー、長期の成長ドライバー、経営基盤の強化により構成されている。こうした取り組みにより、2029年9月期は売上高800億円、営業利益100億円、ROE10.0%を目標としている。

■Key Points
・女性医療に特化してきたスペシャリティファーマ
・外部環境は、女性医療への認知度向上や女性活躍推進社会の浸透などにより当面の間フォローが続く
・医療費適正化の観点からバイオシミラー事業への飛躍的な需要増も期待できる
・処方箋を書く医師にとっては女性医療分野の薬品は同社が第一想起

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)

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