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破局は時間の問題?急接近するロシアとサウジ「蜜月」の賞味期限=矢口新

サウジアラビア国王が史上初めてロシアを訪問するなど、両国の関係が急接近している。これが中東情勢に与える影響や、裏側にある米国の思惑について考えてみよう。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

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プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

「原油価格維持」が取り持つ仲。危うい協力関係はいつまで続く?

ロシアとサウジ、30億ドル規模の共同投資で合意

ロシアのプーチン大統領は10月5日、サウジアラビアのサルマン国王をクレムリンに迎えて会合を持った。両国はエネルギー・経済協力で合意し、世界の原油価格の動向に極めて重要であるシリア内戦の終結を決めることができる関係強化を図った。中東最大の親米国、サウジ国王がロシアを訪問するのは初めてのこと。

ロシアがサウジアラビアに11億ドルを投資して石油化学工場を建設することを含め、両国は30億ドル規模の共同投資に署名する。両国は、この関係は米国との関係を脅かすものではないと強調した。

一方、米国の今週の原油輸出は、日量198万バレルと過去最大となった。OPEC加盟国のベネズエラやナイジェリアの生産量を上回る。米原油の生産拡大により、WTI先物と北海ブレント先物の価格差は6.25ドルに拡大した。2017年1~7月の北米石油・天然ガス採掘業者の破綻は14社と、原油価格が30ドル割れとなった2016年同時期の55社から急減した。

WTI原油価格が50ドルを超えてくると、中小原油採掘業者による先物売りが目立つようになるが、債券の発行も急増する。2017年1月1日~10月4日までのエネルギー関連ジャンク債の発行は約37億ドルと、2014年以来の規模となった。
※参考:Oil at $50 Has Energy Companies Selling Debt Like It’s 2014 – Bloomberg(2017年10月6日配信)

このことが示唆しているのは、原油価格50ドル超では米国原油の生産拡大が見込まれ、原油価格の下げ圧力となることだ。

中東情勢への影響大

中東情勢は複雑だ。エジプトの軍事政権は、米国にとって、イスラエルに次ぐ軍事援助先であり、いわば最大の同盟国の1つとも言えるのだが、エジプトはロシア軍にエジプト西部の空軍基地を利用させていたことで問題となった。

世界のイスラム教社会の約90%はスンニ派で、数ではスンニ派がシーア派を大幅に上回っている。サウジアラビアはスンニ派の盟主格で、イランとイラクの政権はシーア派。そして、シリア政権はシーア派の分派であるアラウィ派で、サウジアラビアとは相容れない。

そのシリア政権の後ろ盾であるロシアとサウジアラビアの急接近は、中東情勢に影響を与えずにはおかない。

Next: ロシアとサウジの蜜月は「原油価格45~50ドル」の間だけ?

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