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なぜ日銀の景気・物価判断は民意と乖離するのか。黒田総裁発言と統計資料にも大きな矛盾=斎藤満

2%の物価安定目標の実現を目指す日銀ですが、黒田総裁が語る景気認識・物価認識には、国民の感覚はもとより、日銀自身が作成する統計資料とも乖離する面が目立つようになりました。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年4月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

景気認識にずれ

日銀の景気認識・物価認識には、国民の感覚はもとより、日銀自身が作成する統計資料とも乖離する面が目立つようになりました。

まず景気判断について、黒田日銀総裁は11日の支店長会議で次のような認識を示しました。

「我が国の景気はコロナ感染症の影響から一部に弱めの動きがみられるが、基調としては持ち直している。先行きについては、感染症の影響が緩和する上に、外需の増加、緩和的な金融環境、政府の経済対策にも支えられ、資源価格高の下でも回復してゆく」と述べました。

これに対して、日銀自身が作成した資料が、これとは異なる評価を示しています。

まず、日銀の各支店が景気総括判断をまとめた「さくらリポート」を見てみましょう。昨年12月調査と今回3月調査とを比較してみると、中国地方だけが横ばいとなったほかは、北海道から関東、近畿、四国、九州に至るまで、すべての地域で下向きの判断がなされています。

東北や北陸、東海、九州などは12月に「持ち直している」としていたのが、「持ち直しの動きが一服している」となり、その他の地域ではコロナ感染症の影響で、やはり持ち直しの動きが一服したり、弱い動きがみられる、としています。

そしてこれを裏付けるように、日銀が個人消費の実態を需要面供給面から総合的に評価している「消費活動指数」をみると、昨年10-12月期がコロナの落ち着きの中で前期比4.5%増と回復した後、今年1-2月平均は、前期比3.8%減と、また大きく落ち込んでいます。

家計調査の落ち込みのみならず、小売データも弱くなっているためで、耐久消費財、サービスともに弱くなっています。

そしてさらに、日銀の「生活意識に関するアンケート調査」でも、現在の景況感について「良くなった」から「悪くなった」を差し引いた指数が、昨年9月のマイナス55.3から12月にはマイナス45.8にやや改善した後、今年3月はまたマイナス53.8に悪化しています。

少なくとも個人の景況感は一段と悪化しています。

1年後の見通しについても昨年9月のマイナス19.8から12月には一旦プラス5.0に改善した後、この3月にはまたマイナス17.1に落ち込んでいます。

日銀支店長会での総裁あいさつで示された景気認識とは大分異なるものです。

また同じ調査で個人の暮らし向きについて聞いていますが、暮らし向きが「楽になった」とする人の割合から「苦しくなった」とする人の割合を引いた数字は、昨年9月からマイナス29.5、12月にマイナス34.2、今年3月にマイナス36.9と、次第に悪化しています。

個人の暮らし向きも悪化傾向にあるというのが実感です。

Next: どこで溝ができた?物価が上がらないと言う日銀、上がって困っている消費者

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