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中国にとってコロナは過去。終息後に定着した5つの新トレンドが日本を飲み込む=牧野武文

コロナ終息後に定着したトレンドその1:ライブコマース

ライブコマースについては、「vol.040:進化が止まらないライブコマース。自動車、マンション、ザリガニまでも」を始めとして、このメルマガで何度もお伝えしてきました。コロナ禍で起きた最も大きな変化です。しかも、コロナ禍を機に完全に定着をしました。

ライブコマースで人気になっているのは、アリババ淘宝網の「タオバオライブ」、ショートムービープラットフォームである中国版TikTok「抖音(ドウイン)」「快手(クワイショウ)」の3つです。

タオバオライブは、ECであるタオバオで販売されている商品をライブ配信で紹介するという形式なので、ライブコマースのみの流通総額は正確にはわかりません。しかし、抖音の2020年の流通総額は運営元のバイトダンスの発表によると5,000億元(約8.4兆円)超、快手は財務報告書によると3,812億元(約6.4兆円)という急激な成長をしています。これは日本のアマゾンの流通総額の3倍から4倍に相当します。

中国のECサービスの上位は、アリババ(タオバオ+天猫)、京東(ジンドン)、ピンドードーが流通総額上位3サービスですが、抖音と快手は、流通総額4位から6位ぐらいに当たります。これだけの巨大ECがわずか数年で出現してしまったのです。

詳細については、過去のメルマガで何度もご紹介をしているので、ポイントだけ振り返ります。

タオバオライブは、古いタイプのライブコマースで、タオバオで販売されている商品を、タオバオ達人と呼ばれる配信主が紹介をするという形式です。ブログなどでよく使われるアフィリエイト広告に近い感覚のものです。タオバオ達人の売上上位にくるウェイヤーやリー・ジャーチ(オースティン)も、元々は販売側の人たちでした。ウェイヤーは、自分でも若い女性向けのアパレルセレクトショップを経営して成功していました。オースティンは、ロレアル中国の店頭販売員で口紅の担当でした。つまり、商品を知りつくしたプロが優れた商品を紹介するというのがタオバオライブの基本的な形式です。

抖音や快手でも、もちろんタオバオ達人的な配信主もいますが、売上が上がっているのは網紅(ワンホン)です。網紅は、販売を目的とするというよりも、以前から視聴者のためになるショートムービーを公開して、人気となっていた人のことです。例えば、呉一(ウーイー)というお酒のライブコマースで成功している網紅は、もともとは「品質の高いお酒の見分け方」「お酒の楽しみ方」などのムービーを公開して人気となっていた人です。その人が、納得のいくお酒を仕入れてライブコマースで販売するようになったところ、爆発的な人気となりました。

この辺りの仕組みは、「vol.068:私域流量を集め、直販ライブコマースで成功する。TikTok、快手の新しいECスタイル」でも解説していますが、要は配信主が消費者側の人であり、消費者目線で商品をセレクトしているという点が新しいのです。

このライブコマースが日本でも普及するかは微妙なところです。中国では、店頭で買い物をするときも、商品内容や価格について、消費者と店主がいろいろやり取りをするのが一般的です。ライブコマースは、ECでありながらリアルタイムの双方向で、この店頭での買い物の感覚がうまく再現されています。中国人の多くにとっては、店頭の買い物の電子化であり、馴染みやすかったと思います。

一方、日本もそうですが、どちらかというと商品は自分で見たい、店員は必要な時になってから呼ぶというスタイルが中国以外では一般的です。日本人にとっては、ライブコマースは濃すぎてしつこく感じるかもしれません。テレビショッピングのサブチャンネルとして、あるいはブランド力のある企業の直販ライブコマースという形で広がっていく可能性はあるかもしれません。

TikTokを運営するバイトダンスは、2020年12月から米国でウォルマートと提携してライブコマースを始めています。米国で人気のあるインフルエンサーを起用して配信を試みていますが、ライブコマースという習慣がないために苦戦をしているようです。また、英国でもライブコマースの準備を始めていますが、法的な規制などがあり遅れています。

一方で、インドネシアでは2021年4月からライブコマースを始めています。まだどの程度の反響であるのかはわかりませんが、中国文化の影響が濃い東南アジアでは普及をしていくのかもしれません。このインドネシアのライブコマースはTikTokシンガポールが中心になって運営をしているので、成功すれば一気に東南アジア全体に広がっていくものと見られています。

Next: コロナ克服後の日本はどうなる?先行する中国から学べること

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