公的年金に頼れない不透明な時代。個人年金づくりを目標にポートフォリオを構築してはどうでしょうか。もし皆さんがまだ30歳だとしても、早すぎるということはありません。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)
プロフィール:炎のファンドマネージャー(炎)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。
3タイプの銘柄群を組み合わせて「私的年金ファンド」をつくろう
「私的年金づくり」が今後の潮流になる
年金生活を迎えようとする個人が公的年金に加えて私的年金づくりを行うことは、今後の高齢化社会の潮流になると思われます。問題は、どうやってそれを実現させるのかということになります。
それには、投資家と企業の関係を取り持つ仲介者(一般的には証券アナリストや会計士、税理士が思い描かれます)などがキーマンになる可能性があります。実際に、私の活動はそうした仲介者になりつつあります。そこには、企業のリスク分析や将来性分析が不可欠です。ただ、そこは極めて難しいので、なかなか実現するのは困難です。
困難ではありますが、一つの回答となりそうなのは、高配当利回り銘柄を有効活用することです。年金としてインカムゲイン、つまり配当金収入を充当することがヒントになるかと思います。しかも運用上のリスク分散(銘柄分散、時間分散)を図りながら、中長期スタンスでのポートフォリオ構築を図ることが投資家には求められます。
限られた資金でも機能する「高配当銘柄」を使った年金づくり
運用金融資産は多ければ多いほど有効ではありますが、限られた資金でも十分に機能します。現状の金融資産が1億円あっても、銀行預金では受取利子は少なく、年金としては現状においては心もとないアイテムです。
年間に240万円の配当金が得られるなら、それは月額20万円に該当します。例えば6000万円の運用資産があるとして、4%の配当利回りの銘柄にすべて投資すれば得られる訳ですが、配当利回りは現在平均すると東証1部平均では1.6%にしか過ぎません。
上場企業の中には配当性向の方針を100%において高配当を投資家に約束している事例も見られますので、配当利回り自体は高い銘柄もあります。しかも業績も堅調に推移していて、将来の値上がり益も享受できる可能性が感じられる銘柄も存在します。
投資家にとっては、配当性向が低くて、なおかつ配当利回りの高い銘柄を見つける必要があります。配当性向は企業の考え方次第、事業の性格によっても変動する可能性があります。これは投資家ないし仲介者がしっかりと企業にヒアリングして確認しておかないとなりません。
キャピタルゲインの可能性も考慮。しっかりと企業分析を
また、将来のキャピタルゲインの可能性も年金づくりには重要な要素になります。
6000万円の資金でめでたく4%の配当金を得るポートフォリオが構築できたとして、それによって黙っていても240万円が得られることになりますが、投資した株式資産の評価も変動する可能性があります。つまり投資した企業が事業の発展に成功し収益を高めて株式市場での評価が高まると、株価の値上がりによってそれを売却するとキャピタルゲインが得られることになります。
これはどの程度値上がりするかにもよりますが、6000万円で4%の配当金が得られるポートフォリオだとして期待配当利回りが2%になった場合、単純に資産評価は1億2000万円になる訳です。つまり投資家は投資元本を1億2000万円にして新たなポートフォリオを組むかそのままそのポートフォリオを維持するかを検討することになる訳です。
いずれにせよ、いくつかの配当利回りの高い銘柄を見出して分散投資することが重要です。また、企業の財務内容を十分に分析して万が一のリスクにも備える必要があります。
日本の株式市場には将来に起きるリスクを想定して配当性向が低い企業が多く、なかなか配当利回りを4%以上に高めることは難しいのかも知れませんが、まったくない訳ではなく、意外に見落とされている銘柄も存在しています。これは地方市場にあったり新興市場にあったりもします。IRがなされていない場合も評価が低いため、配当利回りが高い状態にあるケースもあります。高配当利回り銘柄はこのような状態になっている背景もありますので、そのあたりは十分に吟味が必要です。