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今あえて「北朝鮮とアメリカの戦争」を画策しているのは何者なのか?=斎藤満

最大の「火種」は米国内にある

ところが、その北の事情に反して、周辺大国がそれぞれの事情で北朝鮮を利用しようとしていて、その過程で軍事衝突が生じるリスクがあり、その辺の事情を市場は織り込めていないように見えます。このため、想定外の「軍事衝突」が市場を混乱させる可能性が排除できなくなっており、そもそも米国内に「火種」があります。

米国のトランプ政権が国防問題で一枚岩になっていません。背後で大きな影響力をもつロスチャイルドは軍事行動には慎重で、対中国では「一帯一路」で共通の利益を狙っています。一方、ロックフェラー・グループの影響力も高まっていますが、ティラーソン国務長官など、ロックフェラー系でもエネルギー関連の面々は、ことを荒げずに、交渉に持ち込みたいと思っています。

しかし、同じロックフェラー系でも、軍事産業関連の面々は軍事行動に積極的です。それでも当初はイスラエルのためにイラン攻撃を優先すると見られ、北朝鮮は後回しと見られていたのですが、ここへきてトランプ大統領を刺激しているのが彼ら軍事産業関連のネオコン勢力のように見えます。このネオコン勢の影響力がどうも高まっているように見えるのが気がかりです。

中国、そしてロシアの「深謀遠慮」

これに対して、中国ロシアがそれぞれの事情を抱えています。両国はともに朝鮮半島を「緩衝地帯」と位置づけ、今の状況を変えたくないはずです。このため、11日にはロシアのラブロフ外相が、北朝鮮問題の緊張緩和のために、中露が共同計画を持っていると発言し、市場に安心感を与えようとしました。

しかし、両国の事情も複雑です。中国の習近平主席は、自らを毛沢東の再来のように、長期絶対政権を築こうとしています。そこに習近平主席のもとで中国との冷戦を進めようとしているトランプ政権のロックフェラー系が接近し、習主席の狙いを支援する形になっています。

中国としても北朝鮮の核装備は抑制したく、北の暴発は回避したいところですが、その一方で現在進行中の北戴河会議から秋の共産党大会で、習近平絶対体制が完成するまでは米国との争いは避けなければなりません。米中間の貿易不均衡が拡大し、南シナ海での米中緊張も高まり、そこへ北が核実験でもしようものなら、中国の立場は非常に難しくなります。

ロシアはすでに北朝鮮内にかなり入り込んでいます。もともと北朝鮮は旧ソ連の衛星国としてつくられた面もあります。それだけ、ロシアにとっても北朝鮮と米国との確執は放っておけません。それでも、北朝鮮にロシア軍を配備するには理由が必要で、その際、ある程度米国が軍事行動に出て、朝露国境に難民が押し寄せるなどの事態も必要です。

このように、建前では中国もロシアも北朝鮮問題の緊張緩和を望んでいるように見せつつ、ロシアにとってはある意味、米国が小規模な軍事行動に出た方が都合が良い面もあります。もちろん、ロシアも中国も米国と全面的な戦争に出る気はありません。部分紛争を利用したい程度です。

Next: 米国が軍事介入した場合の「北のリアクション」は読み切れない

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