あのアップルが預金サービスを開始。銀行ビジネスの終焉は近い?
そんな中、アップルが米国で預金サービスを開始した。普通預金口座の利率が4.15%と高く、初日だけで4億ドル、最初の4日間でおよそ24万の口座が開設、9億9,000万ドルもの預け入れがあったようだ。アップルの預金口座はゴールドマンサックスのバンクUSAとの提携により提供される。
アップルは2019年にゴールドマンサックスと組んで「アップルカード」というクレジットカードの提供を開始している。今回始めた預金サービスは、このアップルカードの保有者ならば、最速30秒ほどで口座開設できるという。普通預金の口座は実質的にゴールドマンサックスの支店に作られることになる。
米国の銀行口座の平均的な利率は0.5%以下だ。米国の市中銀行は米連銀の利上げにすばやく対応して、住宅ローンや自動車ローンといった運用金利は上げたものの、調達金利である預金利率はほとんど上げていない。一方、ネットバンクのなかには預金利率が3~4%台の銀行があり、アップルの利率が突出している訳ではない。
米国債3カ月Tビルの利回りは5月5日終了時点で5.20%もある。つまり、アップルが預金を世界で最も安全資産である米国のTビルで運用すれば、調達金利と運用金利の金利差では、1%以上の利ザヤを得ることができるのだ。
アップルの固定費が大きくなければ、預金サービス・ビジネスだけでの黒字化も可能だと言える。ちなみに、固定費が大きいと言われている邦銀の2022年末時点の運用金利である貸出約定平均金利は1%もない。証券投資から得られる長期債の利回りはもっと低い。これは預金利率がゼロでも、アップルよりも利ザヤが小さいことを意味している。異次元緩和は、銀行ビジネスの否定なのだ。
次に破綻するのは?SNSが発端の「取り付け騒ぎ」は避けられない
もっとも、SNSに煽られる取り付け騒ぎのリスクは、アップルですら避けられない。Tビル運用でも当日決済には応じられないからだ。顧客に利便性を提供すればするほど、悪意のある逆手に取られた時には大きな痛手を被ることになる。空売りや吸収合併、その他の事情で「取り付け騒ぎ」で大きな利益を得られるところがいる限り、そうしたリスクは避けられないのだ。
次はどこか?どこであってもおかしくはない。このまま個別行の不祥事だとして、抜本的な対策を取らない限り、大手行であっても、SNSで標的にされ、多くの預金者が動いてしまえば破綻する可能性はゼロではないのだ。 ※2023年5月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
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』(2023年1月30日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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