今後、物価上昇が進むようであれば高齢者の貧困はもっと顕在化する。物価上昇に年金額が追いつかないからだ。ただでさえ足りない年金がもっと足りなくなる。
生活保護を受けていない高齢層でも、国民生活基礎調査を見ると、高齢者で「生活にゆとりがある」と考えている層は4%しかおらず、50%以上の層は「生活が大変苦しい」「やや苦しい」の中に入っている。
同じ物価上昇でも、景気がガンガン良くて、賃金も上がり、将来に展望があり、少子高齢化もない社会であったら、年金額は物価に合わせていくらでも引き上げられただろう。
しかし日本は景気もそれほど良くなければ、実質賃金もずっとマイナスで、将来には悲観しかなく、少子高齢化がもっと進む社会である。何度も言うが、政治家はそれを解決する能力がまるっきりない。
そうなると最終的には高齢者が必然的に見捨てられる社会が到来すると考えられる。社会が高齢者を見捨てるというよりも、社会が高齢者を養いきれなくなると言った方が正解かもしれない。
高齢者はなかなか死ねない人生を迎えることになる
今後、社会保障費はとめどなく増え続けるので、焦った政府はさらなる消費増税や社会保険料の引き上げを画策し、同時に社会保障の削減に走る可能性が高い。
社会保障が削減されたら直接的にダメージを受けるのは高齢層だ。政府がどこまで社会保障を削減するのかはわからないが、どこかの時点で高齢者は「自助努力せよ」と蹴り出され、見殺しにされる覚悟しなければならない。
生活は苦しい。貯金を取り崩していると、そのうちに消えてなくなってしまう。年金は少ない。それなのに徐々に徐々に年金の額は減らされていく。しかし、長い目で見ると物価は必ず上昇する。
高齢者は真綿で首を閉められるように経済的に追い詰められていく。日本は経済停滞が今後も続く可能性が高いが、今の社会維持に限界がきたとき、高齢層の貧困と苦境は地獄のような惨状を呈することになる。
そんな中だが、医学の発展は目覚ましく、高齢者はなかなか死ねない人生になる。
かつては人生60年くらいだったが、今では人生100年時代が言われるようになっている。現在の日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳である。このまま平均寿命が延び続ければ、2040年頃には日本人の半数が100歳以上まで生きると予測されている。
凋落を余儀なくされ、すでに国民負担率が5割近い状況の中で、高齢者はいつまでも長生きする。医学は高齢者を死なせないので、高齢者の多くは寿命よりも財産のほうが尽きる。
無一文になっても死ねないのであれば、生活保護に頼るしかない。しかし、あまりにも高齢者は増えすぎて社会保障費が増大して現役世代が支えきれなくなったら、どこかで無能な政府は高齢者を見捨てる政策に転換するだろう。