東芝のこれから「4つのシナリオ」
東芝はこれからどうなってしまうのでしょうか。考えられる4つのシナリオを挙げてみたいと思います。(確率はあくまで主観的なものです。)
ケース1:経営破綻(確率15%)
東芝はすでに債務超過に陥ってしまっています。小さな会社であれば、銀行が融資を引き揚げ、倒産してしまう可能性の高い状態です。
一方で、原発事業の損失は将来の損失を反映したものなので、すぐにお金が出ていくものではありません。日々の資金繰りに困っているわけではなく、銀行が融資を継続すれば、当面の破綻は免れるでしょう。
しかし、あまりに銀行の不信感を招くようであれば、支援の継続が難しくなる可能性も否定できません。銀行もビジネスなので、ちょっとした引き金があれば一斉に引き揚げてしまうことも十分にあり得ます。
会社更生法や民事再生法の適用により経営破綻してしまうと、上場廃止が濃厚になるばかりか、100%減資となれば株式の価値がゼロになってしまいます。株主にとって最悪のケースですが、JALで実際に行われたように、決して可能性は低くないでしょう。
ケース2:上場廃止(確率50%)
私が最も確率が高いと考えているのが、経営破綻こそ免れるものの、上場廃止となってしまうケースです。東証に提出する内部管理体制確認書が却下となれば、6月頃にも上場廃止が決定してしまいます。
上場廃止になれば、その後株式を市場で売買できなくなります。しかし、株式の価値はゼロになるわけではありません。上場廃止時点で株主であれば、引き続き非上場会社である東芝の株主ということになります。
2004年に西武鉄道が有価証券報告書の虚偽記載により上場廃止となりましたが、約10年の時を経て2014年に再上場を果たし、株主は再び株式を売買できるようになりました。再上場時の株価が上昇すれば、利益が出る可能性はあります。
しかし、再上場がいつになるかも分からず、その間に増資などにより株式の希薄化が生じてしまったら株式の価値は下がってしまいます。上場廃止後の経営破綻など、その他の悪材料が出た場合も株式を売却できないため、保有するメリットはほとんどないでしょう。
ケース3:東証2部転落も上場は維持(確率30%)
東証の規定により、3月末時点で債務超過が解消されていなければ、東証1部から東証2部へ転落してしまいます。これは昨年のシャープと同じ状況です。
シャープは2016年3月末の債務超過を受けて、8月に東証2部に転落しました。その後、鴻海による資本増強を受け、今では債務超過の状態は解消されています。
個人投資家としては、東証1部でも2部でも同じように株式を売買することができるので、大きな問題ではありません。シャープの株価は東証2部転落してから大きく上昇しましたから、そこで利益をあげた投資家も少なくないでしょう。
一方で、機関投資家は社内規定により東証2部銘柄を購入できないことが多く、資金を引き上げるファンドも少なくないでしょう。そのため、東証2部転落でも上場廃止の危険性が遠ざかれば、かえって投資のチャンスが訪れるかもしれません。
ケース4:東証1部残留(確率5%)
東証1部に残留するためには、3月末時点で債務超過が解消され、なおかつ内部管理体制確認書が承認される必要があります。債務超過解消のためには、半導体部門の売却が完了するか、同部門で予想以上の利益が出る必要があります。
すでに半導体部門の年度内売却は諦めたとの報道があり、利益の急増も現実的ではありません。東証2部に転落しても実害はほとんどないことから、このシナリオの可能性は非常に低いと言えます。