なぜリクルートはIndeedを育てられたのか?
Indeedはリクルートが開発したサービスではなく、2012年にM&Aによって買収したサービスです。なんと当時は赤字の企業でした。しかし、リクルートは1,000億円を投じて買収します。
その後、現在はセグメント利益で、3,400億円を稼ぐまでに成長しています。
Indeedの強さがあることはわかりましたが、リクルートはなぜIndeedを成長させることができたのでしょうか?
最大の理由は、リクルート流のM&Aのノウハウを持っていたことが大きいと考えます。
実は、リクルートは2000年ごろM&Aを通じた海外進出に失敗しています。その時は、中国で人材派遣事業の拡大を試みました。当時は、現地の商売の文化や特徴を考慮せず、リクルート本社が多くの指示を出していたようです。そして結果的に中国事業は撤退となります。
この失敗から、リクルートは「買収先に過度に干渉せず自由度を与える方針」を心がけています。一方で、リクルートは資金は潤沢ですから、買収先企業に広告宣伝費を投入したり、追加システム投資を行うことがことができます。
つまり、Indeedがリクルートのもとで成長した理由は、リクルートが過度に干渉せず、Indeedの強みのビジネスモデルをそのまま活かせたこと。そして積極的に広告宣伝やシステム投資を行えるリクルートがこれまで積み重ねた利益等の自己資金が投入されたこと。
これらがうまく作用し、現在のIndeedの姿になったのです。
リクルート社内で起こる変化
ここまで主にリクルートの事業とIndeedの分析を行いました。あなたはこれを聞いてどう感じましたか?
「いやいや、リクルートの強さは営業力や企業文化じゃないの?そっちはどうなっているの?」と思われるかもしれません。
当然、リクルートで働く社員の方が優秀であることは間違いないと思います。しかし、「優秀」の定義が変わってきているのです。
ここからは、社員の質や会社の仕組みがどう変わったのか?
そして、その変化とHRテクノロジーはどのように作用するのかを考えます。
リクルートの歴史は変化の歴史と言っても過言ではありません。私はこれまで大きく3つの変化があったと思います。順番に解説します。
<第1の変化:紙からネットへ>
1960年リクルートは求人情報に特化した広告代理店として創業しました。
その後「ユーザーと企業を繋げる」というビジネスモデルのもと、SUUMOやじゃらん、ホットペッパーなどを生み出します。そして2000年代に入ると、紙で得ていた情報がネット検索に移り変わります。
この変化に乗るべく、紙媒体の就職情報誌を廃止しインターネットに切り替えました。この変化は自社の紙媒体の市場から自ら撤退する戦略でもあったため、売上高は10分の1にまで縮小しました。
しかし、インターネットユーザーが増えたことや、従来の強みであるリクルートの営業マンが力を発揮したことで業績が回復します。
結果的に、紙からネットへの移行は、利益率の向上や業績の拡大などをもたらしました。
<第2の変化:国内から海外へ>
インターネットの波に乗れたリクルートはさらなる成長を行うために、M&Aを加速させます。まずは2007年に人材派遣会社スタッフサービスホールディングスを買収しました。当時リクルートは国内人材派遣業界では5位でしたが、M&Aによって一気に頂点に立ちました。
また、国内で事業基盤の強化を推進した後、2010年以降の海外へと視野を広げていきます。同年にはCSI、2011年にはStaffmark HoldIngsと、米国の派遣会社を次々と買収します。
そして、先ほども述べたように2012年には現在の稼ぎ頭であるIndeedを買収します。
このようにM&Aを用いながら、海外進出を加速させ、事業領域が拡大したことが大きな変化です。