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日本を“低賃金国家”にしたのは誰か。さらに賃上げすれば減税という「泥棒に追い銭」の末期的政策まで実施へ=神樹兵輔

経団連の命令で自民党が行った労働法制の改悪と消費税率アップが日本の成長をストップさせ、国民を貧窮化させてきた

そもそも、日本の労働法制と税制体系をおかしくさせてきたのが、利潤追求第一の大企業団体である「経団連」なのです。

経団連は、毎年のように自民党の政治資金団体(国民政治協会)に20数億円を政治献金として寄付しています。また、別途に大企業は20億円前後を自民党の国会議員らが代表を務める政党支部向けにバラ撒いています。2022年の実績では、自民党は企業・団体献金を政党本部及び政党支部に合計55億円も得ているわけです(この他にも税金が原資の政党交付金が自民党に年間約160億円交付されています)。

自民党議員は、ただでさえ国会議員としての高額報酬(年間5,000万円強)と高待遇(公設秘書3人の給与や経費タダの国会事務所費などなど)を得ているだけでなく、他にもくだんの派閥の政治資金パーティーで裏金を億単位で生み出してきていたのですから、呆れるばかりなのです。ゼニの亡者といってよいでしょう。

いかにカネ儲けのためだけの自民党政治であり、国民の権利や幸福をないがしろにしてきた政治屋・犯罪集団であるかが明白なのです。

自民党が、とりわけ「経団連」に頭が上がらないのは、政治献金やパーティー券と称する、こうした一見合法ワイロの存在があるからなのです。いかに自民党議員が、利権・口利きのカネまみれマシーンとなっていることこそが存在理由でしかないのが、よくわかるのです。

つまり、自民党には、もともと日本を導く「政策」などは、まったくなく、外交と軍事は米国の言いなりで、税制や労働法制は経団連の言いなりになっていれば、それでよいだけの政党にすぎないのです。

その経団連さえ、しょせんはサラリーマン大企業経営者の集まりにすぎません。ラットレースとゴマスリで必死にサラリーマン組織を這いあがってきただけの存在なのです。自分の経営者としての任期中での利潤追求を追い求め、自民党政府に、自分たちの経営成果の見栄えがよくなる、都合のよい政策だけを要求しているわけです。

それが、日本の内需を失わせ、ひいては大企業の首を絞める結果を招くのも必然なのに、利潤追求のために労働者の賃金を下げる政策を自民党に要求し、消費税率アップを図って法人税率を下げさせてきたのです。

現役時代の賃金が低ければ、老後の年金が不足して、生活保護で補填しなければならなくなります。そんな貧困老後を生み出し続けてきたのが、経団連と自民党・公明党の連立政権なのです。

そして、そうした要因を導いてきたのが、1986年施行のピンハネ労働解禁の「労働者派遣法」であり、89年導入の逆進性による貧困者課税を可能とした「消費税」であり、93年導入の途上国労働者を奴隷のようにコキ使える「外国人技能実習制度」であり、国民を貧困化させる一連の「賃金下落政策」という元凶だったわけです。

派遣労働者は「人件費」でなく「外注費」で処理できるので使い捨てに…

1985年にニューヨークのプラザホテルに先進5カ国(G5=米・英・仏・西独・日)の財務相・中銀総裁が集い、米国の「ドル高是正」と「各国の内需拡大」の申し合わせにともない、日本はその後急激な円高を容認したため、輸出大企業を筆頭に「円高不況」に見舞われます。

この時に合理化を迫られた大企業が、かねてから賃金抑制を狙い、経団連を通じ自民党政権に命じてつくらせたのが1986年に施行された「労働者派遣法」でした。

これは、労働基準法を通じ、戦後禁止されてきた「中間搾取(企業と労働者の間に第三者が介在し賃金を横取りすること)」を合法化し、間接雇用による低い賃金の有期雇用労働者を、企業内に正規雇用労働者と同時差別的に併存させる――という天下の悪法だったのです。

つまり、もともと当時から偽装請負で違法な派遣労働行為を行っていた、今日に連なる大手派遣会社の犯罪業務を晴れて法律で認めてやったのです。

これによって生まれたのが、いつ首を切られるかわからない有期雇用の派遣労働者であり、法定福利厚生や交通費支給もない脆弱な労働者の立場だったのです。

本来なら賃金を正規の労働者よりも3割から5割アップすべきなのに、派遣労働者は、一般の人件費を削る形で派遣会社のピンハネ(マージン率)を3割から4割も認めてやるカタチの低賃金でスタートさせたのです(2019年の厚労省の調べでは30.4%の平均ピンハネ率で、このうち派遣会社の営業利益率は5.9%)。

正規雇用になりたくてもなれなかった人たちは、こうして低賃金で働かせられるようになり、当初は厚生年金も健康保険も自腹という待遇を余儀なくされていったのです(現在は派遣会社と折半で加入)。

ここからパートやアルバイトといった非正規雇用が、どんどん大きく広がっていく流れをつくりました。

当初の派遣は、タテマエは専門性のある13職種の限定のはずが、自民党政権の得意技の「小さく生んで大きく育てる」がごとく、その後の改悪に次ぐ改悪で、何でもありの派遣業務をはびこらせたのでした(この専門性は最初から嘘っぱちで、単純事務仕事をファイリング業務と称していた)。

この制度によって、派遣先企業は、派遣労働者を迎えるにあたって、大幅に人件費が削減できるようになりました。もとより、派遣社員は直接雇用でないため、人件費の概念には入りません。

派遣先企業と派遣会社との取引のため、派遣会社にまとめて支払う経費は「外注費」として処理されるからです。

Next: 正社員を「派遣社員」に換えると、人件費が50%近くも削減できる

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