【メキシコ】トランプショックで地固まる、経済成長率上ぶれ
メキシコ自動車工業会が発表した1−4月の自動車生産台数は、前年同期比13.6%増加の約122万台増加となり、過去最高を更新したことがわかりました。アメリカ向け輸出の勢いが増していることが要因ということで、これを受けてメキシコ銀行は、今年の経済成長率の見通しを1.5%から2.5%に上方修正しました。
メキシコは、アメリカ・トランプ政権の誕生で一旦身構えてパニックになったわけですが、結果的にはトランプ大統領は予算がないので壁も作らず、本人は、ソーラーパネルを並べて通れないようにしようなどと馬鹿なことを言い始めています。影響としてはフォードがパニックになり自動車工場を中止し、その点だけはメキシコが割りを食ったものの、フォードはもうトランプなど怖くないと言って、中国に工場を移すことにしています。
メキシコ経済の調子が良いのは、NAFTAのメリットによるものです。NAFTAの再交渉が始まっていますが、トランプ側はほとんどメキシコを叩くほどの元気も勇気もない状況です。また笑い話としては、トランプ大統領はワイナリーを持っており、その農園が全員メキシコの違法農民を使っていたということで、トランプ政権に対して「正しいパスポートをください」と、就労ビザの申請をしなくてはならないなどという話があるほどです。
カナダの方はいじめようがないほどバランスが取れており、メキシコの方は若干叩かれても仕方がないところがありましたが、トランプのメキシコいじめがなくなり、メキシコがうまくいって生き残れば、しばらくするとメキシコの1人当たりGDPはあまり遜色がない水準になってくるでしょう。
主要国の自動車生産台数を見ると、メキシコは韓国並みの水準に近づこうとしていて、一大生産国となってきています。スペイン、フランス、イギリスなどよりも大きい生産国であり、メキシコはそこまで来ているのです。
一方、メキシコの政策金利の推移をよく見ると、金利は6.75%という高い水準です。日本は金利が0%なので、メキシコにリスクがあればその分損をするので、その時は泣きペソと言い、我々も何回も泣きペソを食らいましたが、もしそのペソが下がらないということになってきたら、メキシコペソで預金をすればかなり良いという話になってきます。メキシコが安定するということは、投資先としても非常に面白いという話になってくるのです。
トランプ大統領がかき回してくれたおかげで、もしかしたらメキシコは予想よりも良くなってしまうかもしれません。また、メキシコペソの対米ドル相場の動きを見ると、ペソ安がずっと進んできていたのが、ここにきて反転しています。今後ペソ高に進む可能性があるのであれば、あれだけの金利で、ペソが少なくとも暴落する可能性がないならば、非常にありがたいことです。
アメリカ人はこの状況を見るとメキシコで預金をしようとするので、メキシコにお金が集まってくるのです。トランプ大統領が今うまくいっていないことを表して、こういう状況になっているのです。これは非常に面白い現象だと思います。
『グローバルマネー・ジャーナル』(2017年6月28日号)より一部抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による
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