ECBクーレ専務理事「ユーロ下落は金融政策の目的ではない」
ロイター通信が、ECB欧州中央銀行のクーレ専務理事の見解を報じています。ユーロの下落は、ECBの金融政策の目的ではないという内容です。
また、同じくロイター通信ですが、ドイツのメルケル首相がECBの金融政策について、ドイツが望む状態に戻っていないと言及。
これらの発言は、ECB欧州中央銀行に対して、景気の回復に合わせて金融緩和を転換するよう求めるものですね。つまり、これまでドイツやフランスは自国レベル以上の金融緩和の恩恵を受けてきたわけですが、これが今後、予想外の展開を引き起こすかもしれないのです。
ドイツが恐れる「予想外の展開」とは?
これまでのユーロの問題は、ギリシャなど経済が苦しい国が自国が苦しいからと言って利下げしたり、通貨安にしたりといった、自国の金融調整が行えなくなる問題でした。
つまり、ギリシャも、ドイツやフランスと「同じ土俵」ということです。経済が弱くてもドイツと同じというのですから、厳しいわけです。以前なら不景気の時は、通貨安などで自然に調整されていたわけです。
そして、今後に起きる可能性がある不都合は、ドイツやフランス側の問題です。つまり、景気が回復して本来なら利上げを行う局面になっても、ギリシャやポルトガルなどと同じ金融政策であるために、通常通りの利上げを行えない(利上げが遅れる)可能性があるのです。
どのような不都合が起きるかはまだ未知数ですが、例えばドイツやフランスなどユーロ圏の経済強国でインフレが異常に進んで、物価高になるとか、バブルを抑えられないなどの問題が生じる可能性があります。
これは、考えてみればわかるのですが、ギリシャと同じ金融政策をドイツで行い続ければ、物価のコントロールを失うこともあり得るわけです。ギリシャがこれまで苦しかったのと逆の現象ですね。
たとえドイツで景気が過熱してインフレを抑制しようと思っても、欧州の他の国が同じような状況になければ、利上げや金融引き締めを行うことができないのです。
最近、メルケル首相やドイツの金融関係者が、しきりにECB欧州中央銀行の金融政策について発言しています。ドイツマルクのままであったらどうだとか、かなり刺激的な発言も相次いでいます。
おそらくドイツは、ECB欧州中央銀行がギリシャやポルトガルなどに配慮して、金融引き締めが遅れるリスクを感じ取っているのでしょう。
『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年7月11日, 12日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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