「トランプ・ショック」に備える意味でも、ドルは売りやすい環境にある
3. 10月雇用統計がドル売り要因になる可能性は十分
しかしながら、大幅なドル売り要因となる可能性は十分ありそうです。雇用者数や賃金上昇率がマイナスを記録するのであれば、12月利上げが大幅に後退することにもつながりますし、トランプ大統領誕生という、トランプ・ショックに備える意味でもドルは売りやすい環境下にあります。
しかも、トランプ候補は米国経済が停滞した原因として、クリントン候補とオバマ大統領、そして政治的な影響を受けたFRBが適切な政策を怠り、雇用を創出してこなかったからと批判し続けていますから、雇用統計の弱い数字が追い風となることも想定されます。
というわけで、雇用統計の下振れによって、70%以上という利上げ確率は大きく下げる余地があること、トランプ候補へのアシストになるということから、大幅なドル売り要因になり得るということは覚えておきましょう。
現状についてはこんなところでしょうか。週明けの大統領選挙が予定されていることから、基本的には売りにも買いにもポジションをとりにくい状況ですが、ドル高よりはドル安の方を重く見ておきたいといったところです。
先行指標は弱めだが、ハードルはそこそこ高め
それでは、先行指標や事前予想値、注意すべきポイントなどについて解説していきましょう。まずは先行指標からとなります。
全体的に良くないですね。極端に悪い数字もないので、過度に不安視する必要はないとは思いますが、やはり相関の高いとされるADP雇用報告は弱めですから、期待もできなさそうです。
そして、事前予想値については、非農業部門雇用者数が+17.5万人、失業率が4.9%、賃金上昇率が前月比で+0.3%と、そこそこ強めな数字が並んでいます。
ここ最近のADP雇用報告の軟調傾向から、普通に考えれば完全雇用が近そうなので、どちらかといえば非農業部門雇用者数は予想を下回る可能性の方が高いでしょう。
初動としては如何にもドル売りで反応しそうな気がしますが、賃金がしっかり上昇していれば、完全雇用に近づいているとポジティブに受け取られることになりますから、+10万人を大幅に割り込む、あるいはマイナスになるといった極端に弱い数字でもなければ、飛びつかないように注意です。