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グロービング、スモールミーティングを開催 AI時代の企業競争力を支える暗黙知プラットフォーム構想

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2026年3月11日に発表された、グロービング株式会社アナリスト・機関投資家向けスモールミーティングの内容を書き起こしでお伝えします。

アナリスト・機関投資家向けスモールミーティング

納博司氏(以下、納):みなさま、こんにちは。いちよし経済研究所の納です。本日はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。

最近、AIについてさまざまな議論がありますが、本日はAIそのものだけでなく、特にAIが企業の業務や意思決定にどのように入り込み、企業の働き方や組織のあり方がどのように変わっていくのかという観点で議論したいと思っています。

特にグロービングさまは、企業のAI実装の現場を数多くご覧になられていると思いますので、今日はぜひ実務の視点も含めてお話をうかがえれば幸いです。

私は中小型株を中心にITサービスの一部をカバーしているアナリストです。コンサルティング業界に非常に詳しいわけではありませんので、ぜひみなさまから積極的にご質問やご意見をいただけるとありがたいです。よろしくお願いします。

田中耕平氏(以下、田中):グロービング株式会社代表取締役社長CEOの田中です。それでは、私から少しお話しし、その後はQ&A形式で進め、ご理解を深めていただければと思います。

データの価値の変化と生成AIのレイヤー

生成AIが大きく進歩したことに伴い、データの価値が大きく変化していると思います。その中で生成AIのレイヤーを考えた時、特に直近ではAnthropicの「Claude Cowork」や「Claude Code」、あるいは「OpenClaw」などが登場しています。これにより、どのような分野がAIに代替されると言われているのかについてお話しします。

データの価値の変化については、みなさまもご承知のとおりかと思いますが、基本的にインターネット上にある二次情報は、ほぼ工数をかけずに誰もが集めたり加工したりできるようになってきています。

企業内のデータについても、定型化されたデータは基本的に自動収集や加工の対象となっています。もちろん、AIが外部にデータを出さないように管理され、共有されない仕組みが整っており、企業内でそのようなデータを活用できる状態が整いつつあるのが現状です。

今後、価値が発揮される情報としては一次情報が挙げられます。ビジネス現場においてまだ形式知化されておらず、AIに入れるデータとしても整備されていない暗黙知の部分が非常に重要な価値の源泉になると考えています。

また、暗黙知を形式知に落とし込むだけでなく、AIで収集・加工可能な情報とどのように組み合わせて価値を創出するかが求められるようになってきていると思います。

スライド右側に示している生成AIレイヤーでは、非競争領域と競争領域があります。その上にはGPUやチップ、インフラ・MLOps、AnthropicやOpenAIのLLMモデル、さらに「Salesforce」や「Adobe」など汎用型アプリケーションといったSaaSアプリがあります。

個別アプリケーションに関しては、言い方を変えるとVertical AIと呼ばれる、特定の業務や業界に特化したAIと捉えていただければと思います。

直近で「Claude Cowork」が登場したことで、オレンジ色の矢印で示している領域で置き換えが進むと言われています。つまり、非競争領域である財務、法務、経理などの業務が、基本的にAIですべて代替できるのではないかという可能性が生まれています。

この分野には汎用型のSaaSアプリが含まれるほか、それを構築するSIerやコンサルティング、さらにはBPOも対象になると考えられており、これらがAIにより全面的に置き換わるのではないかと指摘されています。

このため、今回のアンソロピック・ショックのように、SaaSを提供する企業やSIer、AI開発企業、BPO、コンサルティング企業も含めて、市場の中で大きく売られるような状況が生じているのではないかと考えています。

一方で、グロービングが主戦場とする領域は、実は競争領域にあります。定型化された業務ではなく、容易に定型化できない分野です。

企業が競争力の源泉として基本的に持っている業務に対して、AIを活用することがグロービングの主戦場となっています。このような点から見ると、今回のトピックに関連するような対象ではないと考えています。

ただし、今後を含めて考えると、SaaS、SIer、BPO、コンサルティングの市場規模は合計約220兆円とされており、日本国内だけでも約17兆円のマーケットがあると我々は試算しています。これらの分野がAIで置き換えられる可能性は十分にあるのではないかと思います。

グロービングとしては、右側の競争領域において、我々が実際にAIで置き換えていくことを進めていく方針です。

AI活用の類型とGLBの注力領域

AI活用が現在どのように行われているのかについてご説明します。スライドには、クライアントと議論を進める際によくお話しする内容を記載しています。

縦軸は「AI活用のスコープ・深度」で、単発作業レベルなのか、プロセス全体を横断的に見るものなのかを示しています。横軸は「期待効果」で、業務の効率化、競争力の強化・新価値創造を示しています。

「AIに全部置き換えるため効率化できます」という側面もあります。それに加えて、AIを活用することで人の能力をしっかりと向上させていくこと、新しい価値を生み出すことは、当社にとって非常に重要な要素として認識しています。

現在、日本の多くの企業でよく行われていることは、類型1の作業レベルでAIアシスタントを活用する取り組みです。「Claude Cowork」「ChatGPT」「Copilot」などを利用して、さまざまな業務を行っています。

日本企業において、基本的にはそれぞれの現場でそれぞれの担当者が業務効率化を図るかたちで運用しています。

過去にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる手法がありましたが、いわば「野良RPA」のようなかたちで「ロボがいっぱいできました」といったことがAIでも起こっています。

このようなものは一部の工数を軽減することはできますが、実際に事業価値への大きなインパクトを与える取り組みができているかと言われると、まだそこまでは至っていないのが現状かと思います。

一方で、グロービングがクライアントのお手伝いをしている部分は、作業レベルで単発的にAIを作成したり、PoC(概念実証)を行ったりするところではありません。類型2のプロセス全体を捉え、多様なAIを「マルチAIエージェント」として統合し、人1人分など、人員がプロセス全体で削減できるような取り組みを進めています。

このような取り組みは、日本企業の中でもまだ十分に進んでいないところが多いのが現状です。ここに対して、当社のような企業がしっかりと支援できていることが非常に重要なポイントと考えています。

また、類型3もグロービングが注力している領域の1つです。決算発表資料にも記載していますが、例えば大手自動車メーカーにおいて、人財育成の視点を取り入れたAIの導入に取り組んでいます。

この取り組みがまさに類型3にあたるもので、現場におけるクライアント企業の暗黙知をAIに落とし込み、単なる作業の自動化にとどまらず、人財育成を含めて対応しています。

AIの活用においては、「Copilot」の導入やPoCにとどまらず、しっかりとしたビジネスインパクトを生み出していくことを目指しています。新しい価値によって人の能力を向上させる取り組みに注力しており、このような分野に先進的な企業が取り組み始めたと考えています。

Globe-ingとは

ここで、グロービングがどのような会社なのかについて、もう一度しっかりとお伝えします。

これまで基本的には「コンサルティングを行っている」とお伝えしてきましたが、実際には新しいJoint Initiative型や、AIの活用を含め、まったく異なる事業モデルに取り組んできたという点をあらためてご理解いただければと思います。

したがって、我々はコンサルティングファームではないと考えています。これまで「コンサルティング」とお伝えしていたのは、人材採用を含めてわかりやすさを重視したためです。

しかし、これからはコンサルティングではなく、パーパスにも掲げている「Growth Infrastructure(成長のインフラ)」ということで、企業の成長時におけるインフラとして、クライアント企業に成長基盤を確実に埋め込んでいくことが我々の役割であると認識し、その方向で動こうと考えています。

Globe-ingの提供する成長基盤とビジネスモデルの変遷

我々が提供する成長基盤とビジネスモデルの変遷についてです。我々は、ビジネスモデルを変えている途中であると認識しています。

成長基盤としての提供サービスは、まず従来型の「内なる外」のコンサルティングとして、CxOクラスの伴走者として戦略やDXを支援しています。

現状でもAIを活用しています。これまで若手が行っていた作業をAIが代替する取り組みは従来お伝えしているとおりですが、3人で実施していたプロジェクトを2人で回せるようになるなど、効率化が進み、事業価値を高めることも含めて同じインパクトを出すことができます。

その結果、クライアントからいただく報酬は変わらずに、効率化した支援を提供しています。

今後はさらにこれを推進し、3人で実施していたプロジェクトを2人で回せるようになるところから、2人で複数のプロジェクトを担当できるようにしていきます。AI活用を強化すれば、さらに効率的にプロジェクト運営ができるようになると考えています。

Joint Initiative型のコンサルティングでは、経営人材をクライアント企業に送り込み、経営者の右腕として事業の立ち上げや全社変革をハンズオンで実行・推進していきます。この数年で、出向も含めてクライアント企業に経営人材を送り込む取り組みを開始しています。

将来的にAIを活用したコンサルティングを取り入れていく構想がありますが、Joint Initiative型のコンサルティングにおいては、最終的に人による業務が残る部分もあると認識しています。その際に、経営者の右腕としてしっかりと経営人財が参画する部分は、今後も継続して残っていくと考えています。

そのため、ここは当社の事業ドメインとして重要です。また、新たなサービスとして暗黙知プラットフォームがありますが、AIやクラウドプロダクトを統合していくことを将来的に視野に入れています。

これが実現した際にも、業界や事業を深く理解していることが重要と考えます。したがって、経営人財をクライアント企業に送り込む取り組みは、今後さらに増やしていく方針です。

最後に「AI/クラウドプロダクト」から「暗黙知プラットフォーム」としていますが、先ほどもお話ししたとおり、データの価値が大きく変化してきている中で、特にまだデータ化されていないものの、人々の営みの中で非常に重要な競争力の源泉となる暗黙知を取り込んだAIプラットフォームの立ち上げを推進しています。

その一歩目として、現在は共同開発型で個別アプリを開発しています。現状、自動車関連企業や電機関連企業の調達子会社などと協力し、Vertical AIと呼ばれる業務や、クライアントに特化したソリューションの共同開発を進めています。

コンサルタントとAIエンジニアが一体となり、業務内容を深く理解した上で事業へと落とし込んでいくAI開発やプロダクト開発を行っているところです。

これは、Palantir Technologiesが言及するような「FDE(Forward Deployed Engineer)として顧客の現場に深く入り込んでいく」という考え方と我々も同様の取り組みを行っていると考えます。

将来的には、AI技術の進展によりアプリの開発速度が飛躍的に向上すると見込んでいます。それに伴い、現在進めているVertical AIの開発や、暗黙知を形式知化する取り組みを含め、自社内でプラットフォーム化を図る予定です。

このプラットフォームを利用することにより、ビジネスへのインパクトをしっかりと出し、従量課金モデルへ移行していくことを考えています。従量課金モデルですので、単にユーザー数やライセンス数に基づくものではなく、実際に提供した価値やビジネスインパクトに基づいて利用料を徴収していきます。

将来的には「内なる外」のコンサルティングは少し残ると思いますが、大幅に縮小する予定です。

一方で、Joint Initiative型の取り組みは、経営者の右腕として企業内部に深く関与し、専門知識やドメインナレッジを蓄積していくため、暗黙知プラットフォームのさらなる強化にもつながります。したがって、この部分は引き続き維持していく考えです。

最終的には人工(にんく)を超えて、Vertical AIや暗黙知プラットフォームの利用料によりビジネスを拡大させることが、当社が目指すビジネスモデルです。

したがって、SaaS、SIer、BPO、コンサルティングといった世界で約220兆円、日本では約17兆円のマーケットを、グロービングが順次完全代替していくことを目指すのが我々の狙っているビジネスとなります。

今回のプレゼンテーションは以上です。

ディスカッション

:ディスカッションに移ります。今回はテーマを3つに分けています。

1つ目のテーマは、企業がAIを実装する中で、AIに代替される領域とそうでない領域についてです。どの程度の業務がAIによって代替され、どの程度が残るのかについて、感覚がつかみにくい部分があるため、おうかがいしたいと思います。

ディスカッション

2つ目のテーマは、実際にAIがどのように活用されているのかについてです。先ほど少しお話がありましたが、もう少し詳しくおうかがいします。

ディスカッション

3つ目は、御社がどの方向を目指していくのかについてです。この3本柱で進めていきます。

まず、1つ目の「AIに代替される領域とそうでない領域」からお願いします。AIによってホワイトカラーの業務が大きく変わると言われていますが、実際に企業の現場ではどの業務から変化が始まるのか、今後どの範囲まで変わっていくのかについて教えてください。

御社は実際にさまざまな会社のAI実装に携わっていますので、現場感について可能な範囲でお話しいただきたいと思います。

田中:先ほどお話しした内容にも関連しますが、ホワイトカラーが代替されると言われている中で、特に非競争領域とされるバックオフィス系の業務については、「Claude Cowork」などのAIでほぼすべて対応できるのではないかという声もあります。

ただし、現時点ではAIがすべてを完全にこなせるわけではなく、まだ多くの間違いが発生しており、課題の多い領域です。そのため、AIだけですべてをやり切るには、現時点ではまだ至っていないのが実情です。

一方で、「かなりできるようになっていくだろうな」という兆しも見えてきています。これにより、SaaS、SIer、BPO、コンサルティングの市場価値が変化したことも含め、そのような見方がされているのが現状だと思います。

そのような意味で、AIによる置き換えが進む領域としては、まず非競争領域とされるバックオフィス業務が挙げられると思います。ただし、現時点では本格的な置き換えに至っておらず、まだ端緒の段階にとどまっています。

特に日本では、業務が複雑であることや、データの整備が十分に進んでいない企業が多く存在するため、取り組みが十分に進んでいないのが現状です。

SaaS、SIer、BPO、コンサルティング業界においても、非競争領域とされる分野や、競争領域の中でも定型化され汎用化が可能な業務を扱う部分については、将来的にはどんどんAIに置き換わっていくと考えています。

:AIの導入プロジェクトを展開していますが、企業側が一番驚くポイントや、逆に御社が驚くポイントはありますか?

田中:それほど大きな驚きはないと思います。2つ目のテーマの「日本企業におけるAI活用の現状と課題」に関連しますが、基本的には、日本の企業でも作業レベルでAIアシスタントを使用しているケースや、「Copilot」を使う取り組みは行われています。

ただし、全然効果を生んでいないケースや、PoC倒れのような状況もあり、「実際に使ってみたけど、全然使えないから使うのをやめました」といった事例がすでに発生しています。

類型2や類型3の領域に踏み込んでいる企業は、非常に大きなインパクトを出すことを目指して動いています。

我々がお手伝いしている類型2に関しては、グローバルに展開している製造業の企業で、非常に重要なプロセスをAIで代替することを含めて推進しています。その企業では、8,000人で行っていた業務を4,000人で対応できるまで効率化し、人員削減につなげることを考えています。

この削減プロセスを最終的に完了させるにはまだ数年は必要ですが、それほど大規模なプロジェクトを計画し、AI活用を推進している企業が増えてきているのが現状です。

暗黙知の形式知化とそれを用いた人財育成については、従前より某自動車メーカーでの事例として、みなさまにもご紹介しています。こちらについては、業務にしっかりと組み込み、人財育成を含めて進めることができています。クライアントから見ても「本当に実現できるのか」と驚かれる点ではないかと思います。

質疑応答:日本における代替のスピード感について

質問者:先ほど「現時点で日本ではAIによる代替が下の領域でさえ始まっていない」というお話がありました。時間軸で見た場合、どの程度のスピード感で加速していくと考えていますか?

田中:この領域については、かなり早いスピードで進むと考えています。技術的には、かなり早い段階で実現可能になるのではないかと思っています。

ただし、特に日本企業の場合、人員削減に踏み込むのは非常に難しい状況があることから、人を新たに採用しないことで徐々に減らしていくプロセスが進むのではないかと考えています。

一方で、SIerやコンサル、BPO、SaaSのプロダクトなどは、比較的早い段階で置き換えが進む可能性があるとも思っています。技術的に今後数年で可能になれば、それらの領域は徐々に縮小していくことになると思います。

海外の企業はすでにAIの実装を自分たちで行えるようになり、今ではバイブコーディングを含め、ノーコードやローコードツールを活用することで、プログラミングができなくてもさまざまなものを作成できるようになってきています。

その中で、日本ではSIerなどがまだ必要とされている部分があります。自動化ツールが開発されても、それを使いこなせる人材が日本企業には少ない上、業務知見や業界知見を落とし込まないと実際には使えるものにならないことがあります。

その結果、このような役割を担うSIerやコンサルの存在が引き続き求められている状況がまだあるのではないかと思います。一方で、海外ではこうした部分をクライアント企業が自ら対応できるケースが多く見られ、このような部分が一気に変わっていく可能性があると考えています。

もう1つは、BPO領域で効率化を一気に進めるプレイヤーが現れる可能性が高いと考えています。現在の人員で10倍程度の業務量に対応できる世界が訪れるかもしれません。そのような大きな変革が早いタイミングで起こる可能性もあると見ています。

質疑応答:大企業の非競争領域における代替と足元での取り組みについて

質問者:スライド6ページの図について、例えばX軸に競争領域と非競争領域を、Y軸に大企業と中堅・中小企業を示すかたちで分けたほうがよいのではないかと思いました。

中堅・中小企業の場合は自社で実装できる人材がいない一方で、大企業になると子会社があったり、社内である程度の知識を持った方がいたりします。

時間軸的にリプレイスが比較的早く起きそうなのは、大企業の非競争領域ではないかと考えました。この理解は正しいでしょうか? また、そのような案件を御社では現在どの程度取り扱っているのかを教えてください。

田中:おっしゃるとおり、大企業において置き換えが進むだろうと考えています。ただし、大企業の中には、これまでSIerやコンサルタントにすべてを任せてきた結果、知見が全然ない会社も多く見受けられます。そのような会社は、置き換えが進むまでに時間がかかる場合があると思います。

ただし、ご指摘のとおり、基本的には大企業の非競争領域が早く置き換えやすい領域になるかと思います。

その領域について、当社がお手伝いしている部分は基本的にはほとんどありません。当社は競争領域でのAI活用やDX支援を主戦場として取り組んでいます。そのため、非競争領域は基本的に関わりが少なく、今後もそこに注力する予定はないと考えています。

質疑応答:競争領域における優先順位と将来展望について

:御社にとって、大企業の競争領域のプライオリティが最も高いという理解でよいでしょうか?

田中:おっしゃるとおり、我々としては大企業における競争領域でAIを活用しながら、どれだけ価値を高められるかに取り組んできました。また、そのような領域であるからこそ、我々が関わる意味があると認識していただき、さまざまな企業と協力して取り組みを進めています。

:中小企業の競争領域は、当面は対象外ということでしょうか?

田中:そのとおりです。ただし、将来的には暗黙知プラットフォームと呼んでいる部分、例えばVertical AIとその下にあるプラットフォームやオントロジー的な部分を結びつけたかたちで、パッケージとして提供していくことを考えています。

このモデルがある程度完成すれば、人の介入が少なくても、事業の価値を高めていけるものになると考えています。その場合は中小企業を含め、我々の製品を活用していただくことで、競争領域において価値を高めていくことができると考えています。

質疑応答:大企業におけるAI実装時期と進展について

:競争領域の大企業がAIを実装し始めたのは何年前くらいからで、今後何年ほどその動きが活発に増えていくと考えていますか?

田中:類型2の領域で我々が支援を始めたのは、2年前ほどです。大きなビジネス上の課題があったところに対し、我々のAIを導入することで、数千人規模での人員の効率化が可能となり、品質としての確実性も向上する取り組みを開始しています。

グローバルも含めて進めているプロジェクトであり、最終形態に至るまでには、開発を含めてまだ数年の時間を要すると考えています。

類型3については、当社として昨年からお手伝いを開始しています。実際に暗黙知を形式知化し、AIに落とし込むという取り組みが、当社においてもノウハウとして蓄積されてきている状況です。

LLM(大規模言語モデル)の進化も含めて、非常に効率的に対応できるようになってきていると考えています。

また、プロセス全体や類型3についても、当社で培ってきた業務知見やドメイン知見を持つ人材がしっかりと関与してAIの開発を進めていかなければ、実際に使えるものとしては完成しないというのが現状です。

しかし、今後2年から3年の間に、現在共同開発しているものから本当に使えるパーツを抜き出し、暗黙知プラットフォームのようなすぐに開発が可能なツールを提供していきたいと考えています。

これらを提供できるようになることで、大規模開発をそこまで必要とせず、AIを即座に活用し、事業の価値を高めていけるようになるのではないかと考えています。そのあたりは、数年のうちに我々としてそのようなものを作り上げることも含めて、変えていけると考えています。

質疑応答:類型2のプロジェクトの進行と対象企業数について

:類型2について、プロジェクトが進行せず止まってしまうことはありますか?

田中:「大きな事業価値を出していくんだ」という点を経営トップも含めてしっかりと共有しながら進めていますので、基本的に止まることはない領域です。

:類型2の対象になる企業数は、かなり多いのでしょうか?

田中:我々がJoint Initiative型で経営人材を送り込む対象となる企業は、基本的にその対象になってくると思っています。日本国内では、主要33業種のトップ3の企業は経営人材を送り込むことが発生すると考えています。

つまり、約100社の企業については、プロセスを横断してAIの活用を進めることで、大きな効果を出すポテンシャルがあると見ています。

:業界によって差はありますか?

田中:さまざまな業界で何が効くのかはまったく異なってきます。特に、競争領域の中でも人手が多くかかる領域は「どうやってプロセス全体を巻き込んで、大きな工数削減の余地を出していくのか」が業界によって大きく異なります。

どの業界で進展が早いかや遅いかについてはさまざまな状況がありますが、自動車業界ではAI活用がそもそも戦略の中心に位置しています。また、金融業界でもガバナンス面を含めてプロセス全体を捉え、業務の効率化や削減に取り組もうとする動きがあります。

早い業界はこのような分野ですが、日本の他の製造業などでは、まだどこまでできるのかを検討している段階です。類型1のように、まずは試してみる段階にある企業も多いため、まだ広がる余地は多くあると考えています。

質疑応答:競争領域における具体的な取り組みについて

:「御社がAIの活用をお客さまのフロントで実装していく上で、どのような付加価値を出せるのでしょうか?

例えばSIerなら、データ連携やUI/UXなど、システム開発と紐づいたイメージが持ちやすいですが、御社がAIのフロント活用支援においてどういった支援を行うのか、もう少し具体的に教えてください」というご質問です。

田中:我々が行っているのは、プロセス全体の管理や、暗黙知を形式知化して人材育成に活用することです。

この両方について言えることですが、実際にビジネスの現場で活用可能な状態にするには、単純にデータをつなげるだけでは不十分です。「そのまま使えます」というだけでは類型1の単発作業レベルに落ちてしまうため、業務自体を大きく変革することも行っています。

具体的には、AIに適した業務へと改良することをセットで実施しています。このプロセスを経ないと、本当に効果的な活用には至らないため、その点に注力しています。

また、もともとお客さまが行っていたプロセスをしっかりと理解していなければ、変革も難しく、AIへの落とし込みもできません。これが、当社がフロント活用支援において価値を発揮している領域となります。

暗黙知を形式知化し、AIに適用させる取り組みも、当社のメソッドとして確立されつつあります。形式知化とは、言葉として明確化することを意味します。

そのため、お客さまに言葉として表現していただくようインタビューを行いながら、実際にAIへ落とし込む作業を進めています。このインタビュー項目なども含め、すべてしっかりとした型ができてきています。こうした取り組みを当社の強みとして展開しています。

質疑応答:AI活用のロードマップの期間と投資規模について

:「経営層やビジネスの現場にかなり食い込んで業務を行っている印象です。お客さまのデジタル化やAI活用のロードマップについては、どれぐらいの長さの期間や規模感でお話ししているのでしょうか? 数年レベルでしょうか?」というご質問です。

田中:ロードマップについては、数年レベルでお話ししています。類型2で1FTE(full-time equivalent:フルタイム当量)を削減する取り組みは、5年程度をかけて実施していく計画となっています。

また、類型3についても、さまざまなAIイニシアチブがある中で、「どれぐらいの期間やお金をかけつつ実施していくのか」については、やはり5年程度のスパンでお話ししています。そのような期間で取り組んでいる会社と一緒に活動しているところです。

投資の規模については、自動車会社の場合は数千億円といった非常に大きな規模感で考えられていることが多く、製造業の会社では数百億円程度で考えられていることがあります。事業の規模や広がりによりますが、規模感としてはこのようなイメージです。

質疑応答:暗黙知プラットフォームのビジネスモデルについて

:「現状、御社では顧客別にカスタム対応で進めていると思いますが、その中には外部に出せない内部情報も多く含まれていると思います。

暗黙知プラットフォームのデータ基盤になると思いますが、それをパッケージとして外出しして問題ないのでしょうか? またその際にハードルになることは何でしょうか? 暗黙知を形式知化できた後、本社の役割はどのように変わるのかについても教えてください」というご質問です。

田中:おっしゃるとおり、競争領域でAIの活用が進むことで、すべてがAI化されるような事態になれば、企業としての独自性が失われてしまう可能性があります。

例えば「トヨタ自動車が作る車もフォルクスワーゲンが作る車も、全部一緒です」といった状況になってしまいますが、そうした世界は訪れないだろうと考えていますし、そうならないよう努める必要があると思っています。

競争領域は、競争力の源泉として暗黙知を含めて確実に保持し続けるべき領域であり、各企業をその企業たらしめている要素であると考えます。我々はこの部分について落とし込んでいきますが、他企業への展開は基本的に行わない方針です。

暗黙知プラットフォームに関しては、クライアントの暗黙知ではなく、それを形式知化しAIに落とし込む際のノウハウや手法を取り込んでいきます。

さらに、事業や業界におけるドメインナレッジを有するとともに、ERPやSaaSなどさまざまな場所に散在するデータを高速に統合し、必要に応じてデータ変換を行う機能も備えています。これが、我々の考える暗黙知プラットフォームの全体像です。

なお、クライアントの個別の暗黙知については、プラットフォーム上のVertical AIに実装します。スライドに「A社専用」「B社専用」と示していますが、それぞれクライアント専用の領域に暗黙知を反映するかたちとなります。

暗黙知を形式知化した後については、当社は人員による収益ではなく、それを利用いただくことによる利用料を収益源とするビジネスモデルへの変化を考えています。

現在共同開発しているところから、利用料をいただくビジネスモデルへと転換していくことが、当社が目指す方向性です。これにより、人員の増加に依存しない成長をしっかりと描けるようになると考えています。

質疑応答:代替の具体的な取り組みについて

:「AIに適した業務に置き換えるとのことですが、もう少し具体的に教えてください」というご質問です。

田中:AIに適した業務というよりは、AI活用を業務に組み込んでいきます。例えば、いつもご紹介している事例では、某自動車メーカーで匠の知見を持ったAIを作り、それを活用しているケースがあります。

社内の経営会議や企画会議で報告する資料を作成する際、当社が「グロービングくん」と呼んでいるものを使用します。この「グロービングくん」を通して「何点以上の点数を取らないと、出してはいけない」というように、オペレーションにしっかりと組み込んでいくことを進めています。そのような点も含めて対応しているのが類型3です。

類型2については、9種類ほどのAIを取りまとめて活用するかたちで、業務の中で「どのタイミングで、どのAIをどのように使っていくのか」「マルチAIエージェントで、フロントの部分を全部覆ってしまうのか」といった要素も含め、業務を変革しつつ、実際に利用するツールを作り出す取り組みを進めています。

具体的にお伝えできない部分もあり、難しいところがありますが、イメージとしてはまさにこのようなところです。

質疑応答:コンサルティング業界の将来展望について

質問者:御社は「コンサルティングファームではない」とおっしゃっていますが、あえておうかがいすると、コンサルティング業界は4年後、5年後にどのように変わっていくのでしょうか?

直近では日本のコンサルティング業界は10パーセント程度成長していると思います。AI案件が関与することで、またはAIを社内で活用することで、業界全体の成長率が加速するのか、鈍化するのか、あるいは変わらないのかという点について教えてください。

田中:将来的には、以前からお伝えしているように、Joint Initiative型で経営人材が必要とされる領域、つまり人が行わなければならない領域は、企業経営の中で依然として残ります。最終判断を行う領域などにおいて、経営者の右腕を出していくことは引き続き残っていくと考えています。

一方で、単純な調査やパワーポイントの作成などの業務については、将来的には当社がVertical AIと呼んでいるような分野で対応していくことになるだろうと考えています。

ただし、特に日本においてはAI活用におけるコンサルティング需要は現在も依然として旺盛であり、この状態は数年間継続するのではないかと個人的には見ています。

とはいえ、将来的にはその領域もAIに代替されていく可能性が高く、その代替を推進していくことをグロービングとして取り組みたいと考えています。現在はその端緒として、実際に実現可能な状況が始まりつつあります。

質疑応答:AI案件における差別化について

質問者:AI案件における御社の差別化についてです。顧客がアクセンチュア、EYストラテジー・アンド・コンサルティング、御社のいずれかを選ぶ際に、どのような要素が選定基準になるのかを教えてください。従来型のコンサルティング案件と比較して、AI案件においては具体的に何が変わるのでしょうか?

田中:現在の大手コンサルティングファームでは、基本的に専門的に細分化された領域でのコンサルティングが武器となっています。このような企業では、実はプロセス全体を捉えることが非常に不得意な状況にあります。

現在、単発のAI導入という領域にはベンチャー企業なども関与していますが、その全体を統括し、プロセス全体を見て大きな効果を出すことができる企業は、実は存在しないのが現状です。

そのような領域で、当社は業界知見や業務知見をしっかりと持ち、それを横断的に活用しながらコンサルティングサービスを提供してきました。この横断的な視点を十分に理解している会社としての立ち位置が非常に強いため、大規模な案件も獲得できています。

そのような意味では、非常に特殊な立ち位置で事業を展開できていると思います。したがって、コンサルティング業界に加え、SIerやSaaSといった分野を総合的に捉えていける可能性もあると思います。今後、数年かけてその実現に取り組むことが当社が目指している戦略です。

質疑応答:競合が出てくる可能性について

:いわゆるサプライヤーでコンサルティングに関与したり、SaaSのようなソフトウェアでコンサルティングに関与したり、境目が少し曖昧になってきているように思います。このような状況で、中長期的に思いがけないところから競合が出てくる可能性はありますか?

田中:まさにご指摘のようなことを、我々自身が推進していくことだと考えています。特に先ほどお伝えした競争領域の中で活用されるものを作り出すという点では、基本的に当社は非常に有利な位置にあると考えています。

その立場を活用し、当社がSaaSやSIer、BPOを含め、コンサルティングを代替するような動きを自ら起こしていくことを目指しています。業界の垣根がなくなっていく中で、当社が優位に立つことが目指すべき世界だと考えています。

質疑応答:AI実装後の役割について

:実際に企業にAIが実装された後、御社やコンサルティング会社の役割はどのように変わっていくのでしょうか?

田中:スライド右下に記載しているとおり、利用料をどんどんいただくようなモデルに変わっていくと考えています。

現在、当社のコンサルティングでは「これだけのビジネス価値が出るのでいくらです」ということでコンサルフィーを頂戴しています。しかし、Vertical AIを活用することで、「これだけの価値がすぐに出せます」ということで利用料をいただくモデルに変わると考えています。

成功報酬に近い課金モデルも含めた利用料を得るかたちに移行するのが、当社が考えるビジネスモデルです。人員が少なくてもビジネスが拡大していくモデルは、そのようなところからできていくと考えています。

質疑応答:ビジネスモデルの変革における課題について

田中:「戦略に取り組む中で、ハードルになる点はどこになりますか?」というご質問です。

先ほど納さんからのお話にもあったように、SaaSやSIer、BPO、コンサルティングを含め、多様なプレイヤーが出てくる領域になってくると思います。ビジネス成果に応じた従量課金や利用料課金といったモデルにビジネスを移行させるには、クライアントに納得してもらうことも含め、多くの課題があると考えています。

しかし、現時点でも非常に大きな効果を出せている例があり、実際に活用する面においては、当社の製品やサービスが不可欠な領域となっていきます。この基盤をしっかりと確立することで、ビジネスモデルの変革も実現できるのではないかと考えています。

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