間違った推測が横行へ
南鳥島のレアアース採掘の試験は、26年1月から開始される。27年1月から1日350トンの試験操業を始める。商業生産は30年以降とされるが、気になるデータ(と言っても憶測)が報じられている。「南鳥島付近でレアアース泥を採掘するコストは、中国産レアアースの市中価格の数倍から数十倍に達する」(『日本経済新聞』1月13日付)。この記事には、吟味しなければならない点が含まれている。
海底泥を海上まで吸い上げるコストは、1トン5ドル程度とされる。この後は、化学的精錬法であるから大掛かりな設備も労働力も不要とされている。それだけに、中国の採用する物理的精錬法に比べて設備は小型化で済む。トータルとして計算しても、南鳥島のレアアースコストが、前記の「中国産レアアースの市中価格の数倍から数十倍」というのはかけ離れた想定と言うほかない。厳密なコスト分析ではなさそうだ。
特に指摘したいのは、南鳥島のレアアース泥の品位ガ中国陸上鉱山の20倍以上もあることだ。これは、コスト計算において南鳥島のレアアースが、中国に比べてはるかに(20倍も)優位であること示している。
G7財政相会合後、片山さつき財務相は記者団に対し、次のように語っている。「レアアースの中国依存を迅速に低減させる必要性について、幅広い合意が得られた。中国以外からのレアアース供給を強化するため、短期的、中期的、長期的な政策アプローチの概要を説明した」という。さらに、「労働条件や人権の尊重といった基準に基づいた市場の創出が重要である」(『ロイター』1月13日付)。
日本が、レアアース供給を強化するため、短期的、中期的、長期的な政策アプローチの概要を説明したのは、南鳥島のレアアース採掘が前提になって世界のレアース供給を論じていることに留意すべきであろう。さらに、「労働条件や人権の尊重」は、レアアース精錬過程において公害を引き起さない日本の化学的精錬法のメリットを説いたにちがいない。化学的精錬では、精錬過程で労働力が不要ですべて機械化される。これが、公害を引き起さないゆえに、「人権尊重」となるのだ。
このような、日本における生産過程の実態解明によって、次のように結論づけられよう。南鳥島のレアアース価格が、先の「中国産レアアースの市中価格の数倍から数十倍に達する」という推測は、大きな過誤によるものであろう。G7財政相会合では、レアアースの「価格の下限設定」まで話し合われている。レアアース価格が、化学的精錬法によって将来、下落するという想定がされているからであろう。
日本技術で低コスト生産
今回のG7財政相会合では、南鳥島のレアアース採掘の実態を「お披露目」することにもなった。この会合には、インド・豪州・メキシコの財政相が参加している。それぞれ、自国のレアアース鉱山で化学的精錬法採用されれば、目先のレアアース増産と価格低下という期待が持てるであろう。現状では、まだ局所的な効果に過ぎない。だが、世界に散在する小規模鉱山が、化学的精錬法によって採算線へ引上げられて息を吹き返せば、レアアースの生産は一挙に増えるであろう。
世界には、どれだけの小規模鉱山があるのか。「レアアース」という名前に惑わされているが、実際は世界各地にレアアースが散在している。それが未開発のままに放置されているのは、物理的精錬法で大規模精錬所の建設が不可欠であった結果だ。
それが、日本の化学的精錬法を採用すれば、環境に親和的で低コストかつ、柔軟な小規模生産が可能になる。こうして、レアアースの生産量は一挙に増加する見通しになってきた。