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“恒大集団破産”は悲劇の序章。富裕層を粛清する習近平「共同富裕論」が中国住宅バブル大崩壊をまねく当然の理由=勝又壽良

中国不動産開発第2位「恒大集団」が倒産の瀬戸際に立たされている。今年に入ってから習近平は何度も「共同富裕論」に言及し、富裕層を叩いてきた。これは不動産バブル崩壊をなんとか回避しようとする習近平の悲鳴である。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2021年9月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

中国「不動産バブル」は弾ける寸前?

中国不動産開発企業で第2位の規模である中国恒大は、倒産の瀬戸際に立たされている。

現状は、手持ち資産の切り売りで何とか命脈を保っている状態だ。金融市場は、すでに倒産を前提にしている。株式や債券の相場も、目一杯売られている。

中国における不動産開発は、地方政府の財政と密接に絡んできた。地方政府は、土地国有制を背景にして、不動産開発に不可欠な土地売却収益を主要財源にしてきた。こうして、不動産開発ブーム(正しくは、不動産バブル)によって、地方政府も大きな利益を得てきたのである。

これが、不動産バブルを極限まで拡大した理由である。政府も、バブルの当事者であったのだ。

地方政府はどの程度、土地売却利益によって財源を得てきたのか。

一般的には、約5割強とされてきたが、野村の推測では2020年の土地売却益の割合は30.8%としている。従来の約5割が、2020年に約3割へと減少すれば、大きな財源不足に直面しているはずだ。

習近平氏が最近、「共同富裕論」を取り上げて、富裕層に寄付金を強要している背景がこれである。貧すれば鈍するのだ。

「先富論」だけが暴走した社会

習近平氏による「共同富裕論」は、現在の中国政治の流行語になっている。

鄧小平が唱えた「先富論」は、先に富む者から富み、後に平等な分配で「共同富裕」を実現するものだった。現実は、「先富論」だけが先行して公平な分配を棚上げし、大きな不平等を生む結果となった。

これは2012年以来、政権を担当してきた習近平氏の責任である。

習氏は、国家主席就任に当り国有産業中心を唱えて、「紅二代」(革命次世代)の支持を取りつけ、同時にGDP拡大によって米中の覇権交代という夢を掲げてきた。これが、中国経済に大きな禍根を残しており、もはや修復不可能な事態を招いている。

具体的に言えば、次のような問題である。

1)国有産業の合併を積極的に行って、非効率・低生産性をもたらした。これによって、「紅二代」の権益を確保した。この「紅二代」の習近平支持によって、習氏は安定した政権運営が可能になった。

2)GDP拡大主義は、インフラ投資と不動産開発投資が担ってきた。高い経済成長率を実現して、米中経済の逆転を狙う大胆な政策に打って出たのである。インフラ投資では、人間の住まない地域にまで高速鉄道を張り巡らし、厖大な債務を抱えている。不動産開発では、高値継続の住宅ブームによって、恒常的な住宅投機を引き起した。

共産党幹部になれば、2~3軒の住宅投機が普通の事態を生んでいる。この裏では、固定資産税も相続税もないという「無税天国」が、住宅投機を側面から支援したのである。今になって、習氏は「共同富裕論」を唱えているが、それは習氏自身が負うべき責任として降りかかった問題である。

「共同富裕論」では、私営企業の経営者が過剰所得を上げて社会的な不均衡をもたらしたと、糾弾されている。経営者の過剰所得問題は、所得税率を引き上げれば簡単に解決可能である。ならば、固定資産税も相続税もない「無税天国」の扱いはどうするのか。習氏は、この部分は「紅二代」や共産党員の利害関係に絡むゆえ、無言である。言論の自由がない中国では、この問題をタブー視する。こうして、中国の矛楯は深まるのだ。

習氏の政権維持には、目に見えない膨大な埋没コストが潜んでいる。

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