日本人が知らない「トルコ大使館前騒動」根底にある理由
まず、原因と結論をまとめておきます。
今回のトルコ大使館騒動は、10月10日、トルコの首都アンカラで起こった自爆テロによって、大勢のクルド族が犠牲になったことが発端です。トルコ政府によるクルド族への弾圧は、今回に始まったことではありませんが、暴動の発火点になったのは、確かにアンカラの自爆テロです。
現在、クルド族は、シリア、イラク、イラン、トルコに約3200万人が分散していると推定されています。そのうち、トルコへの集中はもっとも大きく、約3200万人のうち約1500万人のクルド族がトルコ国内に住んでいます。
もっとも、トルコの人口調査では、グルド族は国民としてカウントされないので、彼らがトルコの全人口のうち、何割を占めているのかは正確にわかっていませんが、推計では約10%から最大で30%であると考えられています。
クルド言語は英語や他の西洋言語とともに、インド・ヨーロッパ語族のグループの一部でありながら、トルコでは特に、住んでいる国の利点を享受しない、あるいは、享受できない気の毒な立場に追いやられている世界最大の民族グループです。
トルコ政府は、トルコ人単一民族主義を取っており、クルド人の存在は認めていません。クルド人はトルコ政府が排除したい民族なのです。
今、トルコでは日本と同様、極右政党の政治家が権力をいっそう拡大しつつあります。
クルド族弾圧の先頭に立っているのが同国の第12代大統領、レジェップ・タイイップ・エルドアンです。
民主主義が発達した現在のトルコの憲法では、そうやすやすと、議会の議員を刑務所に入れたり、恫喝したりすることができないようになっています。しかし、トルコの公正発展党(AKP)は、クルド族が多い野党議員の逮捕を容易にしようと、恐ろしい法案を通そうとしています。
こうした極右政党の台頭は日本だけではなく、世界的に見られる傾向です。
特に、トルコでは日本と同様、エルドアンという独裁者が、クルド族にトルコ国民の怒りを集中させて、B層のトルコ国民を扇動することによって権力のさらなる拡大を画策しているのです。
そうした状況下で起きたのが、アンカラ駅前で起こった自爆テロです。大勢のグルド族が殺されました。
10日、アンカラ駅前広場では、クルド人や左派グループが、再燃しているトルコ人とクルド人の反体制勢力の衝突を終わらせるように政府へ求めるデモンストレーションを行っていました。
エルドアン大統領は、自爆テロ勃発直後、間髪入れずこう言いました。「犯人はイスラム国だ」。しかし、イスラム国は犯行声明を出していません。
エルドアンは、イスラム国憎しの演出をしてイスラム国と敵対しているかのように装っていますが、実はイスラム国から大いなる恩恵を受けているのです。
Next: イスラム国が盗んだ石油で儲け、負傷したテロリストを手当てする
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
『カレイドスコープ』のメルマガ
[月額756円(税込) 毎週木曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
『カレイドスコープ』は、よく「目から鱗」と言われます。国内外の確かな情報を、いくつも紡いで面にしたときに、初めて世界で起こっている事象の深層に迫ることができます。今こそ、ご自分のアングルと視座をしっかり持って、視界ゼロメートルの霧の中から脱出してください。