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“恒大集団破産”は悲劇の序章。富裕層を粛清する習近平「共同富裕論」が中国住宅バブル大崩壊をまねく当然の理由=勝又壽良

不動産業者の倒産続出で高まる銀行の信用不安リスク

「共同富裕論」とは、住宅価格高騰を止めることで、社会不平等感を是正しなければならないのだ。それが、投機目的で複数の住宅を保有する層へは大きな打撃になる。

また、住宅価格値上りを前提にした不動産開発企業にとって、債務返済が不可能な局面を強いるであろう。「共同富裕論」は、言葉は美しく桃源境を示唆するが、そこへ至るには「死屍累累」という悲劇が生まれるに違いない。

日本も、そういう茨の道を経てきたのである。中国指数研究院の調査によると、不動産会社の債務返済ピークは次のようになっている。

今年9月:約1.42兆円
来年3月:約1.77兆円
来年4月:約16.01兆円
(資料:『大紀元』9月9日付)

中国メディア『時代週報』によると、今年度に入ってから中国不動産会社274社が倒産している。毎日、平均1社が倒産している計算という。

こうして、容易ならざる事態へ突入しているが、前記のデータによれば、9月末の要返済額は約1.42兆円である。この債務状況で、すでにこれだけの倒産会社を出している。

来年4月の債務返済額は、約16.01兆円に達する。この9月末の11.3倍にもなるのだ。これでは、1日平均1社の倒産で済むはずがない。不動産業界は、総破産状況になろう。問題はその場合、銀行が累増する不良債権として抱えるので「信用不安」リスクも高まる。事態が、そこまで進展したならば、想像するのも恐ろしいほどの局面になろう。

調査会社ウインドが追跡した中国30都市のデータによると、デベロッパーによる住宅販売件数は8月、前年同月比で21%減となった。相当の落込みである。住宅販売件数が減る状況では当然、販売価格も低下しているはず。それは同時に、既存の住宅価格を引下げる作用をする。

不動産は、中国の家計にとって最大の資産である。中国政府は、外貨準備高の減少を恐れて、資本取引の自由化を認めずにきた。だから、資産形成手段は住宅投資が主体だ。その住宅価格が暴落する事態になれば、政府への信頼はガタ減りとなろう。

永久政権を狙う習近平氏にとって、とんだ災難になる。住宅市場崩壊による資産への影響は、既に減速している個人消費へ、さらに深刻な影響を及ぼす。習氏にとって、まさに巌頭に立たされる状況であろう。

中国第3位の商業銀行である中国銀行では、6月の不動産の不良債権比率が4.91%(前年同月は0.41%)になった。今のところは管理可能に見えるものの、不動産価格の下落や雇用市場の低迷で住宅ローンの返済が滞り始めれば、一段と大きな問題になる。

中国本土における中国銀行の融資では、不動産、建設、住宅ローンが41%を占める。住宅ブームを背景に家計の借り入れは大幅に増加した。6月時点でGDPの62%を占めたが、5年前は44%だった。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月8日付)が伝えた。

中国銀行の不良債権比率は、6月で5%未満である。だが、これ以上の増加になると銀行経営に響く段階に来ている。中国大手の商業銀行でも、経営的に限界状況にあるのだ。中国銀行の融資では、不動産、建設、住宅ローンが41%を占めている。経営的に、不動産バブルと強く関連していることを浮き彫りにしている。

中国銀行ですらこの状況である。他の弱小金融機関についは推して知るべし、だ。こういう状況で、習氏は「共同富裕論」を掲げている。悪役として、高騰する住宅価格問題が上がっている。そこで、不動産開発企業への融資が絞られているのだ。

<中国の不動産開発融資残高(前年比)>

2006年 3月31日 37.8%(ピーク)
2008年12月31日 10.3%(ボトム)

2010年 3月31日 31.15%(ピーク)
2012年 3月31日 6.30%(ボトム)

2015年 3月31日 24.08%(ピーク)
2017年 3月31日 7.41%(ボトム)

2018年 9月31日 24.5%(ピーク)
2021年 6月30日 2.8%(ボトム)
※出所:ウインド 『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2021年9月8日付)

上記データで「ボトム」を見ると、今年の6月末が前年比2.8%増と厳しく抑え込まれていることが分かる。ここまで融資残高が抑え込まれると、大抵の企業は倒産危機を迎えるほかないだろう。

日本の不動産バブル崩壊過程では、日銀の厳しい不動産融資規制をヤリ玉に上げる向きもいた。だが、中国も同じことを始めているのだ。「共同富裕論」を実現するには、住宅高騰を放置できないという政治的要因が大きくなっているのだろう。

それは、過去の「ピーク」がそれを証明している。習氏が政権を握った後も、「ピーク」は前年比24%台まで増加させて目一杯、バブルの恩恵に与ったのである。今になって大慌てで引締める。賢明な政策マンのやることではない。愚策そのものだ。

Next: 覇権主義を捨てない限り「共同富裕論」の実現は不可能

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