■ウイングアーク1st<4432>の今後の見通し
1. 2027年2月期の業績見通し
2027年2月期は、売上収益で前期比10.8%増の34,300百万円、営業利益で同17.9%増の10,600百万円、EBITDAで同14.9%増の12,100百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益で同14.2%増の7,420百万円と、2ケタの増収増益を見込んでいる。2027年2月期は2022年1月に発表した「中期経営方針」の5期目にあたる最終年であり、クラウドや生成AIを中心としたビジネスの拡大に加え、公共関連でも、自治体情報システムの標準化といった市場の拡大が進む見通しである。
帳票・文書管理ソリューションの売上収益は前期比11.4%増の22,562百万円を見込んでいる。2026年4月より「invoiceAgent」を「SVF」ブランドに統合し、それぞれの機能がシームレスに連携することを図る。さらに生成AIを組み合わせて安全なデジタル帳票基盤を提供し、企業内から企業間取引までの帳票の流通をサポートする。
一方、データエンパワーメントソリューションでは、生成AIの利用拡大により企業が保有するデータが加速度的に増加している現状を踏まえ、「Dr.Sum」はデータ分析基盤として企業のAI活用に貢献すべく、最適化されたデータベースを提供していく。また、「MotionBoard」は生成AIを搭載したダッシュボードソリューションであり、現場担当者自身がAI機能にアクセスして自社のデータを用いた分析やインサイトの獲得を容易に行うことに貢献していく。2027年2月期の上期前半まではポートフォリオ整理の影響が残るが、その後はオーガニックの成長が期待でき、生成AIによるデータ基盤強化と大企業市場の開拓を目指す。
さらに、自治体情報システムの標準化が進んでいることから、自治体のDX推進へも取り組む。情報システム標準化需要(1. 情報システム標準化対応、2. 大都市との連携強化と他自治体への横展開、3. 自治体DXを推進する新サービスの創出)を確実に取り込み、加えてシステム標準化が遅れている自治体に適切なソリューションを提供し、自治体のデータ活用を推進し、自治体職員の業務負荷の軽減や住民サービス向上に関する取り組みを進めていく。
2. 中長期の成長戦略
コロナ禍を機にDXが進み、企業は引き続き働き方改革や新しい環境での競争力強化を図るためDXを推進している。また、2022年1月にリモートワークやペーパーレスを後押しする改正電子帳簿保存法が施行され、企業間取引に関する文書の電子化も急激に進展した。同社は、このような市場の大きな変化をチャンスと捉え、2022年1月に5ヶ年の「中期経営方針」を発表した。「企業のDXを推し進めるデータプラットフォームの実現」を柱に据え、主にクラウドビジネスでの大きな成長を目指していた。ただ足元では、当初想定と異なりオンプレミスが強いことやサブスクリプションへのシフトが進んだことから、中期経営目標であるEBITDA120億円は達成できるものの、クラウド成長率40%(2022年2月期~2027年2月期平均)とリカーリング比率75%は未達になる見通しだ。
今後の具体的な取り組みは、(1) クラウドビジネスの拡大、(2) リカーリングビジネスの拡大、(3) グループ経営基盤の強化である。
(1) クラウドビジネスの拡大
当初想定と異なりサブスクリプションへのシフトが進んでいるが、クラウド成長率は確実に拡大している。企業のDXへの取り組みが広がるなか、迅速な導入が可能で初期コストが低く、ほかのシステムとの連携が容易なクラウドサービスの市場は拡大している。同社は「中期経営方針」でクラウドをベースとした「企業のDXを推し進めるデータプラットフォームの実現」を掲げており、クラウド収益と契約社数は確実に伸びている。なおサブスクリプションへのシフトが進むと、短期で見た場合、契約単価が下がるため、クラウド成長率にはマイナス要因となるものの、中長期的にはリカーリング比率のプラス要因となる。
(2) リカーリングビジネスの拡大
同社グループが推進している「リカーリングビジネス」の利点は、業績の安定化、業績の予見性の向上、顧客とのリレーションシップの維持などであるが、顧客の維持管理コストの増加といったデメリットもある。そのため、同社は「リカーリングビジネス」に特化した部署を組織しており、引き続き、離脱防止対策を行うとともに、顧客への追加商材の提案による売上向上を目指す。2026年2月期のリカーリング比率は65.6%ながら確実に拡大しており、また保守継続率は93.4%と高水準を維持している。
(3) グループ経営基盤の強化
同社グループは2013年9月の非上場化以来、経営基盤の強化に取り組み、グループの再編(子会社の統合、非コア事業の売却)、社内基幹システムの再構築、経営管理システムの高度化、各種顧客管理業務のシステム化などを推し進めてきた。今後も、これに対応すべく社内のDXを推し進め、グループ各社の経営状況をタイムリーに把握することで、適切な対策を早期に打てる体制の強化に取り組む。
(4) 「中期経営方針」4期目の実績と5期目の計画
「中期経営方針」4期目の2026年2月期はクラウド成長率が28.3%、リカーリング比率が65.6%、EBITDAが105.2億円となった。中期経営計画の最終年度となる5期目(2027年2月期)は、目標であるクラウド成長率40%、リカーリング比率75%、EBITDA120億円に対し、クラウド成長率26.8%、リカーリング比率68.3%と未達見込みであるものの、EBITDAは121億円と達成を予想している。2027年2月期に向けては、クラウドや生成AIを中心としたビジネスの拡大に加え、公共関連において自治体情報システムの標準化といった市場の拡大が進むことから、地方自治体向けソリューションの強化を図る。生成AIの利用拡大に伴い、膨大化するデータの最適化及びデータ分析面での動向が期待される。また、「invoiceAgent」を「SVF」ブランドに統合・強化するため、その効果にも注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 井上 康)
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