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日米「選挙相場」展望~選挙前後の株式市場と注意すべき想定外=山崎和邦

かつて市場を賑わせた「選挙対策銘柄」「政治銘柄」の話

日本版SEC(証券取引等監視委員会)などまだ存在しなかった時代。当時の大蔵省理財局が、監督官庁としてやっと証券局に昇格されて5年目、昭和45年春頃のことである。

当時は、次の首相の座を巡る「角福戦争」(田中角栄VS福田赳夫)が勃発していたが、そこに大手船会社、三光汽船のオーナー社長・河本敏夫氏(元郵政大臣)が一枚噛んでくるというウワサが市場に伝わった。

政治資金作出のために仕手筋が動いて、三光汽船は大暴騰するであろうという話である。

昔はこの手の話が選挙の都度、多かれ少なかれ市場に出てきて、これを「選挙対策銘柄(センタイ銘柄)」または「政治銘柄(マルセイ)」などと呼んだ。

当時も内部情報者取引禁止の制度はあったが名ばかりであったし、現在の金融商品取締法で言うところの「風説の流布」など実質的には取り締まられていなかったが、そこで情報を早く仕入れて全財産を投入する者は、大抵は大失敗して早々と市場を去っていったものである。

筆者は、そういうネタをまるっきり信用していなかった。「早耳情報」なんてものはない、「マル秘情報」なんてものはない。自分の耳に届くくらいなら、それは市場にも行き渡っていて織り込み済みだ、と信じていた。

ところが、センタイ銘柄としての三光汽船は、地相場60円~70円のところ100円にまで急騰した。私はここで、生涯忘れえない大失敗を犯したのだ。

野村本店営業部で当時としては異端派であった空売りによる大商いを敢行し、肩で風切っていた筆者は、和歌山支店に異動後、100円まで暴騰した三光汽船を顧客に大々的に空売りさせた。するとさらに暴騰したからナンピン売り上がった。売り続けた。

その結果、追証に耐えられず強制決済が迫り、口座の資金がゼロに帰すならまだしも不足必至の状態に陥った。これは顧客の並々ならぬ尽力で何とか切り抜けたが、いまでも年に何回かはその時の悪夢にうなされる。この時の結果的に三光汽船は2530円まで上がった。カラ売りしてから25倍である。

このエピソードの詳細は、全担保を賭けて仕手株をカラ売り~投機家Kさんの運命は?でも詳述したからご一読いただきたい。

ヒトは株式市場では失敗から学ぶ。成功体験は嬉しがって終わるだけで勉強にならないどころか、場合によっては却って毒にさえなる。この悪夢から体得した「鉄火場の掟3カ条」は今も毎日、拳拳服膺している。

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山崎和邦(やまざきかずくに)

山崎和邦

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)、近著3刷重版「賢者の投資、愚者の投資」(日本実業出版)等。

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