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日本を“低賃金国家”にしたのは誰か。さらに賃上げすれば減税という「泥棒に追い銭」の末期的政策まで実施へ=神樹兵輔

外国人技能実習制度という「奴隷労働・推進制度」

そして、毎年数千人もの失踪者を生んでいる「外国人技能実習制度」ですが、これも「経団連」の自民党への命令で、1993年にスタートさせた制度です。

これも 本メルマガ 本メルマガ では詳細に解説してきましたので、簡略に述べますが、技能実習生の母国での送り出し会社は、実習希望者から法外な手数料収入(実習生は100万円前後の借金を背負う)を得たのち、実習希望者を日本へ送り出しています。

こんなことを野放しにしているのですから呆れます。

日本ではどんな仕事に就くかも選べず、3年間は転職禁止という憲法違反の制度です。しかも、賃金は安い最低賃金で、そこからさらにタコ部屋の寮費をとられ、空調費やら食費をどんどんさっぴかれます。

要するに、日本人がやりたくない仕事を、奴隷労働でコキ使う仕組みに他なりません。これも、日本人の「賃金下押し」に大いに貢献してきた制度でしょう。安い値段で使える労働者であるなら、何でもござれ――なのです。

経団連は、人権もへったくれもない大企業の団体だということがよくわかるのです。

岸田内閣の賃上げ促進税制の「泥棒に追い銭」の笑止

これまで述べた通り、さんざん日本人の賃金が上がらないよう画策してきたのが、経団連の意を受けた自民党でした。

しかしながら、マスメディアなどで、日本人の賃金が世界と比べて、あまりにも低い――ということが騒がれ始めて、安倍政権の頃から、自民党が春闘に向けて「賃上げ」をアピールするようになったのですから、お笑い種でした。

また、労働者団体の「連合」の幹部連も、この30年間何もせずに、組織率の衰退を見守るだけで、労働貴族の名をほしいままにしてきただけだったことも、自民党政権の「賃上げ」というイレギュラーな動きで、存在価値のないことがはっきりと浮き彫りになって、これまた笑える展開でした。

そして、日本国の労働者の「賃下げ政策」に執心して、自民党に命令を下していた経団連も、ここにきて「賃上げが必要」などと言うのですから、「お前が言うか!」とこれまた笑わせてくれるようになったのです。

労働者の賃金を抑えつけ続けて、500兆円をゆうに超える内部留保の蓄積に励んできた経団連が労働者の「賃上げ」に言及するなど、本当に笑わせてくれる展開なのです。

そして、そんな風潮を受けて、岸田首相は、2022年度から「所得拡大促進税制」なるものを始め、今度はさらに「賃上げ促進税制」へと名称も内容も変え、その普及に務めているのです。

ざっと内容をかいつまめば、企業区分を大企業、中堅企業、中小企業と3分類し、大企業は賃上げ率3~7%以上、中堅企業は3~4%以上、中小企業は1.5~2.5%以上を達成したら、賃金増加分に応じて、大企業や中堅企業は10~25%、中小企業は15~30%分を法人税率や所得税率(個人事業主)から控除してあげますよ――という飴玉なのです。

さらに、これには女性・子育て支援や教育訓練の状況に応じて、5%~10%の上乗せ枠までありますよ――というプラス特典までを付与した制度になっています。

労働分配率が70%以上にも及ぶ、人件費がギリギリの中小企業を支援するならともかく、税金の支援金が大きくなる大企業にまでこんな制度を導入するとは、まさしく「ドロボーに追い銭」なのです。

政治献金をくれる大企業には、ちょっぴり賃金アップをするだけで税金の大盤振る舞いがなされ、中小企業はロクに賃上げさえ出来ないのですから、これまた置き去りです。

なぜマスメディアはこれを批判しないのでしょうか。

内部留保(利益剰余金)をたんまり貯め込んできた大企業にこんな支援をするより、労働者の7割を占める中小企業にこそ支援すべきです。

岸田政権の国民への「まやかし策」もいいところでしょう。

Next: どうすれば状況は改善する?カネをくれない中小企業はほっぽらかし…

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