日本精機<7287>の時価総額は、2030年3月期の営業利益280億円という「成長加速ステージ」の目標を織り込めば、PER15倍で2,500億円規模への到達が視野に入る。時価総額は約1,573億円(2026年6月3日時点、株価2,691円)であり、中長期の目標に対してはいまだ約6割の上昇余地を残している。PBRも0.67倍と1倍割れだ。また、足もと配当利回りは約3.5%と、インカムゲインの魅力も引き続き高い水準にある。
なお、同社は車載計器やHUD(ヘッドアップディスプレイ)を主力とする自動車部品メーカーであり、二輪車・四輪車用計器に加え、樹脂コンパウンドや民生機器部品など多角的に事業を展開している。特にHUDは世界首位となる約30%のシェアを獲得しており、国内外の自動車メーカーにおける先進運転支援システムの普及とともに継続的に需要が拡大している。売上の約8割を占める車載部品事業は同社の収益基盤であり、四輪車・二輪車用計器に加えて成長余地の大きいHUDの拡販が進められている。
同社の強みは、第一に二輪車・四輪車の幅広い計器事業で世界的なシェアを獲得していることである。特に二輪用計器は世界トップシェアの約30%を誇り、四輪用メーターも世界シェア4位の約10%を獲得している。二輪車向け計器は近年はASEAN、インド、ブラジルを中心としたグローバルサウスでの販売が極めて好調に推移している。第二にHUD事業の技術優位性であり、表示性能や安全性、耐久性を重視する自動車メーカーの要求に応えながら、開発から販売までの一貫した体制を黎明期から培ってきた。HUDは今後のEVシフトなどの潮流の中でも需要が高まる技術であり、今後の高付加価値製品としての成長が期待される。
さらに、2026年10月に予定している東洋電装の完全子会社化により、従来の「表示(HUD・計器)」に「操作(スイッチ類)」の技術が融合し、次世代HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)領域における唯一無二のソリューション提供が可能となることで、さらなる競争優位性の確立が期待される。
2026年3月期の通期連結業績は、売上収益327,894百万円(前期比3.6%増)、営業利益11,624百万円(同21.3%増)、当期純利益は8,220百万円(同34.3%増) となり、期初計画を上回る増収増益で着地した。四輪車用計器においては、中国市場における日本・欧州車の販売不振や、北米でのHUDの販売減少が響き減収となったが 、ASEAN、インド、ブラジルを中心としたグローバルサウスでの二輪車用計器の販売が好調に推移し、全体の業績を牽引した。利益面では、二輪車用計器の増収効果に加え、徹底した原価低減活動や、前年度に計上された為替差損が利益に転じたことも寄与し、大幅な増益を達成した。
「中期経営計画2026」の最終年度となる2027年3月期の目標数値については。売上収益は、当初目標の330,000百万円から、中国市場における日系・欧州系メーカーの苦戦等を考慮し320,000百万円(前期比2.4%減)へと引き下げた。営業利益についても、当初目標は16,500百万円としていたが、足元のメモリー価格の高騰や、地政学リスクの高まりに伴う原油価格・物流コストの上昇影響を慎重に織り込み、14,000百万円(前期比20.4%増)へと下方修正している。ただ、2026年3月期の実績(11,624百万円)からは大幅な増益を計画している。重点施策は(1)四輪・HUDの成長性と収益性を高める事業戦略の実行、(2)新興市場における二輪車用計器の販売加速、(3)イノベーティブな製品・サービス・ビジネスの創出である。HUDについては2021年3月期269億円から2026年3月期には570億円へと拡大しており、今後も自動車の安全機能強化を追い風にもう一段高いレベルの成長を目指すことを目標として掲げている。また、アセアン・インド・ブラジルといったグローバルサウスエリアを中心に二輪車市場は引き続き大幅な需要増が見込れており、同社は各地域の多様なニーズに対応した製品開発を加速し、グローバルに最適化された供給体制を構築することで、市場における競争優位性の確立を目指している。
また、2026年10月に完全子会社化を予定している東洋電装との技術融合が最大の注目点となる。今後は、同社が強みを持つ「表示(計器・HUD)」技術と、東洋電装が有するスイッチ類などの「操作(入力)」技術を統合した、次世代HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)ソリューションの開発を加速させる。
なお同社は、、次の中期経営計画を成長加速ステージと設定しており、2030年3月期に売上収益で400,000百万円、営業利益で28,000百万円、ROE8.0%を目指すことを公表している。
株主還元については、2025年3月期から2027年3月期までの3年間で総還元性向80%を掲げており、2026年3月期の年間配当は、前期から30円増配となる80円(中間40円・期末40円)を達成した。さらに2027年3月期は、業績予想の下方修正はあるものの増配姿勢を維持し、1株当たり90円(前期比10円増配)と3期連続の増配を見込んでいる。こうした還元施策と合わせ、現状のPBRは約0.67倍、利回りは約3.5%と、株式指標を見ても魅力的な水準にある。
総じて、短期的には中国市場での日系・欧州系メーカーの苦戦や北米HUDの販売減少、地政学リスクに伴うコスト増といった不透明感はあるものの、中期的には収益の柱である二輪車用計器の好調維持に加え、HUD・欧州事業の収益改善に向けた構造改革が着実に進展している。資本効率を意識した株主還元も加わり、持続的な企業価値向上に向けた取り組みが鮮明である。2027年3月期の増益計画の達成、および戦略的買収による統合効果の進捗に引き続き注目していきたい。
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