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なぜ日銀の景気・物価判断は民意と乖離するのか。黒田総裁発言と統計資料にも大きな矛盾=斎藤満

物価は日銀も上昇予想

次に物価の認識ですが、日銀の黒田総裁は支店長会議で、「現状は資源価格の上昇と携帯料金の引き下げの中で0%台半ばの上昇にあるが、今後についてはエネルギー価格が大幅に上昇し、これが価格転嫁され、さらに携帯料金引き下げの影響が剥落するので、プラス幅ははっきりと拡大する、と評価。そして基調もマクロの需給ギャップ改善を受けて、基調的な物価上昇圧力は高まると見ています。

それでも金融政策は2%の物価安定目標の実現を目指し、これが実績として安定的に維持できるようになるまで、現在の金融緩和策を続けるとしています。

これまで総裁は自ら2%目標には達しないと表明していましたが、少し見方を変えたようです。それでも海外からの輸入コストを価格転嫁できるような経済にするために、引き続き金融支援を進めるとしています。

この日銀のインフレ判断に対して、日銀作成資料が異なる状況を示唆しています。

まず日銀自身が消費者物価指数の基調判断をするために、この統計から上昇率の高い上位10%と、下落幅の大きい下位10%を除去した「刈り込み平均」の上昇率は、昨年6月が前年比ゼロ、9月が0.6%、12月が0.9%、そして今年2月が1.0%の上昇と、加速気味となっています。

つまり、公式物価統計でも上下の「異常値」を除いた実勢は総裁の言う「ゼロ%台半ば」より高く、しかも基調は加速方向となります。

輸入物価はすでに前年比33%高、国内企業物価は9.5%高となり、消費者物価だけはまだ低いと見られていましたが、これもこの1年では基調として上昇率が高まり始めたことになります。

消費者はインフレを強く実感

そして消費者が実感として感じるインフレ率はこれよりさらに高いことを、日銀の「生活意識に関するアンケート調査」が示しています。

この調査でこの1年の物価がどの程度上がったか、を問う項目がありますが、その平均値は、昨年9月が4.4%、12月が6.3%、そして今年3月は6.6%に高まっています。消費者が実感とするインフレ率は、公表値より大幅に高くなっています。

実際、同じ調査のなかで、「物価がかなり上がった」と答えた人の割合は、昨年9月の8.9%から、12月は16.6%、今年3月には22.4%に増えています。

そして消費者が予想する今後1年の物価上昇率の平均値も、昨年9月の4.2%から12月に4.8%に高まり、今年3月には5.1%となっています。

そして今後1年でも「かなり上昇する」とみる人の割合が、昨年9月の8.4%から今年3月は20.4%に高まっています。

Next: 物価上昇を歓迎しない消費者たち。インフレで生活は豊かになるのか?

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