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最新大化け事例に学ぶ「テンバガー(10倍株)の見つけ方」3つのポイント=栫井駿介

テンバガー(10倍株)は、個人投資家の夢です。様々な好条件が重ならなければ達成できませんが、ヤマシンフィルタ<6240>はそれをわずか1年で達成しました。その要因と、次のテンバガーへの教訓を学びます。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

1年で株価10倍! ヤマシンフィルタに学ぶ銘柄選定のコツと教訓

国内シェア70%を誇るニッチトップ企業

ヤマシンフィルタ<6240>は、主に建機の油圧に用いるフィルタを製造する会社です。国内シェアは70%と圧倒的で、海外を含めても高いシェアを誇るニッチトップ企業です。

売上高は100億円程度と、あまり大きな会社ではありません。2014年に東証2部に上場し、2016年に1部指定されたばかりです。これまで特に大きく注目されることはありませんでした。

しかし、ここ1年の株価の伸びは劇的です。1年前に500円を切っていた株価は、いまや4,000円近くにまで伸び、10倍(テンバガー)を達成しそうな勢いです。ここ数日も連日上場来高値を更新しています。

ヤマシンフィルタ<6240> 日足(SBI証券提供)

ヤマシンフィルタ<6240> 日足(SBI証券提供)

会社の設立は1956年と古く、事業内容も地味な会社です。そんな会社がなぜこのような短期間で10倍にものぼる成長を遂げられたのかを分析し、今後の銘柄選択の参考にしたいと思います。

減益予想に対して吹いた「神風」

株価が伸びたのだから、業績もさぞ大きく伸びたのかと思いきや、最高益こそ達成しているものの、それほど大きな伸びでもありません。売上高に至ってはほとんど横ばいです。

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現在のPERは74倍と、とんでもなく高い水準になっています。正直に言って、バブルの様相を呈していると言わざるを得ません。当然、今から購入するのは、バリュー株投資としては現実的ではありません。

しかし、ここまで伸びたのにはやはり理由があると考えるべきです。

端的に見てわかりやすいのが、業績予想の上方修正です。株価上昇のきっかけとなったのは、2016年11月の上方修正で予想EPSが15円から37円へ2.5倍になったことです。その後2月には45円、最終的に52円で着地しています。当初予想からは実に3.5倍です。

ここまで業績が伸びたのは、いくつかの「神風」が吹いたためと考えられます。

同社の業績は建機業界の需要に大きく左右されます。年度はじめには、中国経済に不透明感が漂っていたため、建機需要が鈍ると考えられていました。業績予想は前年度比マイナスで、投資家だけでなく、経営陣も悲観的に考えていたことでしょう。

しかし、中国は公共投資で景気をてこ入れしたことにより、ひるがえって建機の需要は伸びました。

一方で、経営陣は逆風を想定していましたから、利益を確保するためにコスト削減に力を入れていました。最終的に、売上高が伸びたにもかかわらず費用は前年度と同水準となっています。

想定外の需要の伸びとコスト抑制により、売上高は5.8%しか伸びていないにもかかわらず、営業利益は2.4倍になりました。これが、やっていることは地味なのに業績が伸びた要因です。

単に中国市場が伸びただけではありません。ちょうどそのタイミングで、中国最大の建機メーカーである三一重工との取引を開始したところでした。好調な中国市場とあわせてポジティブな材料が重なり、投資家心理を押し上げたものと考えられます。

直近の決算も好調を維持しており、2018年3月期の業績予想は据え置いているものの、大きな上振れが想定されるためいまだに株価は伸び続けているのです。PERは高水準ですが、勢いのついた株価は簡単には止まりません。

Next: ヤマシンフィルタ株はなぜ10倍になったのか? 3つの要因

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