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日本を“低賃金国家”にしたのは誰か。さらに賃上げすれば減税という「泥棒に追い銭」の末期的政策まで実施へ=神樹兵輔

正社員を「派遣社員」に換えると、人件費が50%近くも削減できる

企業にとって、正社員を雇うのをやめて、「派遣社員」に切り替えたら、どれだけトクをするのでしょうか。

派遣会社が企業に営業をかけてアピールする際に使う資料の、経費が削減されて、おトクになる項目を列挙してみましょう。

・従業員募集経費(広告宣伝や紹介会社への斡旋料など)
・研修・教育費
・給与や手当および精算費用
・賞与(臨時給与)
・交通費および諸手当
・法定福利費(会社が折半で負担する健保や年金の保険料)
・福利厚生費(寮や慰安会、社員旅行や健康診断費用)
・退職金

こうした経費が、派遣社員には要らなくなります。

概算では、正社員一人を雇うよりも、派遣社員のほうが、50%程度の人件費削減につながるとされています。しかも、正社員の場合は毎年の昇給もあるので、それ以上の負担が企業にのしかかることも容易に想像できるでしょう。

消費税導入で法人税率や所得税率も削減できた

さらに、経団連の命令で、1989年に3%の小さい税率から導入した消費税も、経団連にとっては、企業コストの圧縮に大いに貢献してくれました。

経団連が消費税導入を自民党に命じた目的は、法人税率の引き下げと所得税率の引き下げ、そして輸出大企業にとっては欠かせない輸出還付金の存在が大きいからでした。

これらの詳細は、 本メルマガ 本メルマガ でもふれてきましたので、ここでは簡単に紹介するにとどめます。

財務省の税収の推移が載っているHPを見ていただくと、一目瞭然ですが、消費税率を上げる度に法人税率が下げられ、所得税率も緩和されてきたのです。アップされ続けてきた消費税額の7割強がそれらの補填に回っています。

また、大企業は下請けからの仕入れ品を叩きまくって、ギリギリの安値価格で仕入れていますから、仕入れの際にロクに消費税を払っていないことが明白――とよく指摘されています。

このことは、先ごろ公正取引委員会が、日産自動車の下請け法違反事例に対して「勧告処分」を行うと決めたことが報道されたことでも、よくわかります(日産は過去数年間で下請け30社以上に一方的に自動車製造部品の納入代金を減額させ、減額幅は30億円以上にのぼるとされています)。

それなのに、輸出大企業は年間6兆円もの輸出還付金として、下請け企業にロクに払ってもいない消費税を税務署から付与してもらっているのです(輸出品には消費税はかからないというタテマエによる)。

6兆円といえば、消費税率換算でも、3%分に相当する大きな金額なのです。各地の大企業本社管轄の税務署は、このせいでほとんどが赤字です。

このように棚からボタモチのような収益が、輸出大企業に入るわけですから、かつての自民党への要望として、2025年までに消費税率を19%まで上げて法人税率をもっと下げろ――と経団連が自民党に強制的に命令するゆえんだったわけなのです。

巷では、消費税率をアップさせようとする首謀者は、緊縮財政論者の財務省だ――とする指摘もありますが、財務省の役人など平目サラリーマンであり、官邸の人事権をもってすれば、いくらでも抑えの利くレベルの話にすぎません。

財務省「悪玉論」などは、経団連擁護のおかしな屁理屈なのです。

消費税率アップを図ってきたのは、自民党への年間55億円以上の有力スポンサーである経団連であり、財務省悪玉論はその目くらましに他ならないでしょう。

Next: 岸田内閣の賃上げ促進税制の「泥棒に追い銭」の笑止

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