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大炎上企業「PCデポ」で50%超の利益を上げた投資手法と妻の一言=栫井駿介

なかなか上がらない株価、決算発表遅延…

しかし、ここに至る道のりは、必ずしも平坦ではありませんでした。

推奨直後は、業績は前年対比で悪化するばかりで、株価はなかなか上昇しませんでした。推奨時の株価を下回った期間もあり、心配になった会員の方から質問攻めにあったこともあります。

追い打ちをかけたのが、決算発表の遅延問題です。

2016年度第3四半期の同社決算が当初予定日に発表されず、翌日・また翌日へと持ち越されました。決算発表の遅延でいいことが起きる可能性は低く、投資家の不安を煽りました。会員の方からも、企業体質に問題があるのではないかという厳しいご指摘も受けました。4日後にようやく決算が発表され、大きな問題が無かったことが分かると、ひとまず胸をなでおろしました。

その後の本決算では、過年度決算における細部の修正と、監査法人の交代が行われました。ここから推察するに、監査法人が急に細かな指摘を始め、現場が混乱したことが遅延の要因だったのではないかと考えます。交代前の監査法人は、東芝が会計不正を行った際に担当していた新日本監査法人でした。もう失点ができない中で、過剰に保守的になった可能性が否定できません。

経営状況に問題はないものの、危なっかしい面が残る銘柄だったため、私は机の上の調査にとどまらず、会社への取材や決算説明会への出席、店舗の観察などを通じて同社の理解に努めました。そこまでしてもなお大丈夫だと思えたことから、ここまで推奨を続けられたと自負しています。

常識を覆した妻の一言

私がPCデポを推奨したのは、妻の一言がきっかけでした。

私は以前から同社のことを知っていましたし、炎上事件のことも認識していました。株価が下がっていることも分かっていましたが、「いくら下がっても、こんなに印象の悪い会社に長期投資はできない」と、大方の意見と同じことを考えていました

ある日のテレビでも同社のニュースを取り上げていました。そこでは、従業員のノルマを記した「トウゼンカード」と呼ばれるものがネガティブな印象で報道されていました。それを見て私が「ひどい会社だね」と言うと、妻は「そうかしら?小売業ではある程度のノルマは普通のことよ」と反論しました。

妻は金融やビジネスとはほとんど縁がありませんが、かつて小売店で働いていました。現場にいた人間がそういうのですから、もしかしたら本当にそうなのかも知れないと思い、もう一度調査することにしました。そうしてフラットな目線で同社を見ると、世間で言われているほど悪い銘柄ではなかったのです。こうして私は「掘り出し物」に出会うことができました

金融の世界では、多数派と同じ動きをしていても大きく儲かることはありません。正攻法は、多数派と違う動きを採りながらも、論理的には正しい行動をすることです。妻の一言は、私が常識を疑うきっかけを与えてくれました。金脈は思わぬところに埋まっているのです。

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