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中国にとってコロナは過去。終息後に定着した5つの新トレンドが日本を飲み込む=牧野武文

コロナ終息後に定着したトレンドその2:社区団購(シャーチートワンゴウ)

2つ目の社区団購(シャーチートワンゴウ)も、中国で熱い話題になっているビジネスのひとつです。アリババ、テンセント、美団(メイトワン)といったお馴染みのテック企業が資本を投下して、競争が過熱をしています。

本来は、このメルマガのテーマとしてご紹介すべきほど大きなトピックなのですが、日本でこの社区団購と同様のビジネスが興るとは少し考えづらく、ご紹介するのを躊躇してきました。ただ、中国のテック業界では大きなトピックになっているということは記憶の隅に留めておいてください。

この社区団購とは、簡単に言えば、個人商店の系列化、プラットフォーム化です。住宅街などには、まだまだ個人経営の生鮮食料品店、雑貨店があります。このような店は、店主が独自のルートで商品を仕入れて販売をしています。しかし、インターネットが普及して、消費者が直接卸問屋の直販ECを利用できるようになっている現在、このような個人商店は価格面での競争力を失っています。日本と同じように、習慣を変えたくない近所のお年寄りが利用するイメージです。

しかし、個人商店の優れている点は、店主と消費者が顔見知りであるということです。体の調子が悪くて買い物に行けないお年寄りには配達もしますし、その店では扱わない商品も頼まれればどこかで仕入れて、利益を載せずに売るというサービスもします。ビジネスとしては将来性はまったくなくても、コミュニティ拠点としてはその役割が日増しに重要になっています。

そこで、このような個人商店を系列化し、プラットフォームが一括仕入れをします。仕入れと物流を効率化させることで、価格競争力を出し、個人商店を存続させようというビジネスです。

現在は、この系列化の競争が進んでいる段階で、どのプラットフォームがシェアを取るかはまだまだわかりません。テック企業が積極投資をする理由は、個人商店1軒の売上は小さくても、それをまとめて系列化をすれば大きなビジネスになるということ。個人店主が配達など融通のきくサービスを行うため、高齢者だけでなく、若い世代にも広がる可能性があること。さらに、地域密着の店舗であるため、家事サービスや介護サービス、宅配便など多角的なサービスが提供できるようになることなどがあります。

ただ、すでにおわかりの通り、この社区団購がそのままの形で日本に入ってくることは考えづらいです。日本ではコンビニがあるからです。ただ、コンビニは商品販売に特化をしているので、今後、コンビニがコミュニティの拠点として機能するためのヒントは、社区団購から学べるかもしれません。すでに、スマホ注文、店舗受け取り、配達などをうまく組み合わせている例が出てきています。

コロナ終息後に定着したトレンドその3:リモートワークとリモート教育

3つ目がリモートワーク、リモート教育の進展です。2020年初めにコロナ禍によるロックダウンが起きると、リモートワークツールが急拡大をしました。アリババのリモートワークツール「釘釘(ディンディン)」か、テンセントのWeChatエンタープライズ版+テンセントミーティングのいずれかを利用している人が圧倒的です。

といっても、このようなツールを使うのは、やはりテック企業や大企業が中心になります。「第47次中国インターネット発展状況統計報告」(中国インターネット情報センターCNNIC)によると、2020年12月時点でのリモートワークツール利用者は、3.46億人でネット民の34.9%になっています。

面白いのは、2020年6月の段階では1.47億人だったことです。6月はロックダウンがほぼ終わり経済活動が再開した時期です。つまり、コロナ禍で会社に行けないから仕方なくリモートツールを使った人は1.47億人(以前から使っていた人もいますが)で、経済活動が再開した2020年下半期に使い始めた人が1.99億人もいて、年末に3.46億人という数字になっていることです。つまり、仕方なくではなく、出社もできる状況なのにリモートワークを始めた人がかなりの人数に登りました。

同様にWeChatエンタープライズ版も2019年末に使っていたのは6000万人でしたが、2020年5月には2.5億人に増え、さらにそれ以降12月までに4.0億人に増えました。

つまり、リモートワークを導入する企業では、コロナ禍による緊急避難的な使い方だけではなく、終息をしてからも使い続け、使用を拡大していることがわかります。

一方で、対照的なのがオンライン教育ツールの利用者です。コロナ前の2019年6月の段階では、利用者は2.3億人でした。これはネット民の27.2%にもなり、そもそも中国はオンライン教育が盛んな国だったのです。

ひとつは国土が広く、特に地方では質の高い教育が受けづらいためにオンライン教育を利用する人が以前からいましたし、中国政府も積極的に支援をして、貧困地区での機器の購入補助、中央電子台教育チャンネルのコンテンツの無料開放などを行ってきました。学校の補習だけでなく、社会人の資格試験の勉強にもオンライン教育が活用され、貧困地区の生まれであるのに、独学で弁護士や会計士の資格を取得して活躍している人というのもそう珍しくはなくなっていました。

これがコロナ禍を迎えた2020年3月には4.2億人と急増します。休校になった学校が多かったため、オンライン授業が行われたからです。しかし、終息をした2020年12月には3.4億人と減少しています。

やはり高校生ぐらいまでは、対面での授業が重要だということから、オンライン授業をやめる、あるいは補習程度にとどめる学校が多いからです。

社会人はリモートと出社の組み合わせが定着し、教育では再び対面に戻っていくというのは面白い現象です。

ただし、減ったといっても、コロナ前の2.3億人と比べると、3.4億人に増加をしているわけで、ここを狙って民間のオンライン教育ビジネスが活気づいています。「コロナ禍の2020年モバイルインターネット報告」(Talking Data)によると、2011年に教育関係の企業は78万社であったものが、2020年には412万社に増加しました。また、オンライン教育サービスを提供する企業は、15万社であったものが70万社に増えています。

この多くが、学校の補修や資格試験勉強などのコンテンツを提供しています。また、授業形式ではなく、個人あるいは少人数による形式のものに人気が集まっています。

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