■プロパスト<3236>の今後の見通し
2. 2028年5月期以降の業績見通し
不動産業界では、マンション価格の上昇に伴う契約率低下が懸念されるものの、低水準で推移する住宅ローン金利が下支え要因として期待されている。国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、先行指標となるマンションの新設住宅着工戸数は、2025年度には前年度比21.2%減の82,881戸と、2000年代初頭に200,000戸を超えていた水準と比較すると大幅な低水準にとどまっている。特に近年は、都心部におけるマンション価格の高騰に伴い、契約率の低下や販売戸数の減少が見られる。
こうした経済環境下において、同社グループでは強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の取得を進める。もっとも、東京都区部の分譲マンション平均販売価格は1億円を超え、一次取得層の購買能力を超える水準に上っている。こうした価格高騰の影響から、同社グループの取扱件数は当面限定的となる見通しである。しかし、分譲開発事業におけるカスタマー対応等のノウハウは、賃貸開発事業やバリューアップ事業にも活用できることから、引き続き重要な事業として推進する。足元では住宅ローン金利が上昇に転じており、分譲マンションの購入需要への影響が懸念される。現在着工しているプロジェクトは、2027年10〜11月ごろに竣工を予定しており、順次収益に寄与し始める見込みである。
一方、賃貸開発事業に投資する富裕層や個人投資家は、自己資金の割合が高く、金利上昇による投資意欲への影響は限定的と見られる。建築費高騰に対しては、VECD(バリューエンジニアリング・コストダウン)により機能や品質を維持しながらコストの最適化を図るとともに、工期を抑制した賃貸開発物件に注力することで事業拡大を図り、バリューアップ事業の落ち込みをカバーする計画である。
バリューアップ事業では、引き続き割安な収益不動産を精査して取得を進める。なお、賃貸開発事業及びバリューアップ事業においては、投資ファンドが売却先に加わるなど購買層が拡大している。このため、同社グループでは今後の収益拡大に向け、需要の底堅い駅近物件を中心とした仕入れを継続する。
建築請負事業では、115年を超える歴史と技術、信頼・実績を背景に、既存顧客からのリピート受注にとどまらず幅広い顧客層への営業活動を展開するとともに、適切な原価管理を通じて施工を進めている。建築事業は足元で堅調に推移しているものの、資材価格の上昇リスクも存在することから、今後の見通しについては慎重な姿勢を維持している。
分譲開発事業、賃貸開発事業及びバリューアップ事業では、引き続き事業エリアを厳選することで高収益物件を確保する計画であり、都心部の駅近・好立地物件にターゲットを絞り、買付の意思決定を迅速に行うことで他社に先駆けた好物件の仕入れを可能にしている。こうした仕入力に加え、定評のある企画力・デザイン力を融合させることで、3事業が互いに補完し合う体制を確立している。具体的には、分譲開発が抑制される局面においても、投資家需要が底堅い賃貸開発や、竣工済みで資材高騰の影響を受けにくいバリューアップ事業でカバーするなど、市場環境に応じた補完構造を構築している。さらに、建築請負事業が加わったことで工事進行に応じた売上計上が寄与し、業績の安定性がより高まったと評価できる。2028年5月期以降も、堅調な業績推移を維持できると弊社では見ている。
また、同社グループでは、サステナビリティへの取り組みを課題と認識している。近年、投資家が銘柄選択をする際の判断基準としての重要性が増しており、サステナビリティへの取り組みを明確に示すことが求められている。
なお、同社グループは、現時点で中期経営計画を公表していない。これは、同社グループの事業規模では業績の変動性が高く、計画値の提示が投資家をミスリードする懸念があるとの経営判断によるものである。また、地政学リスクの顕在化やエネルギー・食料品の価格上昇に伴う消費者マインドの低下など、外部環境の不透明感が強いなか、同社グループとしては特定の計画にとらわれず柔軟な経営判断を優先したとの意図も推察される。しかしながら、グループの経営方針を明確化し、投資家や従業員が将来像を共有するためには、中期経営計画の策定並びに公表は有意義であると弊社では考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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