<第3の変化:個人の強さから組織の強さへ>
そして、いま起きていることが第3の変化です。
それが「個人の強さから組織の強さへ」という変化です。
あなたのイメージ通り、リクルートの強みは営業力です。
特に第1の変化の時代、主に国内で「ユーザーと企業を繋げる」ために、リクルートの営業マンが企業や不動産屋、美容院、飲食店を直接訪問し、自社サービスを使用するように営業をかけていました。
そして現在は、インターネットやAIの普及により、デジタル技術やデジタルを活かして新たなビジネスを生み出せる人材が必要とされています。
つまりIT技術を使いこなせる人材や「0から1」を生み出す力がある人材がより重要となったのです。実際にリクルートに勤めている方の話を聞くと、
「採用基準が変わったように思う。10年前はガッツと情熱がある人が多かったが、最近はスマートな人が増えてきた。業務のIT化を進める雰囲気があり、社内起業システムも充実している。」
「社内で営業の成功体験を共有する仕組みがあり、営業が苦手な人を作らないように、会社がフォローしてくれている。ある部署の営業社員の98%は契約社員だが、正社員と同じ成果報酬型であるため、モチベーションが高い。」
私はこの話を聞いて、リクルートは従業員が力を発揮するための仕組み作りが上手だと感じました。そしてこの仕組み作りを支えているのが、スマートで賢い人材であり、IT技術を活かした業務改革ができる人材です。
<リクルートで起こる人材の変化>
この第3の変化の話をまとめます。
10年ほど前、リクルートを支えていたのは、飛び込み営業を苦としないガッツある社員でした。しかし、現在は営業の成功体験を社内で共有する仕組みを確立させ、リモートで自社サービスの説明をできるようになりました。
従って、現在は効率的な営業を行うための仕組みを作る技術がある人や求職者やクライアントの満足度を高められるビジネスを想像できる人が必要となったのです。
これが個人の強さから、組織の強さへの変化です。
HRテクノロジーでどう変わる?
さて、このように知的な人材が増えているリクルートですが、今後はどのような成長を遂げるのでしょうか?
可能性として考えられるのは、HRテクノロジー事業と他事業のシナジーです。
具体的にはIndeedのテクノロジーを人材派遣事業で活かしていく動きがあります。
例えばIndeed Flexというサービスがあります(アメリカ向けのサービスであり、日本では使えません)。
日本の一般的な人材派遣は説明会を聞き、求人を紹介、各種申し込み資料を記入し、企業担当者と面接…と働くまでに多くの過程が必要です。
しかし、Indeed Flexを使えばシフト決定、給与の振込口座の指定まで、すべてをスマートフォンアプリ上で完結することができます。スキル、勤務可能な場所や曜日・時間帯、希望の時給などの条件を入力するだけで、条件に合った求人が瞬時にリストアップされます。
こういったIndeedの仕組みはリクルートのミッションである
「まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに」
を実現できるものだと感じます。
リクルートの収益状況は、人材派遣事業が他の事業に比べて利益率が低いという課題があります。Indeedのシステムを活用することで労働集約型の業務がデジタルに置き換わり、さらに成長する可能性を感じます。そして、この事業間シナジーの成功を最も高める要素が、先に述べたIT技術を活かせる人材、新規ビジネスを創造できる人材だと思います。
リクルートは常に変化してきた会社です。時代の潮流と自社の事業をうまく組み合わせながら、ここまで成長してきました。この変化に対応できる人材とそれを実現する会社の仕組み作りが、リクルートの本質的な強みだと感じます。
今後のリクルートの成長について見守っていきたいと思います。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
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』(2023年6月20日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。