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「中国経済は終わり」は本当か?安心していると痛い目にあう日本。あと数年の最悪期を経て、中国が最先端テクノロジーで世界を制す=高島康司

不況下の中国経済の背後で進む構造転換

こうした状況がいまの中国経済だ。不動産バブルの崩壊は市場の動きの結果、自然に起こったものではない。習近平政権が導入した総量規制(不動産部門に流れる資金の規制)による人為的な崩壊である。

このため、いまの不況は習近平不況と呼ばれている。そして日本のメディアでは、格差の少ない「共同富裕」の社会の実現を自らの功績にしたい習近平個人の野心が引き起こした状況だとして、中国を揶揄する報道がほとんどだ。

しかしこれは、現在中国が大規模な構造転換の過程にあり、この転換が終了すると中国は新たな成長の軌道に乗る可能性が高いことを示す事実も実は多い。

この メルマガ メルマガ では第774回の記事で、「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」の報告書、「重要技術競争をリードするのは誰か」の衝撃の調査結果を紹介した。それによると、中国は、重要な最先端技術分野の大半において圧倒的に進んでおり、世界最先端の科学技術大国となるための基盤を構築している。

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44の最先端分野のうちアメリカが首位なのは7分野だけで、それ以外の37分野では中国が首位だった。ちなみに、日本がリードしている分野はゼロである。特に10の分野では中国の科学技術が他国の追随を許さず、この分野の製品の供給は、すべて中国が独占していた。

これを支えているのが、中国政府の科学技術への支援方針である。昨年9月、習近平は初めて「新しい生産力」の構築という考えを提起した。「新生産力」という言葉は、科学技術のイノベーションを活用して新産業を創出し、国の経済発展を加速させるという中国の計画を指す。習近平は今年2月1日、「新生産力とは、伝統的な経済成長モードや生産性発展路線から解放され、ハイテク、高効率、高品質を特徴とし、新たな発展理念に沿った高度な生産性を意味する」と述べた。

「国家情報センター」の上級エコノミスト、余鳳霞は、政府のサイトで新たな生産力を実現する唯一の方法は、中国の国民全体の努力でコア技術をブレークスルーさせることだとした。基礎的な部品、材料、ソフトウェア、ハイエンド半導体、産業用ソフトウェアを生産する国内の部門、特に外国の抑圧に直面している産業を更新するために、先端技術への投資を増やすべきだと言う。

中国は人工知能、インターネットのメタバースと、ヒューマノイド・ロボットやブレイン・コンピューター・インターフェイスの製造に従事する自国のテクノロジー企業や研究機関を育成すべきだともした。さらに中国は、AI、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータを活用して、先進製造業の競争力を高めるべきだと付け加えた。

すでに中国は、44の最先端分野のうち37分野で世界をリードする圧倒的な優位性を示しているが、さらに中国は、「新生産力」の開発を柱にした成長のモデルに転換しようとしていると見て間違いないだろう。

いま中国経済は厳しい時期にある。それは習近平による不動産バブルの意図的な破壊の結果であるが、それを行ったのは習近平の個人的な野心なのではなく、新しい成長モデルへの大規模は構造転換を目標にしたからだろう。GDPの40%が不動産部門に依存する経済は明らかに健全ではない。

この不健全は構造を、最先端テクノロジーの開発と、それによる新製品の生産という方向に舵を切るためには、相当な犠牲を覚悟したのだと思う。

Next: 中国が世界のサプライチェーンを支配している?貿易構造に大きな変化

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