バイデン政権が発足した。就任早々にトランプ政権の負の遺産を清算しつつあるように見えるが、米国が「予想可能な国」に戻るとは限らないだろう。その根拠となる、バイデン政権の背後にいる勢力について解説したい。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2021年2月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
バイデン政権でも「予想可能な国」には戻らない?
2021年1月20日、ワシントンの厳戒態勢のなかバイデン政権は成立した。
トランプ政権の悪夢のような4年間が終わり、やっと正常なアメリカに戻るのではないかという期待感が特に日本では強い。
国際条約や同盟国をないがしろにする強硬な一国主義、あからさまに白人至上主義を表明する団体の容認、全米に拡大した「BLM」の抗議運動、地球温暖化の無視、新型コロナウイルスの軽視など、どう見てもまともな政権とは思われない蛮行を繰り返していたのがトランプ政権だった。
トランプ政権下では経済はよかったものの、そんなプラスの効果は吹き飛んでしまうくらい、アメリカという国家が歴史的に抱える闇が噴出し、社会の分断が進んだ。
バイデン政権は、トランプが社会に残した傷を癒し、多様な価値観や意見を尊重する民主主義の本来の価値に戻ることが期待されている。バイデン政権は、発足当初から矢継ぎ早に大統領令を出して、トランプ政権の負の遺産を清算しつつあるように見える。トランプが脱退を表明した世界保健機構(WHO)、パリ協定、イラン核合意、TPPへの復帰、クリーンなグリーンエネルギーの推進、そしてなによりも日本やヨーロッパを始めとした同盟国との国際協調体制の再構築などだ。
これを見ると、アメリカはオバマ政権当時のような良識で行動する予想可能な国に戻り、多少時間がかかるかもしれないが、米国内の分断も、バイデンの人種融和策によって次第に修復されるのではないかと期待が高まっている。特に、アメリカという国の好感度が際立って高い日本ではそうだ。
しかし、アメリカの現状を見ると、そのような期待を維持することが困難であることが見えてくる。
活動を続けるトランプと支持者たち
トランプは「前大統領のオフィス」をフロリダ州の邸宅に立ち上げ、トランプ政権のときの政策の実現に向けて動き出している。大統領選挙で7,500万票を獲得したトランプの勢いは強い。
いまだに熱烈なトランプ支持者が全米各地にいる。トランプを、アメリカ第2革命のリーダーとして崇拝する武装した極右や民兵組織も多い。
またトランプの「前大統領のオフィス」には、莫大な寄付金が集まっている。来年の中間選挙には、トランプ政権の元高官が複数立候補する動きがあるが、「前大統領のオフィス」はこれを全力で支援するとしている。