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米ドル覇権はコロナで終わった。10年後の基軸通貨が「仮想通貨」になる理由=吉田繁治

ドルの為替リスクと金利

ドルを買えば、ドル安のリスクに晒される。通貨変動がリスクです。金融でいう「リスク」は、日本語の「危ない」「損をする」という意味ではありません。将来の価値の「変動」が、金融のリスクです。

将来の為替レートは分からない。上昇も下落も、リスクとしては等しい。専門的には「ボラティリティ(標準偏差の変動幅)」と言っています。

先物での売りで、通貨の下落時に利益が出る投資ができるようになったため、ドル高もリスクになったのです。そのリスクを計算するのが、金利と標準偏差によるブラックショールズ方程式です。

資金不足を続けている対外純債務国(10兆ドル;1,100兆円)が発行する米国債は、ゼロ金利の日本・欧州の金利と、2%から2.5%の金利差(イールド)があるという理由から、売れていきました。

しかし今は、コロナショックからのFRBの緊急利下げで、米国債も金利ゼロです。ゼロ金利のドル国債を買うと、日本、欧州、中国からはドル安のリスクを、金利ではカバーできません。

短期で投機的なドル先物買いの動きは別ですが、2年単位の中期では、債務国の通貨のドルに金利差がない時は、基軸通貨とは言っても「円に対してドル安」の材料になります。

新型コロナの感染数と被害が、米国が日本より大きいことも加担します。

第二波も、日本よりは米国が大きいはずです。コロナショックの大きさは、金融のリスクです。いったんドル安に向かうと、海外である日・欧・中は、米国債を売るので、米国債価格は下がり、金利(利回り)は一層上がっていきます。

米ドル基軸通貨体制の黄昏(たそがれ)が来る

新型コロナは、米ドルがシェア60%の基軸通貨の役割を減らしていくことを示します。

中国と新興国は、基本的なところで「反ドル」です。

長期的(5年)にはなりますが、基軸通貨(国際的にやり取りされる通貨)は、多極化(複数の基軸通貨)に向かっています。

将来は以下に分散するでしょう。

(1)ドル圏(米国、日本、中南米)
(2)ユーロ圏(欧州、中東)
(3)中華圏(中国、日本を除くアジア、アフリカ)
※ユーロは、財政赤字を自由に増やすため、自国通貨(リラ)を発行したい姿勢も見せているイタリアの離脱から、5年後には崩壊しているかもしれません。

人民元の、国際通貨になり得る仮想通貨は、20年4月から使われはじめました。ビッグニュースのはずですが、コロナショックに紛れたことと、意味がわかりにくいため、大きなニュースにはなってはいません。

仮想通貨は、直接に国際的な決済の通貨になり得るからです。

世界の中央銀行は研究所を作り、密かに、自国の通貨を仮想通貨にする準備を進めています。外形は仮想通貨と同じである「電子マネーの奨励」がその入り口です。

Next: 10年後の世界を想定すれば、国際的な取引に使う通貨は、電子マネー化し――

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