注目企業4:塩野義製薬――パテントクリフをM&Aで乗り越えられるか
塩野義製薬は感染症領域に強みを持つ新薬メーカーです。
新型コロナウイルス治療薬や、インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」などを手がけ、海外の製薬会社とも協力しながら世界市場で製品を開発しています。
業績は年度ごとの変動があるものの、足元では大きく伸びる局面もあり、基調としては成長しています。

出典:マネックス証券
<新薬企業が抱える2つの大きなリスク>
第1のリスクは、開発中の新薬がFDAなど規制当局の承認を得られないことです。
上市への期待が高まった後に承認されなければ、期待が剥落し、研究開発費も回収できません。
第二のリスクが「パテントクリフ」、すなわち特許切れです。
利益を稼いでいた薬の特許が切れると、安価なジェネリック医薬品が参入し、売上と利益が急減する可能性があります。
新薬メーカーは、主力薬の特許が切れる前に次の稼ぎ頭を育て続けなければなりません。
<買収で製品群を広げる一方、財務リスクは上昇>
塩野義製薬はパテントクリフへの対応として、JTが保有していた医薬品事業の関連会社を完全子会社化するなど、外部の医薬品事業を取り込んでいます。
HIV治療薬に関する権利を自社へ取り込む取引も行い、将来の製品群と収益源を広げようとしています。
一方で、M&Aに伴い、従来ほとんどなかった有利子負債が一気に増えました。
現在の説明では、新規借入は約6,000億円規模とされ、フリーキャッシュフローも買収支出によって大きくマイナスになりました。

出典:マネックス証券
好調に見える足元の利益の裏側で、財務リスクを取って成長投資をしている点を見落としてはいけません。
市場はこのリスクを織り込み、現時点のPERは約11倍まで低下していました。
株価も直前に大きく上昇した後で下落し、5年程度で見るとほぼ横ばいです。

塩野義製薬 <4507>週足(SBI証券提供)
ただし、企業が成長するために適切なリスクを取ることは必要です。
買収した事業や新たな製品群が成果を上げれば、現在の評価には割安余地がある可能性があります。
医薬品は成果予測が難しいため断定はできませんが、ネガティブに評価されている今だからこそ継続して調べる価値があります。
株価が下がるほど、企業価値との乖離を検証する重要性は高まります。
4社に共通するのは「不人気の理由」と「反転の条件」があること
今回の4社は、単に株価が下がっているというだけではありません。
ベルクには原材料高と利益率低下、トヨタには外部環境による減益とEV競争、野村総合研究所にはAIによる代替懸念、塩野義製薬にはパテントクリフとM&A後の財務負担という、評価されない理由があります。
同時に、ベルクの標準化経営、トヨタの巨大なオーナー基盤、野村総合研究所の金融システムにおける高いスイッチングコスト、塩野義製薬の感染症領域の知見と製品群拡充という、反転の条件になり得る強みもあります。
投資判断では、悪材料を無視するのでも、悲観論をそのまま受け入れるのでもなく、悪材料が一時的か構造的か、強みがそれを上回るかを検証します。
まとめ:見過ごされた企業を深く調べ、価値が価格を上回る時に買う
逆張りをすれば必ず成功するわけではありません。
勢いのある成長企業へ投資した方がよいケースもあります。
それでも一般論として、多くの人が見ていない銘柄には、人気銘柄よりも企業価値と価格の差が生まれやすいと考えられます。
今回取り上げた4社も、この時点で投資対象として確定したわけではありません。
ここまでの分析は入口にすぎず、事業、競争優位性、財務、経営者、将来のキャッシュフローをさらに深く調べ、企業価値を見積もる必要があります。
そのうえで現在の株価が十分に安ければ投資し、価値が市場に評価されるまで長期保有する。これが、つばめ投資顧問が考える長期投資の基本です。
YouTubeでも詳しく解説しておりますのでそちらもぜひご覧ください。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2026年7月25日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。