石光商事<2750>は、1906年創業の歴史と実績を有する食品・飲料の卸売事業を展開する専門商社である。同社は世界の食の幸せに貢献することをミッションに掲げ、主力のコーヒー・茶類事業をはじめ、加工食品や水産品を扱う食品事業、生鮮野菜や農産加工品を供給する農産事業、並びに欧米やアジア圏を中心にグローバルな需要を取り込む海外事業をバランス良く展開している。特にコーヒー分野においては、コーヒー生豆の輸入から自社グループ工場での焙煎加工、工業用・業務用・家庭用製品の販売までを一貫して手掛ける強固なバリューチェーンを確立しており、業界内でも確固たるポジションを築いている。近年は高付加価値商品や社会課題解決型商品の展開に注力しており、販売価格の見直しや新規開拓の成果が着実に実を結んでいる。こうした事業活動が実を結び、売上高および営業利益が過去最高を更新するなど、業績には非常に力強い拡大傾向がみられる。
2026年3月期における売上高構成比は、コーヒー・茶類事業54.9%(コーヒー飲料原料24.9%・コーヒー飲料製品30%)、食品事業28.6%(加工食品11.8%・水産9.3%・調理冷食7.5%)、農産事業9.9%、海外事業6.6%となっている。
同社の強みは、第一に、専門性の高い人財による品質保証体制と高い技術力を持ち、コーヒー生豆の原料調達から焙煎加工、完成品の販売までを自社グループ内で完結できる一貫したビジネスモデルを構築している点にある。グループ会社の利用や自社焙煎工場の活用により、顧客の多様なニーズに応じた付加価値の高いコーヒー製品を提供することが可能となっており、市場での差別化を実現している。J.C.Q.A.(全日本コーヒー検定委員会)認定のコーヒー鑑定士は、認定者数全55名中10名が同社グループ社員となっている。第二に、海外グループ会社を通じた世界規模での調達力およびグローバルな販売チャネルを保有している点にある。中国現地法人における生豆販売の拡大や、英国・タイ・オーストラリアといった海外市場での販売網開拓を着実に進めており、国内需要にとどまらない成長基盤を整えている。現在、取引のある国の数は40か国以上となっている。そのほか、時代の需要変化に対応した商品開発力と低利益商品の見直しによる収益性の向上力も特徴として挙げられる。既存取引の効率化に加え、外食向けや量販店向け新規商品の投入、低利益率取引の修正を機動的に行うことで、売上総利益率の着実な改善を継続している。
2026年3月期の通期連結業績は、売上高76,527百万円(前年同期比17.8%増)、営業利益2,707百万円(同73.8%増)となり、大幅な増収増益で着地した。グループ会社において工業用製品及び家庭用製品の新規開拓が進むなか、コーヒー相場の高騰に伴う原材料価格の上昇を踏まえた適正価格への見直しも寄与した。海外事業ではオセアニア地域での新規開拓が進んだほか、タイ向け輸出では、現地量販店向け販売が好調に推移した。
2027年3月期の通期見通しについては、売上高78,072百万円(前期比2.0%増)、営業利益2,434百万円(同10.1%減)を見込んでいる。中東情勢の長期化に伴う資材価格の高止まりや物流費の上昇、さらに新工場建設に係る先行投資費用が発生することが利益の重しとなる想定。ただ、これは将来の成長に向けた戦略的な投資や一時のコスト高を織り込んだものであり、中長期的には高利益率商品の拡大や供給体制の効率化により収益性が再拡大する見通しである。また、親会社株主に帰属する当期純利益については、子会社が所有する土地の売却に伴う特別利益の計上を予定しているため、1,733百万円(同36.7%増)と大幅な増益を見込んでいる。市場環境面においても、外食産業でのインバウンド需要の回復や客単価の上昇、量販店における好調な需要が同社にとって有利に働いている。
同社は2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「SHINE2027」を推進していたが、5月に見直しを発表した。最終年度の目標として売上高828.3億円(従来計画740億円)・営業利益30億円(同22.5億円)・当期純利益17.3億円(同12.7億円)を掲げている。また、ROEは10%以上(同8~9%)、ROICは6%以上(同4~5%)へと引き上げた。この目標達成を支える成長ドライバーとして、収益性の高い環境配慮型・社会課題解決型商品の販売比率向上や、海外売上高比率の25%へ拡大の目標に積極的に取り組んでいる。国内市場における展開としては、たとえばコーヒー・茶類事業の既存顧客に対し、輸入量国内屈指のゴボウや蓮根などの農産品や調理加工品、水産品など、食品事業の製品をクロスセリングするなど深耕を進める。海外展開については中国市場の深耕や欧州市場の開拓に注力しボリュームを求めていく構えだ。さらに重要な成長投資として、26年12月末完成予定として兵庫県小野市に新工場を建設している。この小野新工場では、抽出後のコーヒー粉を燃料として再利用する持続可能な「グリーン焙煎」などの先進設備を導入し、脱炭素への貢献と焙煎能力の増強による生産性の向上を同時に実現する計画である。こうした戦略的な施策が着実に進展していることから、同社の長期的な成長見通しは極めて明るいと言える。
株主還元に関しては、株主への利益還元機会をより充実させるため、従来の年1回から中間配当と期末配当の年2回へと変更し、還元体制を一層強化している。配当方針についても連結配当性向の目安を従来の25%から30%以上に引き上げており、株主還元姿勢を明確に打ち出している。積極的な成長投資を推進しながらも、増配を通じた安定的な株主還元を継続していく方針である。なお、同社の直近のPBRは0.7倍台と1倍を割れ込んでいるものの、中期経営計画においてPBR1.0倍以上を目標に掲げており、資本効率の改善と企業価値向上に向けた積極的な取り組みが期待される。
総じて、石光商事は強固な事業基盤と高い商品開発力を武器に、環境変化に柔軟に対応しながら成長を続けている魅力的な企業である。持続可能なグリーン焙煎を導入する新工場への成長投資や海外展開の推進、さらには配当性向の引き上げなど株主還元姿勢の強化も進んでおり、今後のさらなる業績拡大と企業価値の向上に大きく期待したい。
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