2016年10月1日より買い推奨してきたPCデポ<7618>を8月24日に売り推奨しました。当初推奨時からの上昇率は53.5%でした。本銘柄への投資は「不祥事等により大きく値下がりした銘柄に投資する」バリュー株投資の典型例と言えます。その流れを振り返ることで、バリュー株投資のダイナミクスを実感していただければ幸いです。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
常識を疑え。情弱搾取で炎上したPCデポ<7618>を買えた理由
悪評とは裏腹に、財務・事業内容に問題なし
PCデポは2016年の8月に、高齢顧客に高額なサービスを販売し、さらに高額な解約料を請求したことで「炎上」した銘柄です。株価は直前のピークの半値以下の水準に落ち込みました。
炎上騒ぎはやがて、「情報弱者からの搾取」や従業員への過大なノルマという「ブラック企業批判」へも拡大し、インターネット上では悪い噂が絶えませんでした。株価も低迷を続けます。
不祥事による株価低迷は、企業の実態に致命的な問題がない限り、バリュー株投資としては大きなチャンスとなりえます。そう考えて私は同社の調査を開始しました。すると、財務内容には問題がなく、しばらく業績が低迷しても倒産するようなことはないことは明らかでした。
事件は同社が単なるデジタル製品の小売業から、個人顧客に対するITサポート会社への転換を遂げようとしている最中で起きた出来事でした。小売業からサービス業へ転換できれば、利益率の向上が見込めます。
外部環境に目を向けると、IT製品が急速な進歩を遂げる中で、高齢者等へのサポートニーズは拡大していくことが読み取れました。同社はそのような社会の変化を敏感に感じ取り、大きくビジネスモデルを転換しようとしていたのです。炎上事件は大きな変化の中で起きた小さなひずみにすぎなかったと言えます。
サポートの強化により利益を向上させてきた実績もあり、悪評とは裏腹に手堅い銘柄だと結論付けました。私は会社への取材なども通じて企業体質に大きな問題がないことを確認し、会員への推奨を決定しました。
その後PCデポは、契約内容の見直しや社員教育の徹底を図り、汚名返上に努めました。業績は一時的に悪化したものの、徐々に底を打ち始めました。最近では米投資信託会社のブラックロックが買い増しを行うなど明るい動きも見られ、8月に入り株価は一時ストップ高を記録するなど大きく上昇しました。
推奨開始から1年経たずに50%を超える利益を確保できたことから、会員の皆さまへは売却を推奨するに至りました。これにより、多くの会員が利益を得ています。