■クリアル<2998>の業績動向
3. KPIの動向
「CREAL」の売上総利益はGMV×テイクレートからなる。テイクレートは、案件組成手数料、ファンド運用期間手数料、償還手数料からなる確定フィーと、ファンド外部売却時におけるキャピタルゲインのプロフィットシェアである変動フィーで構成され、これまでの実績から8~10%としている。GMVは調達時点(ファンド成約時点)の数値で集計・公表されるが、収益費用の認識方法は「不特法1号2号スキーム」と、2026年3月期より開始した「不特法3号4号スキーム」とでは異なる。「不特法1号2号スキーム」では収益費用の認識が総額ベースで行われ、「CREAL」の売上高及び売上総利益への計上は取引決済時点(物件売却時点)になる。そのため、GMVの成約から売上総利益の計上までに多くのファンドで約1年前後のタイムラグが生じる。一方「不特法3号4号スキーム」ではSPCが資産を所有し、同社がファンド運用の受託者になるため、同社は収益の認識をネットベース(フィー収入)で行い、ファンド組成時に取得報酬、運用中に期中報酬、物件売却時に売却報酬とそれぞれの実行タイミングに合わせて収益が発生する。つまり、不特法1号2号スキームと比較して、全体として収益の認識タイミングが早まり、物件売却に左右されない安定的な収益基盤を確保できる。またSPCがファンド組成時に金融機関から借入れを行うことが可能なため、レバレッジ効果からファンドが大型化する傾向になり、その分売上総利益の先行指標のGMVも拡大する。一方で、「CREAL PB」の売上総利益は売上高×売上総利益率で算出される。また、「CREAL PRO」はフィー収入が主体で、売上の大部分が売上総利益となる。主力の「CREAL」の売上総利益は全体の56.4%(2026年3月期)と利益成長に大きく貢献することから、同社はGMVと投資家数を最重要視し、リピート投資率、売上総利益等もKPIとしている。
GMVは2026年3月期末時点で累計1,047.0億円(前期末比42.8%増)と大きく成長した。2026年3月期の獲得GMVは313.9億円、期初計画400億円に対する達成率は78.5%となった。また累計投資家数は2026年3月期末時点で138,587人(同42.8%増)となった。2026年3月期の獲得投資家数は41,522人となり、期初計画35,000人に対する達成率は118.6%と好調であった。SNS等のマーケティング施策が貢献した。不動産クラウドファンディングは競争が激化しているが、いまだ伸びしろの大きい市場であり、同社は業界のリーディングカンパニーとして商品開発力やマーケティング力を駆使した高品質サービス提供により、競争を勝ち抜く方針だ。
GMVに関する重要指標の1つである「CREAL」投資家のリピート投資率※は2026年3月期末時点で90.4%と前期末比0.6ポイント上昇した。リピート投資率は新規投資家の投資割合にもよるため獲得施策等の状況によって上下するが、2026年3月期に入っても90%前後を維持しており、引き続き高水準を保っている。
※ 過去1年間に投資実績がある投資家の投資金額が該当四半期のGMVに占める割合。
なお「CREAL」は、ファンド運営終了後も償還された金額と同水準、もしくはそれ以上の金額を新ファンドへ再投資するロイヤルティの高いユーザー層を獲得していることから、SaaSに近い安定積み上げ型モデルの収益構造となっている。同社はSBIホールディングスとの提携強化が進んでいるほか、ファンドの拡充にも注力している。今後もさらなる累計GMV及び累計投資家数の成長が想定され、再投資プラス新規投資のループも大きく拡大するものと予想される。「CREAL」は成長性と安定性を内包し、同社事業全体の成長ドライバーとして、さらなる高い成長ポテンシャルを有するサービスになると弊社では見ている。
不特法3号4号ファンドの推進で貸借対照表がスリム化し財務健全性が向上
4. 財務状況と経営指標
2026年3月期末における資産合計は、前期末比8,674百万円減の44,262百万円となった。主に、預託金が1,207百万円増加した一方で、現金及び預金が2,004百万円、販売用不動産が10,401百万円減少したこと等による。負債合計は、同14,874百万円減の32,788百万円となった。主に、クラウドファンディング預り金が3,558百万円、1年内返済予定の長期借入金が1,653百万円、及び長期借入金が2,338百万円増加した一方で、匿名組合出資預り金が23,562百万円減少したこと等による。純資産合計は同6,200百万円増の11,474百万円となった。主に、第三者割当増資の実施や新株予約権の行使により資本金、資本剰余金がそれぞれ2,171百万円増加したこと、及び親会社株主に帰属する当期純利益を1,938百万円計上したこと等により利益剰余金が1,758百万円増加したことによるものである。同社の財務状況の特長として、負債の部にクラウドファンディング預り金6,212百万円、匿名組合出資預り金13,716百万円を計上したが、それと均衡して資産の部に現金及び預金13,694百万円、預託金3,845百万円の合計額17,540百万円のうちクラウドファンディング関連で8,391百万円、販売用不動産20,309百万円のうちクラウドファンディング関連で12,549百万円を計上した。資産合計44,262百万円のうち、47.3%をクラウドファンディング関連の勘定科目が占める。なお、匿名組合出資預り金は匿名組合出資であるため、法的に返済義務を負う性質のものではないが、貸借対照表上では負債として計上される。このため参考値ながら、クラウドファンディング特有の会計処理に関する項目を除いた実質的な自己資本比率は46.4%※と、貸借対照表に基づく自己資本比率25.5%に比べて高い状態にある。
※ クラウドファンディング関連の主な勘定科目及び残高として、クラウドファンディング預り金、匿名組合出資預り金を資産合計から除外して算出。
流動比率についても貸借対照表からは144.3%となるが実質的には232.6%※となり、財務健全性については問題ない水準と弊社では捉えている。SPCによりオフバランス可能な不特法3号4号スキーム案件の増加に伴いクラウドファンディング関連勘定が徐々に減少しており、引き続き資産効率の改善や財務健全性の向上が期待される。
※ クラウドファンディング関連の主な勘定科目及び残高として、販売用不動産(クラウドファンディングで募集した物件のみ、12,549百万円)、現金及び預金及び預託金(クラウドファンディング関連、8,391百万円)を流動資産から除外、匿名組合出資預り金とクラウドファンディング預り金を流動負債から除外して算出。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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