■インターネットインフィニティー<6545>の事業概要
3. セントワークスを中核とするDXソリューション構想
2025年4月にM&Aによりセントワークスが加わったことで、これまで抽象的であった中期経営計画内のDXソリューション構想が具体性を持ち、成長戦略の実行可能性が大きく高まったと弊社では見ている。従来は2025年問題、すなわち後期高齢者の増加に伴う社会保障費のひっ迫への対応を主眼にレコードブック事業を推進していたが、今後は2040年問題、すなわち介護人材の不足と生産性向上がより深刻な課題となる。
同社はこの問題を中長期的な経営リスクかつ新たな成長機会と捉え、中規模介護事業者を対象としたDXによる業務効率化、特にノンコア業務の削減を主眼とする「DXソリューション事業」を中期経営計画の中核に据えている。ノンコア業務の効率化は現場運営を大きく改善し、介護現場の負荷軽減とサービス品質確保を両立させる手段として有効である。
2040年問題は、65歳以上の人口がピークに達することで介護・医療需要が一段と増加する一方、生産年齢人口は縮小し介護人材が不足する構造的な問題として認識されている。既に介護現場では人員確保が難しく、1人当たりの業務負担が増大している状況にあり、今後はサービス提供体制の維持が困難となる事業者が増えると想定される。こうした環境下で求められるのは、人材確保に加え、限られた人員でサービスを維持するための「業務効率化」であり、とりわけノンコア業務の削減が重要となる。現状の対策は身体介護や機能訓練などコア領域に偏っているものの、実際には書類作成や利用者管理、請求処理などノンコア業務の負荷こそが業務全体の品質を左右しやすい。同社自身の介護運営経験からも、ノンコア業務の効率化が現場課題の解消に直結するという認識が強い。
介護現場では多数のシステムが導入されているが、それぞれが分断されておりデータ連携が不十分であることが業務煩雑化の要因となっている。同社は、導入率が高く業務の中枢を担う「請求ソフト」を統合の起点とすることが最も効率的であると判断した。とりわけ中規模介護事業者では、複数拠点・複数サービスの管理が必要となる一方、専任スタッフが十分に確保できず、SaaSの乱立がかえって運営負荷を高める構造的課題がある。そのため、DXによる業務改善の効果が最も大きく、事業者側のニーズも高い領域だと言える。
こうした背景の下、同社がセントワークスを取得した理由は、中規模介護事業者向けに強みを持つ請求ソフト「SuisuiRemon」の存在にある。同ソフトは複数拠点の情報・数字管理、債権管理、実績管理などの機能を備えており、同社のDX構想における基幹システムとして適合性が高い。加えて、セントワークスは中規模介護事業者に対する顧客基盤を持ち、同社が目指すDXソリューションに必要な要件である「請求ソフトであること」「中規模介護事業者向けに強みを保有すること」を満たしている。これにより、同社グループの介護運営ノウハウとシステムの融合が実現し、ノンコア業務の大幅削減による生産性向上が期待される。
同社が目指すDXソリューション事業の全体像は、「SuisuiRemon」を中核とするシステム群を様々な外部サービスと連携させ、AIエージェントの活用や業務標準化を通じてノンコア業務の削減を実現するという方向にある。介護業界は一般企業に比べてDXが遅れており、各種SaaSのAPI連携も十分に進んでいない現状があるため、同社はまず会計や人事・勤怠など各種SaaSとのAPI連携を強化し、可能な領域から業務の自動化・効率化を図る方針である。
一方で、APIではフルオート化が難しい業務についてはBPaaSを用いて包括的に補完する戦略をとり、現場負担を多角的に軽減する体制を整備する。これにより、介護現場は利用者支援など品質向上につながるコア業務に集中できる環境へと移行可能になる。将来的にはM&Aやサービス領域の拡張を通じ、「SuisuiRemon」を起点とした中規模介護事業者向けの包括的な経営支援プラットフォームを構築する計画であり、API連携とBPaaSの両輪によるシステム統合戦略がその基盤となる見通しである。
さらに、2040年を見据えてDXソリューション事業の収益規模拡大を想定しており、システム開発や機器販売、保守サービス、コンサルティング、さらにはノンコア業務のBPOなど、多様な提供ソリューションを拡充していく方針である。同社は長期的に同事業をグループの主力事業へ成長させ、2040年問題の解決に寄与するとともに、持続的な企業価値向上につなげる構想を示している。
■業績動向
M&Aにより売上高が大きく伸長、営業利益も過去最高水準を達成
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期は、売上高5,892百万円(前期比14.2%増)、営業利益536百万円(同33.8%増)、経常利益589百万円(同43.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益319百万円(同25.4%増)となり、増収増益で着地した。当期の特徴として、2025年4月に中規模介護事業者向けソフトウェアを開発・販売するセントワークスを完全子会社化し、新たに連結対象へ加えたことが挙げられる。M&Aに伴うのれん償却費やPMI関連費用などの一時的な負担が発生したものの事業全体はおおむね計画どおりに進捗し、売上高及び各利益段階で前期を上回った。一方で、アクティブライフ事業における経営資源の集約と収益力強化を目的として、フルケアと正光技建の連結子会社間合併を決定した。これに伴い将来計画を見直した結果、正光技建に関連するのれんの減損損失を特別損失として計上している。事業ポートフォリオの最適化を進める過程で一時的な損失を計上したものの、本業収益の拡大基調は維持されている。
同社は今後、セントワークスが有する介護事業者向けソフトウェアを起点として中規模介護事業者向けDXソリューションの提供を強化する方針である。介護人材不足や高齢化進展を背景に、業務効率化ニーズは今後も高まると見られ、既存の介護サービス事業とのシナジー創出が期待されると弊社では見ている。総じて、当期は既存事業の安定成長に加え、セントワークス買収によるDXソリューション領域の強化が業績拡大に寄与した年度であった。短期的にはのれん償却や事業再編に伴う負担が発生しているものの、中長期的には介護DX市場の成長を取り込むための事業基盤整備が進展した1年であったと弊社では評価する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)
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