衣料品チェーン大手「しまむら」傘下の子ども向け業態「バースデイ」が販売していた、アーティストの加賀美健氏とのコラボTシャツなどに描かれていた文言が、父親を揶揄する内容だとして批判があがっていた問題で、バースデイは商品の販売を中止すると発表した。
報道によれば、問題となっていたのはアーティストの加賀美健氏とコラボ商品で、「パパは全然面倒みてくれない」「パパはいつも寝てる」などのフレーズがデザインされており、これが「時代に合わない」などとSNS上で物議を醸していた。
これらの反響を受けてバースデイは、Xの公式アカウントで問題の商品の販売中止を発表。「この度、弊社で発売した加賀美健さんとのコラボ商品の一部商品につきまして、ご不快な思いをさせてしまう表現がありましたこと、深くおわび申し上げます」と謝罪している。
当初は販売を続行する姿勢だった?
以前だと、テレビCMなどで例えば「亭主元気で留守がいい」といった、男親を揶揄・けなすような表現が堂々とまかり通り、その年の流行語大賞に入賞までしてしまうといった状況があったわけだが、そういうのもあくまで遠い過去の話。
男親が外で働き女親が家庭を守るといった家庭がすっかり減り、今では男女共働きの夫婦が全体の7割を占め、男親も育児に積極的に関わることが当たり前になっているなか、今回のような表現がそんな男親らから大いに顰蹙を買うだろうというのは、ちょっと考えればわかるような話。
また、これが仮に男親ではなく女親を揶揄するフレーズだったなら、当然のように大炎上は必至といったところだが、それが男親に対してなら許されるといった風潮は、ある意味で整合性が取れないということで、女性側からも今回の表現に異を唱える反応はあがっているようだ。
ただ、しまむら側の反応はというと、7月28日に同商品を公式X上で宣伝し、それに否定的な反応が出始めた段階で、同社に対して問い合わせたメディアに対し「該当商品について、育児に携わる男性や性差別を意識した企画ではございません。お子様との日常の風景やコミュニケーションを意図した企画です」と説明。あくまで表現の自由だといいたげに、販売を続行する姿勢だったようだ。
しかしながら、その後のさらなる批判の声の高まりを受けてか、一転して商品の販売中止を決めたことのようなのだが、その公式X上での謝罪が検索避けのためなのか、いわゆる画像になっており、さらにその内容も社名や部署名などの記載がないものに。
— バースデイ@しまむらグループ (@birthday_gr) July 30, 2024
こういった対応に対して、SNS上では「「バカどもがうるさいから画像の謝罪でこっそり幕引きしよう」という見下した態度が見え見え」などといった、さらなる批判が巻き上がっている状況のようなのだ。
販売中止に追い込んだのは良識派たちの声の勝利だが、画像でお詫びしている所に謝罪の本気度が感じられない。「バカどもがうるさいから画像の謝罪でこっそり幕引きしよう」という見下した態度が見え見え。この一連の騒動はしまむらという企業の反社会的差別体質をよく表す一件だった。 https://t.co/P8TToBTOIy
— aniotakirara (@aniotakirara) July 30, 2024
いやーしまむらさん凄いっすわ
文章ではなく画像のみだから文字検索に引っかからないし、今現在、公式サイトにも謝罪を載せて無い https://t.co/3EuRaKMesQ pic.twitter.com/tC0aQa2dss
— 最後 (@Leeren__) July 30, 2024
3期連続で過去最高業績を達成
このように、世間からの“男性蔑視だ”との声に対して「育児に携わる男性や性差別を意識した企画ではございません」と、世の批判をはねつける強気の姿勢を取ったと思いきや、その数日後には一転謝罪。しかもその謝罪も、本気で謝る気があるのか伝わらないものということで、いろんな意味で“ダサい”対応が続いているしまむらなのだが、その業績のほうはというといたって好調のよう。
今年4月に公表された24年2月期連結業績をみると、売上高が前期比3.1%増の6350億円、営業利益が同3.8%増の553億円、純利益が同5.4%増の400億円と、3期連続で過去最高業績を更新したとのこと。
さらにこの決算発表と同時に、しまむらは25年2月期を初年度とする3カ年の新中期経営計画を発表。しまむらにとって空白地帯だった都市部への出店も強化するなど150店舗の新規出店、150店舗の既存店改装を計画するなどの施策で、最終年度の27年2月期に売上高7190億円、営業利益660億円、営業利益率9.2%をめざすという。
ちなみに今回渦中のバースデイの業績はというと、売上高727億円と増収を果たしたものの、対前期比では0.5%増に留まる結果に。巣ごもり需要の反動で一部商材が不調だったということだが、今後はその収益性の向上が課題となってくる状況のようである。
このように、さらなるステップアップを目指す新中期経営計画が始まって、さほど時が経ってないタイミングで起こった今回の騒動。業績好調の好ムードに水を差すことが無いよう、いわゆる“表現の自由”を押し通し世間からのさらなる批判を浴びる愚を犯さず、冷静なソロバン勘定のうえで引き下がったというのが真相のようだ。
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