<外部環境による減益と、依然として強い本業>
本期予想まで含めると3期連続の減益が見込まれていました。
足元では原材料価格の高騰や、前期のトランプ関税など外部環境の悪化が利益を圧迫しています。
ただし、長期の業績は比較的右肩上がりで、ROEも10%を超え、目安となる8%を上回っています。
電気自動車一辺倒だった市場の見方が変化し、ガソリン車やハイブリッド車の安定性が再評価される流れもあります。
内燃機関車やハイブリッド車の技術、作り込み、低コスト生産ではトヨタの競争力は高く、世界販売台数は年間約1,000万台に達します。
<バリューチェーン事業という成長余地>
注目したいのが、販売後の顧客接点から利益を得るバリューチェーン事業です。
トヨタは毎年約1,000万台を販売し、世界に膨大なオーナー基盤を持っています。
新車販売だけでなく、修理、部品、アップグレード、金融などを通じて、保有期間全体から収益を得ることができます。
例として、アルファード向けに静粛性を高めるアップグレードをディーラーで提供すれば、愛車へのこだわりが強いオーナーから追加収益を得られます。
また、残価設定型クレジットは金融事業であり、金利収入を生みます。
車両購入時の金融から、購入後の整備・機能向上までを一体化できることは、トヨタの大きな強みです。
バリューチェーン事業は、収録時点で営業利益の半分以上を占めると説明されています。
これまで評価の中心だった新車販売台数に加え、長年積み上げたオーナー基盤を低い追加資本で収益化できれば、ROEの改善が期待できます。
現時点ではPBRが1倍を下回る水準であり、三菱UFJと比べて純資産が大きくても、低いPBRによって時価総額が抑えられていました。
ROEの上昇がPBRの見直しにつながるかが焦点です。
株価はピークの約4,000円から3,000円前後まで約25%下落していました。

トヨタ自動車<7203>週足(SBI証券提供)
これは衰退の表れなのか、それとも一時的な逆風による低評価なのか。
バリューチェーン事業の伸長を含めて判断する価値があります。
注目企業3:野村総合研究所――AIは脅威か、それとも追い風か
野村総合研究所(NRI)は、企業のシステム構築や運用を担う大手SIerです。
野村證券を母体として発展した経緯から金融分野に強く、大手金融機関の重要なシステムを数多く担っています。
<「SaaSの死」と海外事業の減損>
株価は高値の約6,300円から一時3,000円台へ、半値近くまで下落しました。

野村総合研究所<4307>週足(SBI証券提供)
背景には、生成AIによってソフトウェアを低コストで作れるようになり、既存のSaaSやシステム開発会社が不要になるのではないかという「SaaSの死」への懸念があります。
野村総合研究所の場合、懸念だけでなく実害も発生しました。
買収した海外のシステム構築会社で、顧客がAIを使って自社開発する方針に転換し、仕事を失う事例が生じました。
その結果、買収価格のうち純資産を上回る部分として計上していた「のれん」の価値を引き下げ、減損損失を計上しました。
これにより利益が大きく落ち込んだことが、市場の不安を強めています。
<金融の基幹システムは簡単に置き換えられない>
一方、日本国内の主要顧客は大手金融機関です。
振込、証券取引、投資信託などのシステムは停止が許されず、安全性、規制対応、長年の運用知識が不可欠です。
顧客が生成AIだけで短期間に内製化したり、価格だけを理由に別会社へ乗り換えたりする可能性は、一般的なソフトウェアより低いと考えられます。
金融システム障害が社会へ与える影響の大きさを考えても、既存基盤には高いスイッチングコストがあります。
<AIによるコスト低下を利益にできるか>
AIがコードを書くようになれば、従来必要だったプログラマーの工数を減らし、開発コストを下げられます。
価格を据え置けるなら利益率の改善要因です。
ただし、顧客から値下げを求められれば、効率化の利益は顧客側へ移ります。
野村総合研究所と顧客の力関係が重要になります。
さらに、企業がAIを導入する際の設計・実装・運用を野村総合研究所が担えれば、AIは既存事業を壊すだけでなく、新たな需要を生む追い風にもなります。
既存の金融システム収益を守りながら、AI実装を成長事業にできるかが焦点です。
過去のフリーキャッシュフローはおおむね良好ですが、将来像には不確実性があります。
収録時点のPERは約24.5倍と決して低くないため、単に株価が下がったという理由だけでなく、成長シナリオを精査する必要があります。
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