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韓国を既得権益まみれにした「貴族労組」をどう倒すか。年功序列と終身雇用が元凶、日本も注視すべき尹政権の労働改革=勝又壽良

年功賃金から職務給へ

尹政権の依頼で、「労働改革案」検討した未来労働市場研究会(未来研)が22年12月、職務級制への賃金体制の転換や硬直した週52時間制の柔軟化を主な柱とする勧告案を出した。少子高齢化や第4次産業革命時代に対応するには、工場時代に合わせた労働関連制度を見直さなければならないという提案である。終身雇用制と年功賃金制は、廃止するという意味だ。技術革新時代に合わせた、新しい労働慣行の模索である。

尹大統領が23年元日、新しい賃金体系確立を目指す姿勢を明確にした。「職務中心、成果給制への転換を推進する企業と、貴族労組、過激労組と妥協して年功序列システムにこだわる企業とでは、政府の支援が差別化されなければならない」と明らかにした。

ここで、「貴族労組、過激労組」と呼んだ相手は、大統領室関係者によれば、民主労総(全国民主労働組合総連盟)である。民主労総は、大企業と公営企業の労組だ。政府は、春の賃上げで職務中心、成果給制への転換を推進するようにガイダンスをつくる意向と見える。

韓国大企業は、尹政権から不退転の決意で賃上げ交渉に臨むよう叱咤激励された形だ。岸田首相も、この調子で企業に対して「3%以上の賃上げをせよ」と迫ることができるかどうか。韓国は大統領制で、日本の首相より強い権限を持っている。韓国の方が、影響力は強いかも知れない。興味深い比較となろう。

頼みの「半導体産業」に陰り

尹大統領が、強い危機感に基づいて新しい賃金体系を要請している裏には、韓国の設備投資が半導体を除けば、すでに沈滞局面にあるという厳しい事実がある。半導体は大規模投資ゆえに、他産業の設備投資の落込みをカバーして、実態を曇らせている。それだけに、両者を分けて比較すべきだろう。

半導体を除いた製造業の年間平均設備投資額は、文政権の2017~2020年間で、2016年の84%水準にとどまったのだ。法人税の引上げや、最低賃金の大幅引き上げによる年功賃金引き上げという「反企業政策」が、こういう結果を生んだと見られる。設備投資が振るわないため、2021年の製造業の供給規模は2016年より1.6%も減少。逆に、輸入は33.5%も増加することになった。

韓国は、輸出で生きている経済である。その原動力になる製造業の設備投資が、これだけ落ち込んだのではまさに死活問題になる。

左派政権共通の「反企業主義」が、韓国経済を衰退に追い込む危険因子と言える。韓国世論は、この事態をおぼろげながらも認識しており、それが先の世論調査結果で、労組の「会計透明性を強化」に70%が賛成した背景であろう。

Next: 韓国経済の弱点は、既得権益を求めて譲歩しない韓国社会の硬直性にある

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