fbpx

なぜ政府はインフレを止めないのか。放置すれば税収30兆円増、「物価対策」より「物価高対策」を選ぶワケ=斎藤満

そもそも、大規模な財政支出策は、ケインズ経済学を待つまでもなく、それ自体がインフレ促進策になります。日銀も利上げをしたものの、実質金利は短期で大幅なマイナス、長期でも依然としてマイナス金利で、金融政策は依然として景気支援、インフレ促進方向にあります。政府は少なくともインフレの抑制を考えてはいません。

それもそのはず、政府にとってインフレは財政上、救いの神となっています。

歳出を増やしても、野党からしばしば財源をどうする、と批判されます。かといって、歳出を増やした分増税すれば、国民からも反発を食らいます。増税論議は与党にとっては最も困難な問題です。

ところが、インフレがこれに救いの手を差し出します。いわゆる「インフレ増税」ですが、インフレにすれば、自然に税収が増える仕組みになっています。典型的なのは、消費者物価が上がればそれだけ名目の消費額が増え、消費税収入が増えます。

それだけではありません。物価高で賃上げが起きると名目所得が増え、税率区分が上がり、所得税率や社会保険料負担率区分が上がりかねません。また法人税も増えます。物価高経済はそれだけ企業は値上げがしやすく、値上げで利益が増え、その分法人税も増えます。

実際、政府は26年度の一般会計予算で、税収を83.7兆円計上、昨年より7.6%、金額にして約6兆円の税の増収を見込んでいます。特に個人の所得税は11.7%増、消費税は7.1%増で、個人が4.5兆円弱の負担増を担います。国会で個人から4兆円もの増税案を出せば政府は叩かれますが、インフレ増税は国民が知らないうちに増税となるので、反発が出ません。

インフレのなかったコロナ前の税収は年間50兆円台が多かったので、来年度の税収はインフレの積み重ねで30兆円も水準が高まることになります。政府にとっては「インフレさまさま」で、これを簡単には手放せません。それでも物価高で国民が不満を募らせるのを避けるために、電気代やガソリン代を下げて「物価高対策」をやっていると訴えています。

国民が求めるのは「物価高対策」ではなく、そもそも物価が上がらないようにする「物価対策」です。しかし、政府は違います。政治家はお金を少しでも多く動かすことが政治家としての権力誇示になるので、大型財政に固執します。その分、税収が黙っていても増えるインフレを手放しません。しかもインフレで名目GDPが水膨れするので、GDPに対する債務残高比率も低下、「責任ある財政」を主張できます。

資産バブルから物価高に

政府にインフレを抑える気がなく、場当たり的な物価高対策をとって一時的に上昇率を下げても、根っこのインフレは高まります。

特に新年にはサービス価格、それもこれまで物価指数を低く抑えていた持ち家世帯の帰属家賃(物価指数の16%を占め、実体的な物価上昇率よりも0.3%から0.4%低く見せています)が住宅価格の上昇を受けて上がり始めそうです。

これは持ち家世帯が仮に家賃を払ったとすれば、という架空の家賃で、住宅価格の動きに影響されます。東京都の住宅価格がこのところ大きく上昇するようになり、東京都区部の帰属家賃が、特に非木造分で前年比2.3%の上昇まで高まってきました。マンション価格の高騰から今後さらに高まり、全国にも波及する可能性があります。

Next: 国民も諦めている?政府が言う「インフレマインド醸成」の先は…

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー