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相次ぐ米銀行破綻、次はどこか?当局の責任逃れとSNS「取り付け騒ぎ」から個人投資家が学ぶべき5つの教訓=矢口新

資産2,130億ドル(2022年末時点)で米銀14位のファースト・リパブリック銀行が5月1日に経営破綻した。次はどこか?どこであってもおかしくはない。このまま個別行の不祥事だとして、抜本的な対策を取らない限り、大手行であっても、SNSで標的にされ、多くの預金者が動いてしまえば破綻する可能性はゼロではない。直近の米銀破綻から投資家が学ぶべき5つの教訓について解説したい。(『 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』矢口新)

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※本記事は矢口新さんのメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2023年1月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

破綻が相次ぐ米国の銀行……何が起きている?

資産2,130億ドル(2022年末時点)で米銀14位のファースト・リパブリック銀行が5月1日に経営破綻した。同日、米国連邦預金保険公社はJPモルガン・チェースが同行のすべての預金や実質的な資産を引き継ぐ契約を締結したと発表。3月10日に経営破綻した米銀16位のシリコンバレー銀行(SVB)を上回り、米国での銀行破綻としては過去2番目の規模となった。

同行は不振が続くテクノロジー企業との取引が多く、預金保護の上限である1口座当たり25万ドルを超える口座割合が多いことなどから預金流出が続いていた。3月16日にはJPモルガン・チェースなど11行から合計300億ドルの保険対象外の預金預け入れ支援や、米連銀から約1,090億ドル、米連邦住宅貸付銀行から100億ドル借り入れなど、市場からの信用不安の解消に努めたが、3月末の預金残高が1,045億ドルに減少したと4月25日に明らかにしたことで、株価は年初の2.6ドル台から1ドル以下に下落、今回の経営破綻に繋がった。

米国の銀行破綻は3月8日のシルバーゲート・キャピタル以降で4行目となるが、何故だかSVBから数えて3行目とする報道も多い。ファースト・リパブリック銀行破綻前には3行とされていた破綻銀行が、ファースト・リパブリック銀行の破綻でも過去2カ月間で3行目とされている。以下は4行とするブルームバーグからの記述。

4行が発行した普通株と優先株、債券の失われた価値をブルームバーグが試算した。試算によれば、銀行を巡る混乱が本格的に始まる直前の今年2月28日以降に吹き飛んだ時価総額は469億ドル、優先株と債券は価値が約75億ドル減少した。破綻した4行の株式には2日時点で合わせて約7億2500万ドルの価値がまだあるが、銀行の破綻が完全に決着する際には何も残らないことが多い。

ファースト・リパブリック、シルバーゲート・キャピタル、シリコンバレー銀行(SVB)、シグネチャー・バンクの救済計画には、優先株や債券の保有者は含まれていない。

※参考:米銀4行の破綻、投資家には540億ドル超の損失-証券ほぼ無価値 – Bloomberg(2023年5月4日配信)

JPモルガン・チェースによるファースト・リパブリック銀行吸収が決まったことで、2日にはハーバード大学教授のサマーズ元米財務長官が「銀行トラウマの大部分は片が付いたようだ」と発言、「銀行セクターで起きていることへの強い警戒はない」と述べた。

一方で、議会がこれまでのところ、連邦債務上限の引き上げあるいは適用停止に至っていないことについて、「政治セクターで起きていることへの警戒の方が強い」と発言。議会が行動しなければ「何か極めて深刻なことが起こる」まで、残された時間がわずかしかないことは明白だと述べた。

連邦債務上限問題については、イエレン財務長官がこのままでは6月1日にも米政府は債務不履行に至ると、繰り返し警告している。

責任は当局にある?破綻ラッシュから得た5つの教訓

米国の当局者たちは相次ぐ銀行の破綻について概ね危機的ではないとし、あくまでも個別の「経営責任」問題にしようとしている。しかし一方で、米当局そのものが責任の大半を負っているとの見方も多い。そのために(好調な雇用統計を受けて、金曜日こそ大反発したが)、地銀株への売り圧力は収まっていない。

私は米当局そのものが責任の大半を負っているという見方で、SVBの破綻後、4月17日付けのブログでは、以下の5つの大きな教訓を得たと指摘した。

1. コロナ後の「異常な」過剰流動性による預金急増・貸出難は世界で一般的だった。

2. 急速な「金融の正常化」によって銀行の資産運用が逆ザヤとなったのも世界で一般的だった。

3. 「金融の正常化」による不良ローン債権の増加や証券投資の評価損が急拡大したのも一般的だった。

4. 米国債やMBSといった「トリプルA」での資産運用でも破綻に繋がった。

5. SNSに煽られる取り付け騒ぎは今後も予想される。

※参照:・SVB型「取り付け騒ぎ」への対応 – 矢口新の生き残りのディーリング(2023年4月17日配信)

この5点の解説を次頁からさらに掘り下げて繰り返しておく。

Next: 巻き添えは回避できた?直近の銀行破綻から投資家が学ぶべきこと

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