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韓国を既得権益まみれにした「貴族労組」をどう倒すか。年功序列と終身雇用が元凶、日本も注視すべき尹政権の労働改革=勝又壽良

尹政権が大手術を決断

文政権時代に、民主労総はその過激な行動で多くの批判を浴びた。現在も続いているのだ。「貴族労組」とも呼ばれ、大企業と公営企業の労働組合が主力をなしている。この貴族労組の力を是正して、普通の労働組合のように法を守る存在へ戻すことが、韓国経済に不可欠という共通認識を広げている。

ここに登場したのが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権である。

尹大統領は、22年5月に行われた初の施政方針演説で、「労働・年金・教育改革」を危機克服のための3大先行課題として挙げた。尹氏はこれらの課題について、「今推進されなければ、韓国社会の持続可能性を脅かすことになる」とし、「これ以上先送りできない課題になった」と指摘した。現実は、この認識の通りである。

尹氏が、「労働改革」を具体化させたのは、22年12月に主宰した「非常経済民生会議」である。ここで、積弊と労働組合の腐敗を清算する必要性を強調した。次のような内容だ。

労組の腐敗も、公職腐敗・企業腐敗とともに清算しなければならない「3大腐敗の1つ」と位置づけ、「厳格に法執行をしなければならない」と話した。また「労組活動も透明な会計によってのみ、健全に発展できる」として、「労組腐敗」を防ぐための方策として労組の会計監査を挙げた。この労組腐敗の主たる対象は、民主労総と見られている。

韓国世論評判研究所(KOPRA)が、22年12月に行った世論調査では、年間予算が1,000億ウォン(約104億円)と推定される民主労総の財政について、「会計透明性を強化しなければならない」という主張に対し、70%が「賛成」で「反対」は22%に止まった。この調査では、尹大統領の労働改革方針が国民に受け入れられたと認められる。

これに対して、左派系メディアは完全な沈黙を続けている。通常ならば、尹氏の些細なミスも針小棒大に報道するが、なぜか「労組活動が透明な会計によってのみ、健全に発展できる」という大統領発言に沈黙している。触らぬ神に祟りなしで、敢えて報道しないという感じがする。反対なら反対で、大論陣を張るべきテーマのはずだ。

問題点は「年功序列賃金制」と「終身雇用制」

貴族労組の真の問題点は、年功序列賃金制と終身雇用制によって、韓国の労働市場が極めて硬直的になっていることだ。これが、韓国の潜在的な経済成長率を押し下げるだけでなく、個人の老後不安を招いている点にもある。

貴族労組は、年功序列賃金制と終身雇用制を強力に主張し、政策に反映させている。文政権は、この要請通りに動いてきた。これでは、転職市場が育たないのだ。ホワイトカラーが、会社を辞めれば自営業しかないのが現状である。

年功序列賃金制や終身雇用制は、日本が元祖である。戦後の労働組合攻勢の中で、賃上げ闘争ともに広く普及した。高度経済成長期は労働力不足で、「労働者囲い込み」という意味が強かった。高度成長期が終り産業構造の転換期になると、年功序列賃金制や終身雇用制は逆に経済成長の桎梏になったのだ。

今や労働者の意識も変わり「就社意識」が希薄化して、「転職」が当たり前の時代である。企業が人を選ぶのでなく、人が企業を選ぶ時代なのだ。

韓国は、ブルーカラーに有利な年功序列賃金制や終身雇用制を頑強に主張している。だが、ホワイトカラーには向かない制度である。産業構造は日々に変化しているなかで、必要とされる人材も変わっていく。

それが、年功序列賃金制や終身雇用制というなかで解決できるはずがないであろう。結局、韓国では必要な人材を臨機応変に集められず、ビジネスチャンスを逸することになっている。

Next: 頼みの「半導体産業」に陰り、過激労組を封じ込めれば復活の道も?

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