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「中国経済は終わり」は本当か?安心していると痛い目にあう日本。あと数年の最悪期を経て、中国が最先端テクノロジーで世界を制す=高島康司

中国の貿易構造の変化

こうした構造転換の効果はすでにいくつかの分野に顕著に現れている。その1つが、貿易である。

まずは以下の表を見てもらいたい。2024年1月から2月の中国の先進国への輸出入の前年同月比である。単位は%だ。

   輸出  輸入 
合計 10.30  6.70 
EU  1.60  -6.80
米国  8.10  -7.00
日本 -7.00 -2.50
豪州 -4.80  2.20
韓国 -6.80 12.30
台湾  7.70 12.00

これを見るとわかるが、台湾を除くと、中国の先進国への輸出入は相対的に減少する傾向にある。これが中国経済が減速している証左だとする意見もあるが、実はそうではない。

次はBRICSとグローバルサウスの国々だ。

     輸出  輸入
アセアン  9.20  6.60
ロシア   15.50  9.90
インド   16.20 39.30
中南米   24.10 11.30
ブラジル  37.70 37.10
アフリカ  24.40  7.90
南ア   -10.90 14.80
(出典:中国税関)

最大の伸びを記録したのは、BRICSメンバーのインド(16%増)、ブラジル(37.1%増)、南アフリカ(14.8%増)、そしてベトナム(28.4%増)とインドネシア(22.2%増)であった。

2022年後半から2023年にかけて、中国のグローバルサウスに対する輸出は、すべての先進国市場向け輸出を上回った。1-2月期の速報データは、この傾向が加速していることを示している。中国の「一帯一路」構想や民間チャネルを通じたグローバルサウスへの対外投資は、この成功の一端を説明している。アジア太平洋地域への中国の対外投資は、2023年中に37%増の200億ドルに急増した。

この増加の背景にあるのは、電気通信機器、ソーラーパネル、とりわけエレクトロニクスを含む最先端の主要産業のサプライチェーンを中国が実質的に支配していることだ。「再シェアリング」と「友好的シェアリング」というスローガンを合言葉にして、メキシコ、インド、ベトナムをはじめとする第三国を経由する中国貿易が増加しているのだ。

「IMF」のエコノミストや「世界銀行」、「ピーターソン研究所」、「国際決済銀行(BIS)」の研究者らによる最近の研究でも、この結果は確認されている。「国際決済銀行(BIS)」のレポートには次のようにある。

「中国から米国へのサプライチェーンには、他の管轄地域の企業が介在している。このように介在している企業の正体は、2021年12月よりもアジア太平洋地域の企業が米国の顧客に対するサプライヤーの大部分を占めており、また中国のサプライヤーの顧客の大部分を占めているという事実から読み取ることができる」。

つまり中国は、半完成品や部品を第三国に出荷し、最終的に組み立てて第三国経由で先進国に再輸出しているのだ。また、「世界銀行」のエコノミストは次のように言っている。

「米国の中国からの輸入は、発展途上国からの輸入に取って代わられている。しかし、中国に取って代わる国々は、中国のサプライチェーンに深く組み込まれている傾向があり、特に発展途上国では、最先端の戦略的産業において、中国からの輸入の伸びが加速している。別の言い方をすれば、輸出面で中国に取って代わるためには、各国が中国のサプライチェーンを受け入れる必要があるということだ」。

つまり、これはどういうことかというと、中国企業は戦略的に重要な最先端の産業では、BRICSやアセアン、そしてグローバルサウスの国々に組み立て工場などの生産拠点などを設置し、世界的なサプライチェーンを構築しているということだ。このグローバルなサプライチェーンは、先端的なテクノロジー分野、再生可能エネルギー、グリーンエネルギー、電気自動車、あらゆるタイプのデジタル産業を対象にしている。

このようなグローバルなサプライチェーンの構築の動きは、中国の対外投資の急増として現れている。2023年だけでも、中国からアジア太平洋地域への対外直接投資は37%急増し、200億ドル近くに達した。この投資は、海外での成長を目指す中国企業が、アジアから欧米、ラテンアメリカに至るまで、いかにグローバルなサプライチェーンを変化させているかを物語っている。

香港の大手銀行、「HSBC」の調査によると、中国企業の対外投資は、年間フローは50%以上増加し、現在から2028年の間に少なくとも1兆4,000億ドルが海外に投資される可能性があるとしている。

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